第27話 同族嫌悪 part3

 一体Bは、Aの周りを何周回ったであろうか。Aは、目の前の「素の道化」に、あっけにとられているようだ。彼の目も口も、真ん丸である。Bもそんな彼の様子を察知したのか、彼はAの真後ろで立ち止まった。


「ごめん、話が逸れ過ぎた。僕は話すのが好きだもんだから、ついね。えーっと、なんだっけ……。あ、そうだそうだ。さっき僕が言いたかったことっていうのは、君と僕は一心同体だってこと。ただ、同一人物かって言われると、多分そうじゃない。むしろ全然違うのかもしれない。けれど、僕は君なしには僕でいられないし、君も僕なしには君でいられない。僕たちはそういう関係なんだよ」


「デタラメを言うな!」


 Aの表情は、再び怒りに染まっていた。彼は、隅々まで赤くなった顔と、これでもかと言うほどの大きな白目を、Bに見せつけた。今にもBに飛び掛かり、その首をねじ切ってしまってもおかしくないと言えるほどの気勢である。


「まあ、まあ。落ち着いて。それから、もうそのめでたい、いや、おっかない顔はやめてくれ。まったく。僕を殺す気でいるわけでもあるまいし」


 Aにしてみれば、これは図星だったのだろう。彼はハッとして、落ち着きを取り戻した。いや、取り戻させられたと言う方が、正確かもしれない。Bはこれを狙って、わざわざAの心を針で突いたのではなかろうか。彼の怖いほど冷たい笑顔が、それを物語っているように見える。


 Bは、Aが落ち着き始めたのを確認すると、再び話し始めた。


「よし、わかった。少し話を変えよう。君はさ。独りでいるのが好きなんだろ」


「なんだよ……。なんなんだよ。急に。気味が悪いな」


「違うのかい?」


「いや…。合ってる。合ってるけどさ。どうしてお前なんかが……」


「やっぱり。実は、僕もそうなんだ」

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