第37話 ミッドウェー作戦とAL作戦:実行編前編後段

    現地時間9時半頃、残りの23機が発進しようとしたまさに  

    そのときであった。


    ヨークタウン艦橋に敵機発見の報がもたらされたのである。


    第17任務部隊司令官フレッチャー少将は、少し驚いたが

    再確認する余裕もなく事実であると考えた。


    突如現れた日本艦隊第三航空隊を捕捉(ほそく)したアメリカ

    艦隊は、第16任務部隊のエンタープライズ、ホーネットが

    全機発進した後であり対空砲火しかなく、ヨークタウンの

    攻撃隊のみが戦闘にあたるしかない。


    フレッチャー少将は考えた。

    [どういうことだ日本海軍はニミッツ大将の戦略構想をさらに

     見破っていたのか。

     仮にそうだとしても、このミッドウェーの戦い全てについて

     看破しているとは限らない。

     しかし現にこうして我が艦隊がミッドウェーにいることも

     日本艦隊は知っていた。

     ということは南雲部隊は爆装に換装しないどころか、

     先に攻めてくるはず。

     ならば敢えてそうしなかったのは、こちらの作戦がうまく

     いっているとの見せかけだったのか。

     こちらの作戦をとったほうがより日本側にとって有利であるから、

     つまり逆手にとられたのは、我々アメリカ艦隊のほう

     だったのか!]

 

    フレーッチャー少将はこの状況をニミッツ大将に暗号電文で

    打電したのである。


    しかし現場の司令官を預かる身として眼下の状況を少しでも

    好転させねばならない、この具体的考案をなにより優先

    しようと考えた。


    フレッチャー少将は、ヨークタウンの甲板上の戦闘機6機を

    急遽全機発進させ、17機の爆撃機も次に発進させ

    日本艦隊攻撃に向かわせる。

 

    最初に発進させたヨークタウン攻撃隊はまだアメリカ艦隊側に

    近かったため、戦闘機6機だけを引き返させ、残りの爆撃機17機、

    雷撃機12機をそのまま日本艦隊攻撃に向かわせる緊急電を平文で

    打った。


    第16,17任務部隊で次々に敵機発見の煙幕が上がる。    

 

    他の2空母より少し北へいたヨークタウンの戦闘機と

    日本側戦闘機(零戦)との空中戦になった。


    折り返してくるヨークタウン戦闘機6機がまだ到着していない

    ため、日本側戦闘機(零戦)はヨークタウン戦闘機を6機ずつ

    各個に撃破する形になったのである。


    この結果、部分的には数に勝る日本側戦闘機(零戦)が

    かなり有利な状況にあった。


    零戦の活躍は目覚ましくヨークタウンの戦闘機4機を撃墜し、

    2機は不時着、零戦の被害は1機が撃墜。


    戦闘機に随行(ずいこう)していた龍驤の雷撃機(艦攻)は

    ヨークタウン左側面前を、隼鷹の雷撃機(艦攻)は

    ヨークタウン左側面後を狙い撃ちする。


    この攻撃によりヨークタウンは左側面に多数穴が空き

    浸水しだしてやや左に傾く。


    そこに最初にヨークタウンから出撃していた戦闘機6機が

    戻ってきた。


    ヨークタウン戦闘機は2空母の雷撃機を狙い低空で襲う。


    零戦がさらにヨークタウン戦闘機を攻撃する。


    零戦の攻撃をかわしながら雷撃機を攻撃するヨークタウン戦闘機

    だったが次第に数を減らしていく。


    ヨークタウン戦闘機は5機が撃墜、1機が不時着。


    これによりヨークタウンの搭載戦闘機は12機全てを失う。


    その後も日本側の雷撃機はヨークタウンの同じ場所を雷撃する。


    ヨークタウンは更に浸水、大きく左へ傾き航行が不能となった。


    後にフレッチャー少将は重巡洋艦アストリアにうつり旗艦を

    この艦に移す。


    日本軍第三航空隊の雷撃隊のうち魚雷がなくなった雷撃機から

    順に龍驤、隼鷹に帰投していった。


    この時点で日本側は、零戦4機、雷撃機(艦攻)14機を

    失っていた。          


    次に第三航空隊は当初の予定通り龍驤、隼鷹より近い

    第一航空艦隊(南雲部隊)に戦闘機のみを向ける。


    残った雷撃隊と艦爆隊は少し移動し2隻の空母を捕捉する。


    エンタープライズとホーネットであった。


    第三航空隊の雷撃隊と艦爆隊はホーネットに狙いを定め

    集中攻撃するのである。


    雷撃隊は今度はホーネットの右側面から攻撃を行う。


    龍驤の雷撃隊はホーネットの右側面中央を、隼鷹の雷撃隊は

    ホーネットの右側面後を集中攻撃する。


    隼鷹の艦爆隊もホーネットを攻撃したが敵戦闘機がいないため

    それをど急降下はせず艦橋を狙い撃ちする。


    両艦隊の雷撃機合わせて19機は集中攻撃を続けホーネット

    右側面に少なからず穴を空けた。


    ホーネットは少し右に傾き浸水し始める。

          

    艦爆隊18機も次々に艦橋(かんきょう)を重点的に爆撃を

    行ったがそれほど高度を低くしなかったためなかなか

    命中しない。

      

    しかし一発目の命中段が艦橋すぐ横で爆発した。


    ホーネット艦橋は一部を破壊され各種艦内の通信機能に

    影響が出る。

      

    雷撃隊のほうは、どんどんホーネット右側面を打ち続け、

    魚雷が無くなった機体から順次、龍驤、隼鷹に帰投して

    いき、全てが帰投した。           


    ホーネットはさらに右へ傾いたが推進機能だけは

    稼働(かどう)した。


    隼鷹の艦爆隊も爆弾が無くなった機体から順次帰投して

    いく。

     

    残った艦爆隊の機体は8機であったが、ホーネットが自力で

    舵がとれないのを確認すると、エンタープライズへ向かう。


    エンタープライズの真上に到達した隼鷹の艦爆隊はこれも

    対空砲火をさけ急降下せず艦橋(かんきょう)を狙った。


    エンタープライズの必死の回避の前になかなか爆弾が命中せず

    ついに全ての機体がエンタープライズに傷一つつけられずに

    爆弾が無くなり全機隼鷹に帰投する。


    アメリカ航空艦隊(第16、17任務部隊)のうち艦艇で傷ついた

    のは、ヨークタウンとホーネットだけであったが、

    ヨークタウンは沈没し、ホーネットは大破した。


    貴重な航空母艦のうち1隻が撃沈され1隻が大破、

    2隻の空母が戦闘不能になった。


    アメリカ航空艦隊(第16、17任務部隊)の通常通り使える

    空母はエンタープライズだけとなり、ホーネットは

    巡洋艦ニューオーリンズに曳行(えいこう)されることに

    なる。


    またヨークタウンの司令官フレッチャー少将は総員退避をさせ

    自らはエンタープライズに移乗し、アメリカ航空艦隊

    (第16、17任務部隊)指揮権を預かる。

           

    ホーネット司令官ジョージ・D・マーレ大佐も総員退避の命令を

    下しそれを行う。


    ヨークタウンの乗組員は、重巡洋艦:ノーザンプトン、

    ペンサコーラ、ヴィンセンスに移乗し、ホーネット乗組員は、

    駆逐艦:フェルプス、 ウォーデン、モナガン、エイルウィンに

    移乗していった。

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