崩れ出す日常
"$%%&%$%$#""$%!!!!
生まれ堕ちた命が今、歓喜の咆哮をあげる。
「きゃぁあ!!」
「くっ!」
空気を切り裂かんばかりの咆哮は物理的な衝撃を伴って二人に襲い掛かる。
尻もちをついて倒れた少女をかばうように移動する。
「嬢ちゃん、早く逃げてくれ。今の咆哮で近くの専門家に通報があったはずだ。少し時間を稼げばすぐに救援が来る。」
「でも!貴方は?」
「嬢ちゃんが残るよりはマシだよ。いいから、早く行きな。」
出来る限り不安にさせないように気を遣ってみたのだが、上手く行っただろうか。
「っ!」
駆け出した少女を尻目にし、意識を怪物へと集中させる。
全身を蔓で覆われた3m強の上半身が発達した人型の異形。頭部と思しき場所には熱帯地域に存在しそうな鮮やかな花が咲き、およそ牙など無さそうな口の中には昏い空洞が広がっていた。。
そんな異形の怪物を前にして平常運転。その自然体は傍から見れば、見るからに異常であった。
「さて、どうしたもんかね。」
怪物の処理は男にとって造作もないことだった。幾度となく繰り返してきた作業にも等しいものだった。
(救助が来ることを考えると、倒せないよなぁ。目撃者もいるから無かったことにもできないし、やっぱり来るまで粘るしかないかぁ。)
怪物から目を逸らさないようにしてゆっくりと怪物の周囲を回るように歩き出す。
未だ目覚めたばかりで意識がはっきりとしないのか、怪物はこちらを目で追うばかりで襲い掛かってはこない。
遠くで鳴り出したサイレンにほんの少し気を取られる。
瞬間――――
怪物はその巨躯を余すことなく活用して全身で右腕を叩きつける。
バゴォォン!!
濛々と立ち込める煙。右腕の周囲は大きく陥没し、直に食らった者は粉々に―――
「あっぶなぁ...」
徐々に収まる煙から颯爽と男が現れる。
%$#"&!#"$?
首をかしげる怪物。なぜ?どうして?
生まれ堕ちたばかりの未発達な頭で疑問を繰り返す。
「気が逸れた一瞬を狙って全力で攻撃。成る程、成る程.......お前さん生まれたばかりにしては賢いなぁ。」
%$"##%$#!"##!%!!
獲物へ向け、真っ直ぐに拳を叩きつける。何度も、何度も。
怪物がようやく手を止めて暫く、再び立ち込める砂塵も晴れ陥没し粉々になった道路。
今度こそ――――
怪物がそう思った直後、
「おいおいおい、どーすんのこの惨状。道路工事もタダじゃねぇーんだぞ。つーか、遅ぇな。」
何事もなかったかのように男が真後ろから現れた。
なぜ?どうして?再び繰り返される疑問に頭がこんがらがり、怪物は泣きわめく赤子のように、癇癪を起こした子供のように叫びながら男へと猛進した。
「あ、来た。」
最早こちらを見ることさえしない男目がけ、猛進している途中。
ブツリ、と怪物の意識は途絶えた。
###
暴れる怪物を一刀のもと切り捨てたのは赤みがかった黒髪の少女だった。
身の丈の程ある大剣で叩き潰すように両断。まるで小枝でも持つかのように華奢な細腕で大剣を振り回すさまは圧巻の一言に尽きる。
「こちら
耳元に手を当て、何やら呟く少女をポケ―っと見ていると、少女が問いだしてきた方向から複数の足音が聞こえてきた。
「つばきちゃーん。」
聞いただけで癒されるようなポワポワとした声に何事かとそちらを見てみると、九人のまだ少女といっても過言ではない年齢の女の子たちがこちらに向かってきていた。
中には先程逃がした少女もいた。
「おにいさん!無事だったんですね、よかったぁ。」
「おぅ、嬢ちゃんも元気そうで何よりだよ。」
少女は本当にこちらの身を案じてくれていたようで、軽口をたたくとホッと息を吐いて膝から崩れ落ちてしまった。
「おいおい、大丈夫か?」
「あはは、すいません。なんだか力が抜けちゃって。」
引っ張り起してやると、先程怪物を仕留めた黒髪の少女と黒みがかった紫髪の少女がこちらに近づいてきた。
「お怪我はありませんか?」
聞いた者の心を開くような柔らかい声で
「あぁ、大丈夫ですよ。」
少女たちの面々を見るに、おそらく最年長であろう少女へと淡白に返答する。
「外特
外特、正式名称を『外来生物特殊取り締まり課』。根より生まれ堕ちる怪物への対抗組織であり、永陰暦5年に結成された組織だ。
元は諸外国との戦争時の鉄砲玉としての役割を持った小隊だったそうだが、根が世界を覆いつくしてからは戦争も無くなり、代わりに根に対する対抗手段として国営組織となった。
「わ、私ですか!?えっと、何かしましたっけ...」
「その辺りについても司令から直接お話があります。...貴方もそれでいいですか?」
すっかり置いてけぼりにされているかと思ったが、どうやらちゃんとこちらのことも認識してくれていたらしい。
「...ちなみに断ったら?」
「何か困るようなことでも?」
それまで静観していた黒髪少女改め黄瀬少女が睨みつけるようにこちらを見ていた。
「いや、ただ...」
「ただ?」
「せっかく温めてもらったおにぎりが冷めちまうから。」
そう言うと、ほとんど表情に変化のない彼女のまなざしが呆れの色を映し出した。他の二人も苦笑している。
「それでは行きましょうか。」
#####
外特本部への道中、気になることがあったので聞いてみた。
「他の娘達は?」
「現場周辺で異常がないかの確認作業をしています。後は、警戒ですね。」
「警戒、ですか?」
終局を迎えた現場で何を警戒するのだろうかと、疑問に思ったのだろう。お嬢ちゃんこと河野少女が首をかしげる。
「過去に何度か、それほど時間を空けずに同じ場所に連続でプラントが堕ちてきたことがあったんです。なので、暫くは警戒態勢を解けないんですよ。」
諸藤少女は子供に教えるかのように、ゆったりとした口調で答えていた。
そんな様子を少し後ろを歩きながら、ぼーっと見ているとふいに声をかけられた。
「貴方は....」
「ん?」
隣を歩く少女を見る。無表情のその奥になにがしかの疑問を抱えているように思えた。
「....いえ、何でもありません。」
結局、道中その先に続く言葉が何だったのか、分かることは無かった。
#####
事情聴取は割とあっさりと終わった。
情報のすり合わせのため、二人同時に諸藤さんからの質問に答えていくだけ。
質疑応答の際、黄瀬少女から向けられる不躾な視線だけは居心地が悪かったが何の変哲もない事情聴取だった。
河野少女には他にも用事があったようで居残りが命じられていたが、用事が終わった俺は本部内にいる用事もないのでのんびりと帰路についた。
「....冷めてる。」
冷えたおにぎりを口にしながら。
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