第18話 覚醒

 気が付くと、さっきまで薄暗かった私の部屋は、既に真っ暗になっていた。部屋には、ほんの少しの光だけがうろついている。奇妙に思った私は、近くにあった置時計を手に取り、それを顔面に埋め込むかのようにして見つめた。二本の針は、午前三時を示していた。さっきまでは夕方だったはずだから、どうやら私は、知らぬ間に眠ってしまっていたらしい。


 思った以上に長い時間が経過していたこと、それから、今まで家族の誰も起こしに来なかったことに、私は動揺を隠せなかった。私は、もう一度自分を落ち着かせようと、鈍い身体をゆっくりと仰向けにして、真っ黒な天井を、視神経の力を抜くように、ぼんやりと眺めた。ぼやけていた天井は、徐々に詳細に見えてくる。天井だけではない。机や本棚も、私の手や足も。さらには、私が独りでこの部屋にいるということも。


 そして、今いる世界は私の元いた世界で、今の私は私Aだということも、詳細にわかってきたのである。

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