第3話 写真集

玲香が出て行く日がやってきた


昨日のうちに荷物は運び出されていた


別れ話の後も、今まで通り

ご飯を作ってくれたり掃除をしてくれたりしていた


私も、出来るだけ普段通りのつもりだったけど


つい溜息が漏れたり

笑えなくなったり

たぶん、私の方が弱い



「玲香、これを受け取ってほしい。要らなかったら捨てて貰ってかまわないから」


織田さんに手伝ってもらって

今までに撮った玲香の写真をまとめた

世界でたった一つの写真集


自分では、良い出来かそうでないか、わからない

初めて見た織田さんは、少し驚いていたけど何のコメントもしなかった


でも、これらの写真を撮った時の気持ちは覚えている

忘れることはない

これからも



「祐、ありがとう。大切にする」

玲香は

1ページずつ、ゆっくり捲って見終わった後、胸に抱いた


その後、何か気付いたように

「そうだ、サインしてよ」と微笑む


「もっと有名になったら、するよ」

と返す

今の私じゃ、価値はないから


油断すると流れてきそうな涙を止めるのに必死だった


「じゃ、行くね」



「玲香」

玄関先で

思わず呼び止めた


「このドア、いつでも開いてるから。ここで待ってるから」


ちょっと寂しそうな顔をして、出て行った

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