第39話 ミッドウェー作戦とAL作戦:実行編中編

       [南雲第一航空艦隊対第16、17任務部隊]


    第一航空艦隊(南雲部隊)はミッドウェー基地の攻撃に

    さらされる。


    そんな中、現地日時4日8時頃、ミッドウェー基地を攻撃して

    いた、日本軍ミッドウェー第一次攻撃隊が戻ってきた。


    しかしミッドウェー基地航空隊が第一航空艦隊(南雲部隊)

    を攻撃している最中であり、日本軍第一次攻撃隊は

    母艦上空で待機させられる。  

                     

    しばらくして第一次攻撃隊の収容が始まる。


    収容された機体から順次雷装に施されていく。


    隊長の友永は疑問をもち、隊長を務めるはずであった淵田は

    手術のため面会できず、次の候補の源田航空参謀も発熱して

    いたが、面会できたので聞いてみた。


友永丈市「第一攻撃隊隊長友永丈市大尉であります。源田参謀にお尋ねしたい

     義がありまして参りました」


源田実「どうした、友永大尉」


友永「南雲長官にミッドウェー島攻撃の要請をしたのですが、なんの応答も

   なく攻撃隊はきませんでした。

   このことにつきお聞きしたいのですが、南雲長官は作戦の指揮を

   とっておられ、私のような者には、直接お伺いしにくく失礼ながら、

   こうして源田中佐にお伺いに上がった所存です」


源田「ああ、そのことについては俺からは詳しく説明出来ない、南雲長官に

   会えるよう手配してやるから長官に直接聞いてくれ」


友永「そうですか、了解しました。では南雲長官に直接会いに行きますので

   ご手配お願い致します」


源田「分かった、一報入れておこう」   


    友永は直接南雲にミッドウェー基地の第二次攻撃隊を

    直接要請しに行った。


友永「第一攻撃隊隊長友永丈市大尉です。源田中佐のおはからいにより

   南雲長官に直接意見具申したく参りました」


南雲忠一「源田中佐から報告を受けている、とりあえずご苦労だった、

     友永大尉」


友永「恐れながら南雲長官、ミッドウェー島の攻撃は我々の最初の攻撃では

   不十分であり、更に攻撃が必要であります。

   第二次攻撃隊の要請を致しましたが何の返答もなく、

   攻撃隊は来られませんでした。

   このことにつきまして意見具申と長官のお考えをお聞きしたく

   参った次第であります」


南雲「友永大尉、第二次攻撃隊を発進させなかったのは、理由があるのだ。

   それはこのミッドウェー島付近に空母を含む、敵艦隊がいると

   想定される。

   詳しい事情はまだ言えないが、連絡も出来ず済まないと思っている。

   まずこの敵艦隊を徹底的に叩(たた)いてから、

   再度ミッドウェー島を攻撃し上陸する予定だ。

   大尉、君はミッドウェー島の戦闘機を中心に、

   航空戦力を殲滅してくれた。

   これは大きな戦果だ、良くやってくれた。

   再びミッドウェー島攻撃を行うので、次の攻撃に備えてくれ」


友永「そういうことでしたか、了解しました、南雲長官」


南雲「それと今言ったことはこの作戦が終了するまで一切他言無用に願う」


友永「はっ。承知致しました、誰にも他言致しません。

   ありがとうございます、では失礼致します」

       

    友永は艦橋を後にし、次の攻撃準備にとりかかった。 

    そして、現地日時4日8時半頃、次の報が流れた。


赤城観測員「敵兵力は巡洋艦5隻、駆逐艦5隻、その後方に空母らしきもの

      一隻を伴う。

      ミッドウェー島より方位8度、250浬」


岡本晃司「南雲長官、史実通りのようですね。多分空母は3隻あると思います」


南雲「そうか。ただこちらも戦闘機の数が心配だな、岡本大尉」


晃司「結構戦闘機を中心に消耗戦になってきましたが、この時代零戦は

   強いですよ。未来でも世界各国で零戦の博物館はありますので、

   大丈夫と信じましょう」


南雲「零戦は未来でもそんなに有名なのか?それも世界で」


晃司「ええ、我々の世界のこの戦争では、最後の方はアメリカは

   戦闘機に限らず、航空機は物資に物言わせて、操縦者の

   安全を第一に考え、特に操縦席回りの装甲を厚くし、

   バルカン砲ではかすり傷程度しかつかなくなります。

   しかし、操縦席以外の機体部分を狙い撃墜は可能でした。

   アメリカは最後まで、戦闘機同志でも、同数では零戦には

   勝てないとして、これこそ物量に物言わせて少数の零戦に

   多数の戦闘機で攻撃する作戦に出ます。

   その頃はもう、保有機体数に格段の差があったわけですが、

   今はそうではないので、零戦を信じましょう」


南雲「ふむ、そうなのか。そういうことなら私もちょっと安心した。

   零戦を信じよう」


    この時点で南雲部隊の直掩機(ちょくえんき)は54機である。   

       

    現地時間9時半前、ホーネットの雷撃機14機が南雲部隊の

    上空へ到達する。


    直ちに瑞鳳(ずいほう)9機、加賀(かが)7機、

    赤城(あかぎ)5機、鳳翔(ほうしょう)3機、の

    直掩機(零戦)が迎撃に向かう。


    アメリカ軍攻撃隊は部隊毎に進撃したので連携が取れず、

    ホーネット雷撃隊は戦闘機の護衛の無いまま赤城を狙った。

         

    しかし零戦の前にホーネットの雷撃機はあえなく

    全機撃墜される。

  

    ホーネットの戦闘機隊と爆撃隊は雲で雷撃隊を見失い、

    戦闘機隊とドーントレス13機はミッドウェー基地向ったが、

    燃料切れでワイルドキャット全機とドーントレス3機が

    不時着水、残りのドーントレス20機はホーネット帰投に

    向かう。

          

    現地時間9時半過ぎ、ヨークタウンの緊急打電を赤城が

    傍受していた。


晃司「来たか。南雲長官、龍驤、隼鷹の攻撃隊がアメリカ航空隊

  (第16、17任務部隊)への到着に成功した模様です」          


南雲「作戦通りだな、岡本大尉」


    現地時間10時前、エンタープライズの雷撃隊14機が

    南雲部隊上空に到達する。   


    エンタープライズの雷撃隊は加賀を目標にするが零戦の

    前に10機を失い、1機が帰還後投棄、零戦1機撃墜である。


    現地時間10時過ぎ、ヨークタウンの第三雷撃隊が南雲部隊

    上空に到達する。


    ヨークタウン雷撃機12機は、突出した飛龍を挟撃すべく

    6機ずつにわかれて攻撃を開始する。


    数発魚雷を発射したがすべて回避され、後はなにもできず、

    零戦の前に10機撃墜、1機不時着、1機はヨークタウンへ

    向かう。


    エンタープライズ艦爆隊は南雲機動部隊を見つけられず

    周辺を捜索していた。

 

    しばらくして駆逐艦嵐(あらし)を発見し空母部隊へ向かって

    いるものと判断し、現地時間10時半頃、

    南雲部隊上空に到達する。


    交戦していないエンタープライズ艦爆隊30機と、後から来た

    ヨークタウン艦爆隊合わせて28機は、両部隊で加賀を爆撃した。


    これに対し直掩機(零戦)はほぼ戦闘機の護衛のない

    両艦爆隊を次々に撃墜していった。


    しかし始め零戦の半数以上が後から来たヨークタウンの雷撃隊も

    含めてこれの殲滅(せんめつ)のため低空で飛行していたため、

    両艦爆隊の撃墜にでおくれる。


    加賀を集中的に狙った数を減らされる直前の両艦隊の

    急降下爆撃で、2発が命中する。


    艦橋近くの命中であり、更には燃料車の爆発により艦橋が

    破壊され、岡田次作艦長が戦死、鎮火の指揮をとっていた

    天谷孝久飛行長が総員退去を決断し、乗組員はそれぞれの

    役職を生かすため3空母に分かれて移乗した。


    零戦によって次々と数をへらされた両艦爆隊は始めのおおよそ

    1/3以下になっていた。


    爆弾の無くなった爆撃機8機はエンタープライズ、ヨークタウン

    に向かう。


    この中にはエンタープライズ艦爆隊隊長の姿もあった。


    残ったヨークタウン艦爆隊隊長はエンタープライズ艦爆隊も

    指揮して、空母に少しでも損害を与えようと決意し蒼龍へ

    向かう。


    その間もどんどん撃墜され蒼龍にたどりついたときは艦爆隊は

    全部で5機になっていた。


    艦橋めがけて急降下爆撃を開始するが対空砲火と回避運動の前に

    全部当たらず結局5機は零戦により撃滅される。


    こうして第一航空艦隊(南雲部隊)加賀大破という被害は

    あったものの、アメリカ艦隊空母3隻全ての航空機の攻撃

    を退ける。


    その後すぐ、アメリカ航空艦隊(第17任務部隊)の

    ヨークタウン戦闘機12機と交戦した隼鷹の残り零戦11機が

    第一航空艦隊(南雲部隊)のもとに現れる。

  

    彼らは簡単な戦闘報告を上空から行い、その詳細を説明する

    ためと、燃料消耗のために飛行範囲限界を迎えつつあること

    のため、急遽収容してもらうよう連絡する。


    作戦を知っていた南雲はただちに隼鷹の零戦11機を回収する。


    隼鷹の零戦隊長は燃料、武器弾薬の補給を受けながら南雲に

    呼ばれて互いに報告しあう。    


隼鷹零戦隊長「回収及び補給につき、感謝致します」      


南雲「作戦の内だ、当たり前の事だよ。それで敵艦隊主に空母との交戦の

   それまでの状況を伺いたい」


隊長「はっ。我々龍驤、隼鷹の第三航空戦隊は、敵艦隊に空母3隻を

   発見しました。

   敵空母艦隊と交戦したとき、3隻の空母のうち2艦の攻撃隊はすでに

   かなり前に、全機発進した後であり恐らくこちらのほうへ飛行して

   いたと思われます。

   そのため2隻の機体がなく、残りの1艦については少し前に戦闘機隊、

   艦爆隊、雷撃隊(艦攻)を発進していたようであり、残りは我々が

   接近する直前に戦闘機、艦爆隊を発進させ戦闘機を直掩機に当て、

   艦爆隊をこちらに向かわせたようであります。

   我々はこの6機の戦闘機と交戦、全て撃墜しました、     

   そして、もう少し前にこちらに向け発進したと思われる攻撃隊のうち、

   戦闘機のみが引きかえってき、直掩(ちょくえん)にあたりました。

   我々はこの6機の戦闘機とも交戦し全てを撃墜しました。

   これで当該艦隊の航空機はその時点で無くなり、我々はこちらに

   向かい残った9期が到着した次第であります」


南雲「そうか、ということは空母1隻分の戦闘機は全機撃墜してくれたと言うこと

   だな、よくやってくれた、それで敵艦隊の状況はどうなっていたんだ?」


隊長「我々は敵戦闘機との交戦で手一杯でしたが、確認できたことと言えば

   龍驤、隼鷹の艦攻隊等は全て空母に攻撃を集中していました。

   今頃は敵空母は少なからず被害が出ていると思われます」


南雲「そうか、よく分かった」


晃司「そこまでは作戦通り事が運んでいますね、南雲中将」


南雲「そうだな、とにかく今回は特に敵戦闘機がより問題だ。

   それではこちらのこれまでの状況を報告しよう角田司令に伝えてくれ。

   我々第一、二航空戦隊直掩機はミッドウェー基地からの攻撃隊と、

   アメリカ航空艦隊(第16,17任務部隊)のほとんどを、からくも

   撃墜し、しりぞけた。

   しかしそのため、零戦は最初の全零戦108機から24機まで減った。

   艦攻や艦爆は第一次ミッドウェー島攻撃隊の被害以外ない。

   それはごく少数だ。

   我々はこれより敵機動艦隊攻撃に向かい戦果を十分と判断して

   攻撃を終了してから、再度ミッドウェー島の攻撃に移りこれを占拠

   する予定だ。今の所以上だ」


隊長「了解しました。我々は補給が終了し次第、隼鷹に戻りこの旨、

   角田司令に報告致します」


南雲「うむ。ここまでよくやってくれた、さがっていいぞ、次に備えて

   休んでくれ」


隊長「はっ。ありがとうございます。では失礼致します」  


晃司「我々はどうやら敵空母の戦闘機を中心に敵航空隊を相当

   撃退したようですね。

   かなり零戦は減ってしまいましたが」


南雲「そうだな、苦戦したがどうやらそのようだな、予定通りこれから

   敵艦隊攻撃に向かおう」


晃司「史実通りなら敵空母は、ヨークタウン、ホーネット、エンタープライズの

   3隻だと思います」


南雲「とにかく空母は全て撃沈しておこう」


晃司「至急主力部隊旗艦大和の山本長官に報告しましょう」


南雲「そうだな、全艦で敵艦隊を殲滅しよう」       



    第一航空艦隊(南雲部隊)はアメリカ艦隊(第16,17任務部隊)

    の攻撃に向かうため、大和艦橋の山本に、これまでの戦果及び

    隼鷹の零戦隊の内容の報告をする上での、出撃のための連絡機を

    飛ばしたのだった。


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