第35話 更なる二人の会話 その2
晃司「難しくなってきたね。
でも俺らのいた時代は戦争の形態が今より、更に歴史的に変化して、
空爆が戦術の基本となる時代やったからね。
非戦闘員の殺傷の禁止を唱えることが時代錯誤という判断ほど、
恐ろしい慣れは無いとは思うけどね」
一花「ですね。時代とともに変わってきてますが、特にこの時代で
日本は非戦闘員を故意に殺傷されますもんね。
この時代ですでにアメリカはその非戦闘員を殺傷することに慣れて
しまってるのかもしれませんね」
晃司「そやね。非戦闘員やからね。だから俺らのいた時代もアメリカが、
全てが正しいということはないと思うよね。
実際この戦争後の俺らのいた時代でもさっき言った様にアメリカの
戦闘員は他国の非戦闘員を当たり前の様に殺傷してたもんね」
一花「戦闘員は少なくとも戦闘員同志だけで最小限殺傷すべきという
ことですか?」
晃司「その問題になると俺らのいた日本国憲法では説明がつかんよね。
なんせ自衛隊はあっても軍隊はなかったんやからね」
一花「私達の常識で考えれば、戦闘員も人間ですし殺傷すべきでは
なくなりますよね。
・・あっ、すみません。うかつでした」
晃司「いいよ。でも確かにそうよね。俺らの常識から考えると
戦闘員同志でも殺傷すべきじゃないね。
ただそうせざるをえない状況やからね。
特に今は。
ただ俺自身、戦闘員同志ならその、慣れがでてきて
しまってるのかもしれない。
しかし俺らのいた時代も含めて敵戦闘員をやらなければ自国の
非戦闘員が殺傷されるからね」
一花「平和な時代なら軍隊があったとしてもそうしなくて
すむんですけどね」
晃司「平和かあ。俺らの時代の日本では武力の衝突や競り合いがないことが
平和との認識やったけどあの時代でも、日本以外の先進国では、
武力の威嚇や勢力争いの均衡がたもたれて、平和とされている
のが、ほぼほぼ諸外国の常識よね」
一花「あ、それは良く知らなかったです。にしても極端ですけど、
やっぱり歴史を振り返ってみても戦争は無くならないんでしょう
かね」
晃司「君の言う歴史っていうのはどこからかってことにもなるかな」
一花「有史以前から世界には国家というか王朝などがあってその
栄枯盛衰はあったのは知ってますが。
唯一日本だけが世界で万世一系の単一王朝ですよね」
晃司「うん。でも世界では、もうそのころには人間は殺し合いをしてたよね。
例えばアジアでも中国なんかでは中華の中だけで。
もっとそれ以前の旧石器時代何かはどうやったんやろね」
一花「これはもう考古学の部類になると思いますが、1万5000年前の
旧石器時代には武器をもって戦争をしていた可能性が示される
とされています」
晃司「じゃあもっともっと昔はどうやろね」
一花「そこまではわかりませんよ」
晃司「本当に、これはもう人類学の域やけど、たまたま俺は知ってたん
やけど人類200万年の歴史のなかで、99.5%を占める狩猟採集社会に
おいて人々は戦争を繰り返し、殺し合いを続けてきたとされてるんよ。
我々の先祖は人類発祥の時点以来ずっと戦争を続けてきた
ということやね。
もう言いたいことは分かるよね」
一花「人類はその発祥とともに戦争をしてきたのであって、
未来永劫戦争が無くなることはないということですよね」
晃司「まあなんというか残念なことに、そうとしか考えられんよね。
しかしこれを事実として肯定せんとね。
だから先ほどの議題にも触れるけど、戦闘員同士の殺傷まで否定
してしまうと、それは人類発祥依頼の人間の営み自体否定してしまう
ことになるかもしれないね。
ただ文明や更には王朝、国家が存在するようになってから、
平和な時代が長く続いたことも確かよね。
それに王朝や国家が存在するようになってから人々の死ぬ割合、
特に戦死は極端に減ってきてるのよ」
一花「そうなんですか?それは明るい見方が出来ますね。
でもまあ平和と戦争の繰り返しですか」
晃司「簡単にはそれもあるね。君がさっき言ったように王朝や国家にも
栄枯盛衰はあってそれは人間の寿命よりは長いけどやっぱり
その通り国家等もそれなりに寿命があるもんね」
一花「その中で私たちはほんのちょっとの歴史を変えようとしている
だけですよね」
晃司「そうやね」
一花「これでも文明によってどんどん平和の時期が長くなってるの
だからこの時代において、私たちの仕事は一時の平和を作り
出すための手段として戦争をしていることになるんですよね」
晃司「そういう事になるよね。ただやっぱり世界はともかく俺は日本人
やから日本優先に物を考えてしまうけどね。
日本国憲法に則り天皇陛下が世界平和を希求するお言葉を発して
られるけど、まあ日本国憲法の議論は君ともやったけど、まず
日本と日本国民の生存と安全が補償される権利と義務が我々には
あるね。
その上で世界平和の希求ということになるよね」
一花「それでいいと思いますよ。この時代でも日本や私たちに圧倒的な
武力があったりするわけでもないし、世界のことは各国に
任せていいんじゃないでしょうか」
晃司「まあ大まかには戦後の世界のことも考えてるけど、
それも日本のためにそう考えてるんかな」
一花「それでいいんじゃないでしょうか。私は晃司さんを信じます」
晃司「ありがと、一花。まあ今回の珊瑚海海戦の後のAL作戦についてやけど
君は自分の考えで、他人種とは言え人を殺傷することになるんよ。
また聞くけど一花、覚悟はできてるかい?」
一花「晃司さんと同じ道を歩むなら、私は後悔しません。
あなたを孤独にはさせません。好きです、晃司さん」
晃司「俺も好きよ、一花」
二人は口づけをし、お互いの気持ちの確認をしあったのであった。
晃司「次の作戦が終わったらまた会おう。
そんときは日米の和平が成っるといいけどね」
一花「はい。きっと晃司さんの期待通りになりますよ。私は信じてます」
晃司「そやね、前向きに考えて行こうか。山本長官に珊瑚海の海戦が
終わるころまでには帰って来いと言われてるし、ぼちぼち行くよ」
一花「はい。次に会える日を楽しみにしてます」
晃司「うん。じゃ行こうか」
一花「はい」
二人はその場を後にし、永野のところへ戻った。
晃司「総長、ただいま二人とも、戻りました」
永野修身「うむ。次の事は園田君から聞いている。
君も次の作戦に専念しなさい」
晃司「はい総長ありがとうございます。
私はそろそろ立ちたいと思います」
永野「早いな。今回もゆっくりできんのか?」
晃司「はい、山本長官にも豪州の海戦が終わるまでには帰って来いと
言われていますので」
永野「そうか、わかった。今回も偵察機を用意しよう、
それで帰りなさい」
晃司「ありがとうございます総長。いつもお世話になります」
永野「なあに、大したことじゃないよ、これからのこのお国を頼むよ、
岡本君、山本長官にも宜しくな」
晃司「はい、全力を尽くします。では総長、私はこの辺で失礼します」
永野「うむ。園田君、君も空港まで送って来なさい」
一花「ありがとうございます、総長。では私も失礼します」
晃司と一花は空港まで一緒に行き、一花は晃司を見送って、
別れたのであった。
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