第34話 更なる二人の会話 その1
晃司と一花は以前行ったことのない場所へ行き腰を下ろし
会話を始めた。
岡本晃司「ほんまなら二人して休暇とって、この時代の東京でも回り
たかったんやけどね。
戦時中やしそういうわけにもいかんしね」
園田一花「元の時代に帰れるにしろ帰れないにしろ、この時代の日本中、
晃司さんと行ってみたいなあ」
晃司「もし無事和平がなったら、日本中と言わず、一緒にアメリカでも
アジア諸国でも行ってみようか」
一花「嬉しい。晃司さんと二人っきりで世界旅行が出来るなんて。
それも晃司さんの方から誘ってくれるなんて。
嬉しくてたまらないです」
晃司「ありがと。そのためにも、必ず日米和平を実現させんとね」
一花「そうですね、まだ戦争は終わってないですもんね」
晃司「そういえば一花、AL作戦の段取りのほうは順調なんかな?」
一花「ええ、総長にも話を通して、手を打って頂けるように手はずも
進んでますし」
晃司「そうか。それにしても考えてみたら俺が君を軍隊へ入れたんやったね。
自衛官と軍人の区別がよくついてなかったかもしれんよ。
悪いことをしたかもしれんね」
一花「いえ、私も確かにまだ自衛官と軍人の違いがよく分かってないのかも
知れないですけど、最終的には自分の意志で軍人になりました。
晃司さんばかりが、私のことまで責任をもつ必要ありませんよ。
お話ししたように、私ももう情報を提供して軍人として
戦争に介入してます。
既に自分で責任を持たないといけません。
私だってもう後戻りは出来ないと思っています」
晃司「うん。俺ら多かれ少なかれ、もう軍人として戦争に
介入した後やからね。
だからこそお互いに戦争に関して、考えんとだめやね」
一花「ですね。出会ったころにお話しされたように晃司さんは非戦闘員への
故意の殺傷を嫌ってましたね。
私もそれは日本人ですし非戦闘員を戦と関係ないと考える日本の文化と
伝統において、晃司さんのお話しを伺った後、特に強くそう思います」
晃司「よくよく考えたら殺傷だけじゃないよね、略奪なんかもやね」
一花「全ての残虐行為において、ですね」
晃司「うん、しかし過去の洋の東西を問わず、軍隊において非戦闘員へを含む
残虐行為は組織的に、命令においてそうさせたんよね。
心に深い傷を負わせて、後でコミュニティに戻れなくなる
共犯意識を負わせてね」
一花「そのために非戦闘員への虐殺なんて言う行為が行われたのかもしれ
ませんね。唯一の例外が日本だったのでしょうね」
晃司「かもね。だからこそ大日本帝国陸海軍の軍律は厳しかったんやろうけどね。
知ってると思うけど、大東亜戦争末期日本も原爆は開発がなされていて、
実戦で使えたというよね。
だけど天皇陛下がだめとおっしゃったらしいね。
それだけはやっては代々の天皇に申し訳が立たないと。
一花「それで日本は天皇陛下のご意向により使わなかったんですね」
晃司「そう思うよ陛下のご意向通り文化的かつ伝統的におっしゃる通りに
したんやろね。
他の世界では非戦闘員に限らず戦闘員にとっても、第一次世界大戦時、
空爆や毒ガスなど近代兵器の発達が戦場の悲惨さに、拍車をかけたことに
うんざりした欧米諸国は、戦時国際法で、戦争のルールを一応作ったと
されてるね」
一花「ええ、ただ第一次世界大戦終了後は、1919年のパリ講和会議において
なので、空爆は最初の事例は、1937年のゲルニカ空爆とされてますから、
残念ながら、この範疇(はんちゅう)ではないですね」
ゲルニカ:スペインの古都
晃司「そうよね。でも戦争のルールに関しては、
もっと前からあるよね」
一花「はい、クリミア戦争終結後、1868年に爆裂弾禁止に関する
セントピータースブルク宣言や、
普仏戦争終結後の1899年に、毒ガス禁止宣言、
ダムダム弾禁止宣言等がその一例ですね。
その後、第一次世界大戦、第二次世界大戦、ベトナム戦争、
地域紛争の勃発にもそれぞれ、議定書や条約が帰結されてますね、
ほぼ全部覚えていますが」
クリミア戦争:フランス、オスマン帝国およびイギリスを中心と
した同盟軍及びサルデーニャと、ロシアとの戦い。
普仏戦争:フランスとプロイセン王国の間で行われた戦争である。
ドイツ諸邦もプロイセン側に立って参戦したため独仏戦争
とも呼ぶ
晃司「流石やね。俺はその辺そこまで詳細には覚えてないなあ。
にしてもそうやんね、世界で初めての都市部の民間人の爆撃は、
ゲルニカやったよね」
一花「ですね。スペインの古都ゲルニカが1937年4月26日、ドイツの
コンドル軍団とイタリアの航空隊によって空爆を受けましたよね。
当時スペインでは内乱が起きていて、共和国政府側をソ連と
メキシコが支援して、反乱軍側をドイツとイタリアが支援
してました。
ドイツは校外の橋を攻撃する予定でしたが、攻撃直前に
イタリア軍機三機が爆弾を投下していて、煙が立ち込めていた
ために、コンドル軍団の飛行士達は橋を直撃できずに、
市街の大部分を破壊してしまいました。
これでヨーロッパの都市が初めて空爆で破壊しました」
晃司「そやったね。戦闘経過規制の中で、最も長い歴史を持つ条項は、
非戦闘員の殺傷禁止よね」
一花「ええ、王侯、貴族が傭兵を雇って行う大規模な決闘のようなもので
あった時代には、戦争に一般の国民を巻き添えにするなという、
戦闘の場から国民を隔離(かくり)する条項として機能しましたね。
その後、第一次世界大戦の頃、徴兵によって全ての国民が常備軍に
加わる総力戦時代になると、兵士としての国民と兵士でない
国民との間に境界線を引いて、非戦闘国民を安全圏に囲って
おくための条項になりましたね」
晃司「そやね、そやけど第二次世界大戦の頃になると、総力戦を終結
させるのに有効という理由で、空爆が許容されたんよね。
それどころか、アメリカ軍が同時多発テロへの報復として、
アフガニスタンに空爆を行うとき、もはや空爆は戦争終結の
手段ではなくて、制空権を含めて圧倒的な軍事力を持つ側の
基本戦術という意味を帯びるようになって
しまったんよね。由々しき事態よね」
一花「そうですね。第二次世界大戦ではもうすでにそうですよね。
フーヴァーも、非戦闘員の殺傷が不正であることを、
再確認する書簡を発表していますもんね」
晃司「そうやね、フーヴァーもそう言ってるね。
俺は哲学はよく分からんけどイギリスの哲学者、
エリザベス・アンスコムはトルーマン元大統領が、ケンブリッジ大学を
訪問して名誉教授の学位を受けると言うことが話題になったとき、
彼女はそのことに関して、原爆投下の倫理的責任があるから反対
という主張をしてるよね」
一花「私も哲学は得意じゃないですけど、彼女は、軍人の一団を攻撃したら、
偶発的に民間人を殺害してしまったという場合には、
殺人にはならないが、軍人の一団を殺害しようとして、軍人を含む
都市の住民全体を殺害するなら、殺人になると言ってますね」
晃司と一花は話を続けたのである。
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