第6話 旅

「センセイ、おかえりなさい」


「ただいま…です。ちょっと長くなってしまって…申し訳ない」


「いいですよ。それを調整するのが私の仕事ですから。1ヶ月なら早い方じゃ?」


「ですよね、ちゃんと途中で連絡も入れてたしね」


「生存報告ね。で、玲香さんには?」


「今から会ってきます」


玲香のことも報告済みだ


「はい。いってらっしゃい」



~~~



玲香が部屋を訪れてくれた日から1ヵ月


私は原点に戻って

カメラを持ってあちこち旅をし

写真を撮った


途中で1枚だけ玲香に手紙を書いた

撮った写真の裏に数行だけの手紙


納得出来る写真を撮ることが出来たら

会いに行く と。



お店へ行くと、閉店間際の時間だったけれど、まだ開いていた


「いらっしゃい」

笑顔で迎えてくれた


「今日、戻ってきたんだ」

「おかえりなさい」

「ただいま」


「何か食べる?」

「うん。じゃ、イチジクのとイチゴの」

「2個?」

「良かったら一緒に食べて欲しい」

「はい。じゃコーヒーはサービスね」

「いいの?ありがとう」



「素敵なお店だね」

「ありがとう」


もうお店のドアには『CLOSED』の札を出し

向き合ってケーキを食べる




「今日はお礼を言いに来た」

「お礼?」


「気付いてたんだよね?スランプだったってこと。だから会いに来てくれたんじゃないの?」

「そんなこと…」


「違うなら違うでいいんだ。玲香に会えたことであの頃を思い出して、また写真を好きになることが出来たから。だから、ありがとう。いつも支えてくれて」


「祐、私の方こそずっと支えられてたよ。別れてからもずっと。祐はどんどん有名になって、雑誌やテレビにも出てたから、修行で心が折れそうになった時にも祐と祐の写真を見て元気を貰えた。ここまで頑張れたのも祐のおかげだよ」


ずっと見てくれてたんだ

だから、写真の変化に気付いたんだよね

撮りたい写真が撮れなくなってたことも


「玲香…」

思わず、想いを伝えたくなる


「良い写真、撮れた?」

「うん」

「送ってくれた写真も、素敵だった」

また宝物が増えた…と笑う

そのエクボをずっと見ていたいと思う


「風景じゃない写真は珍しいけど、私は好きだよ」

「あれね、朝散歩してたら賑やかな声が聴こえてね。近づいたら子どもたちがラグビーの練習してたの。思わず撮ってた。許可取ってないから、発表は出来ないけど私も好き。可愛いかったぁ」

「一生懸命さも伝わってきた」


そう、あの瞬間だった

写真を撮ることの楽しさを思い出したのは

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