第22話 思いがけない出会い

 未だに、私の体は止まらない。一向に、止まらない。色々な想いが、私のなかで駆け巡る。この今の状況は、私への罰なのか。それとも、自然の不条理な気まぐれか。いずれにせよ、私の体はまだ止まらない。


 ものすごい衝撃が私に走った。近いのは、鼻の下の辺りを、げんこつで殴られたときの衝撃。しかし、そんなもんではない。それよりも、遥かに絶望感を帯びている。私の意識は、静かに遠のいていった。


 何やら温かいものが、私の顔を伝って流れている。次第に、それは私の口元まで届き、そのまま口の中へと入っていく。しょっぱい味を感じる。私は、すぐさま上半身を起こし、その得体の知れないものを右手に取り、においを嗅いだ。土のにおいの奥の方に、はっきりとした鉄のにおいを感じる。どうやら、流血しているようだ。私は、恐る恐る地面を手でさすりながら、ゆっくりと左右を見回した。


 私が今いる場所は不思議なところだ。真っ暗で、何もない。遠くの方までずっと、真っ暗で、何もない。ここは一体どこなんだ。


「もしかしたら、あの世なのかもしれないね」


 声は、私の背後から聞こえた。私はすぐに振り返り、声の主をこの目で見た。途端に私の顔が、自分でもよくわかるほど大きく歪んだ。


 それは、予想外の人物だったのだ。ニヤリと笑みを浮かべた、憎たらしい表情。途方もない自信に満ち溢れた、ピカピカとした眼。背筋を弓のように伸ばして胸を張る、エラそうな姿勢。コイツは、私の姿をした化け物。私Bだ。

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