第13話 トークショー part3
しかし、私はすぐ近くに、私のそれとまったく異なる空気を見つけてしまった。
それは、私の隣の席を取り囲み、まるで、独りで読書に勤しむこの席の
それを見て、私はすぐに、このトークショーの「エンディング」を思いつき、どこから見てもわかりやすいように、ジーっとその席を見つめた。そんな私に気が付いた隣の席の子は、逃げたくても逃げられないという困った様子で、読んでいた本の表紙を誰からも見られることが無いように両手で覆い、ただただ顔を紅潮させていた。
周りの人間は、この状況を見て、無音の笑い声を発している。まったく、大衆というのは残酷だ。まあいい、準備は整った。私は、今度は静かに、少しだけ時間を待った。
「……。3Dでズレてたのよ」
一秒ほどの凪があった。それが明けると、ザワザワザワというまばらな笑い声が、教室のあらゆる場所で断続的に生まれた。人によって聞いてから理解して笑うまでの時間が違うのだ。多少高度なテクニックを使ってしまったもんだから仕方ないが。
これらの笑い声はおそらく、「いや、それだけじゃさっきの話は伝わらないだろ」という趣旨のものなんだと思う。さすがに、それぐらいのことはわかってくれていると信じたい。というか、もしわかっていないなら、この大衆は一体何で笑っているのやら。ちなみに、案の定、隣の席の子は何秒経っても凪であった。
とにもかくにも、私の「トークショー」は大成功のうちに幕を下ろしたのだった。
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