第11話 トークショー part1

 授業が終わって休み時間になると、一〇分しかないにも関わらず、私の周りにはいつも、数人がやって来た。私の身体からWi-Fiが出ているとでも思っているのか、彼らはいつも、私の周りでひたすらスマホゲームをするのだ。とはいえ、人に話すのが好きな私にとっては、これはありがたいことではある。私は、面白いことを思いついた。


「なあなあ。さっきの授業で思い出したんだけど、中学んときの友達で、面白いやついてさあ。そいつの話していい?」


 すると、彼らは、予めインプットされていたかのように、首をタテに動かした。私はそれを確認することもせず、その話の構成を整え始めた。そして、不自然にならないように、そっと、大きく息を吸い込む。


 これからする話は、今自分の周りにいる人だけに向けられるものではない。私は今から、この教室全体に向かって話す。要は、一〇分間の「トークショー」をやるのだ。だから、それなりの声量が必要なのである。


「え~」


 話をし始める前、私はよく、いずれかの母音を使って、二、三秒ほどの時間を待つ。この時間というのは、私が声を届ける相手に、きちんと耳を傾けさせるためのものだ。思惑通り、教室の空気がサワサワと鳴る。この空間にいる者のおそらく全員が、期待の眼差しを私に向けているのだろう。


 では、始めるとしよう。

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