第12話 神と人


 土地神アラドベレクは、四足で歩く獅子の姿をしながら、その高さだけでも家屋の数倍近くの巨躯をしていた。

 それだけの大きさならば、至極当然、防壁の外からでも、その姿を見ることができる。


「間に合わなかった——いや、嵌められたのか? ともかく、もうノエンとの休戦とか言ってる場合じゃあなくなったな」


 錆色の片刃剣を一振り。血を払うと、クガナは自分を取り囲むノエン軍の兵達に告げる。


「お前らは逃げろ。死にたくなけりゃあな。あれと戦って勝てると思うか?」


 兵達は互いに顔を見合わせ。

 それから、ブルブルと首を振った。


「じゃあ行け。今ならまだ命だけは助かるはずだ。ほら、早くしろ!」


 表情を恐怖に染めながら、ノエン兵たちは必死の様子で逃げ出していく。

 そんな背中を見ながら、クガナは呟いた。


「俺もあの時、こうすりゃよかったんだろうな。なんで向かっていった? 勝てるとでも思ったのかねえ? 俺はそんなに死にたかったのか?」


 そうだ。死にたかった。


 いい死に場所が出来たと思った。


 この剣が絶えるに相応しい舞台が、ようやくやってきたのだと。


 ハバキもユラも救えなかった、主君に最後を捧げることの叶わなかった、この虚しい剣が、折られる時がやっと訪れたのだと。


「その末路が、これか」


 ハッと皮肉ぶって笑いながら、クガナはアルディシアに向かって——否、アラドベレクに向かって、歩き出す。


 歩いて、歩いて。

 足取りを速め、走り、駆け、駆け抜け。

 跳んで、跳びはねて、そして飛びかかる。


「アラドベレク!」


 叫び、錆色の片刃剣——竜尾を振るう。


 無限に伸びる刃が獅子のたてがみを斬り裂いた。アラドベレクの咆吼が轟く。


「さあ始めようか、三百年ぶりの殺し合いだ! 殺れるものなら殺ってみろ! この! 神を殺したこの俺を!」



 ◇



「始まりましたね。クガナ様と、アラドベレクの戦い。少しくらい悩むものかと思っておりましたけれど、侵攻してきた外領の民を護るため、でしょうか。流石はクガナ様です。……それとも」


 恍惚の表情から、すうと冷めた無表情へとヨルメアの顔が変わっていく。


「——あなたが何か、仕掛けてくるのでしょうか。アルディシア王族、エルシュナーゼ・ヴィズ・アリオンロード」


 ぜえ、はあ、と息を切らせた、エルシャがヨルメアの前に立っていた。


 その手には神剣ソラスではなく、白銀の大剣を持って。


「ずいぶんと、よい剣をお持ちですね」

「ヨルメア、あなたは——」


 大剣を構え、声を荒げる。


「あなたはどうして、こんなことを! 戦乱を起こし、神を呼び、その神を殺す! あなたは一体、何がしたいんですか!」

「クガナ様の大ファンだから。じゃあ、駄目ですか?」


 大剣を振るう。

 その刃が、ヨルメアの目の前に生まれ、しかし黒い空間に取り込まれて消えた。


「嘘をつくたび、舌を斬る」

「古い、滅んだ外領のお伽話ですね。よくご存じで」

「話を逸らさないで、ヨルメア」


 ふふ、と笑い、ヨルメアはエルシャをなだめるような態度を取る。まるで、親が子供をあやすように。その様子にエルシャは一瞬、ヨルメアのかつての姿、教会のシスターとしての面影を見た。


「——わたくしは以前、アルディシアでシスターをしておりました」


 ゆっくりと、ヨルメア・シファレスは——いや、ヨルメア・シファレスとなったかつてのシスターは、語り始める。


「郊外ですが、よい土地でした。貧しくとも食べるには困らず、病で死ぬようなこともない。わたくしは神の恩寵に感謝し、日々祈りを捧げて暮らしておりました。その平穏は、今もシスターとして生きていれば、いつまでも得られたものなのでしょう」

「だったら——」


「——しかし、外領はそうではない」


 口を挟むなとでも言うように、ヨルメアの口調は鋭かった。

 あるいは、心からの怒りが、言葉に宿っていたのかもしれない。


「外領は厳しい世界です。土地は痩せ、獣は凶暴。祝福の地から遠ければ、歪んだ魔獣までいる。外領の民は常に餓え、苦しみ、争っている」


「わたしは外民たちに対して、こう考えていました。彼らは愚かだと。どうして祝福の地の周囲に集い、そこで得られるわずかな恩寵の残り香を享受しないのか。それが彼らが手にできる最上の幸福であるはずなのに」


「しかしある日、ふと、思ってしまったのです」


「どうして彼らではなく、わたくしだったのか、と」


「……どういう意味?」


 エルシャの問いを、聞いているのかいないのか。ヨルメアは語り続ける。


「彼らとわたくしの、何が違ったのでしょう。わたくしは人間で、彼らも人間です。食事をし、子供を守り、人を愛します。なのにわたくしと彼らは違う。どうして?」


「そこにあったのは、たった一枚の壁なのに」


「その一枚の壁があるだけなのに」


「わたくしはこんなにも幸福だ」


「よかったじゃないですか。幸福な側に生まれて」


 エルシャの言葉に、ヨルメアは頷いた。


「ええ。本当に。わたくしは恵まれていた。壁一つ向こう側に生まれていたら、こんな平穏な暮らしは出来なかったことでしょう」


「——それが、わたくしには許せなかった」


「————!?」


 突然変わった声色に、いや、その声で語った言葉に、エルシャは困惑する。


「理解できませんか? ええ、できないでしょう。神父様もそうでした。子供たちもそうでした。同じシスターも。誰もわたくしの心を理解できない。この耐えがたい罪悪感を、湧き上がる恥ずかしさを、息ができないような苦しみを!」


「……そこでわたくしは、ユーベルクのことを知ったのです」


「土地神の滅びた地……」

「ええ。その通り」


 ヨルメアは再び、穏やかな口調で話す。


「それからしばらくは、ユーベルクについてよく調べていました。わたくしの望む答えが、そこにある気がしたのです。現地にも行きました。幸いにもわたくしには、空間魔法の才がありましたので。資料を漁り、記録を探り、そして見つけたのです。神を殺した人間が、存在するということを」


「そして気付いたのです。神は……『殺してもよいのだ』ということに」


「……その末路が、今のユーベルクだとしても?」


「ええ。ユーベルクは滅んではいましたが、命の全てが尽きたわけではなかった。神無き土地でも生命は生きていけるのです」


「ならば」


「神が存在する限り、この世が公平に、公正に、平等にあれないのならば」


「————神など、世界に必要ありません」


 そう言ってにっこりと、ヨルメアは笑った。


「——っそんな……偏って与えられるものがいるくらいなら、全員から奪ってしまえと!? 全員が不幸になれば公平だって!? そんな、そんな馬鹿な理由で——」


 叫ぶエルシャに、ヨルメアはただ静かに頷いた。


「ええ。そんな馬鹿な理由で、わたくしは今ここに、こうしているのです」



 ◇



「…………ん?」


 瓦礫の中、自分の血の味を感じて、クガナは意識を取り戻した。


「やべ。ちょっと意識飛んでたか。今回は夢を見られなかったのが悔しいところ——だっ!」


 アラドベレクが家々を砕きながら突撃してくる。その突進に合わせるように、クガナは剣を突き出した。

 アラドベレクの鼻っ柱に剣が刺さり、しかしクガナも大きく吹き飛ばされる。家で跳ね、舗装された道を削りながら転がる。


「——っぐは! おっげ……」


 胃の中身を吐くかのように、大量の血反吐が口から溢れ出る。


「あー、くそ。痛え、クソ痛え。なんなんだよ、神ってのは。祝福を与えるのが仕事の奴が、こんなに強い必要ってあるかあ? ユベリオも、アラドベレクもさあ……じゃあ残り二柱もそうなのか? なあ? そこんとこどうなんだアラドベレク?」


 構え——ようとしたところ、手が無意味に握りこぶしだけを作った。


「剣がねえ」


 よく見れば、アラドベレクの鼻先に突き刺さったままだ。不快なのか、痛みもあるのか、どうにか外そうとアラドベレクが頭を振り回している。


 その余波で、瓦礫がクガナの頭を打ち飛ばした。

 転がりながらもクガナはゆらぎ、残像を作って、アラドベレクの鼻先まで瞬間的に移動する。そして剣を掴むと、ぐわん。宙を一回転して、周囲に広く一閃の斬撃を放った。アラドベレクの顔が大きく斬り裂かれる。


 しかし、その傷はわずかと経たないうちに塞がっていった。


 先ほどからこの調子だ。クガナも不死身であり、どんな傷でも次第に癒える。だが、神の治癒能力はクガナとはまるで桁が違う。


「こんな怪物、どうやって殺すんだよ。本当にユベリオ殺したのか、昔の俺。不可能だろ? どう考えても」


 刃を地平線まで広げる空断を使っても、アラドベレクの身体の奥まで届かない。同じ箇所に少しずつ傷を深めようとしても、すぐに癒えてしまう。


「だったら——」


 一瞬、三斬。それを、三つ同時に。瞬花と呼ぶ破界の技で、同じ箇所を攻め立てる。——が、やはり届かない。骨まで届いたとしても、向こうまでは到達しなかったようだ。


「これも駄目。あれも駄目。ああー、俺のこれまでを否定されてる気分だ」


 強い。という、自覚はあった。

 エルシャに世界一と言われても、否定はしなかった。


 だが、こうして本物と相対してみれば、なんのことはない。クガナもまた、一人の人間でしかない。


 神と呼ばれる存在と対峙して、改めてクガナは自分の弱さを確かめることになっていた。


「こんな奴が弟子を取ろうなんて、やっぱり間違ってたんじゃねえか? 師匠ってのはもっとこうさあ……圧倒的で、絶対的で、信頼できて……まあ、俺は師匠なんていたことねえけど……さあ!」


 襲い来るアラドベレクに、すれ違いざまの一撃。

 斬り、しかし止まり、弾かれる。


 互いに倒れ込み、アラドベレクの方は家が五軒崩れた。そしてすぐに立ち上がる。もちろん傷も癒えて、だ。対するクガナはといえば、飛び散った建物の破片で付いた傷さえ塞がらない。


「あー、ジリ貧だ。終わる気がしねえ。いや、俺が死ねば終わるんだろうけど」


 おそらく。

 土地神たるアラドベレクならば、同じ土地神に呪われたクガナのことも、殺すことが出来るのだろう。そして、その逆も。


 先のユーベルクでユベリオの骸に再び触れた時に、気が付いた。クガナの身体に宿っているものは、ユベリオの神性のわずかな欠片だと。戦いの最中に取り込んでしまったのだろう。


 だが、それだけだ。それを呪いと称するか、祝福と称するかは、人による。その上でクガナは、このように受け取った。


 あれは単なる偶然だったのだ。と。


 ユベリオの意思も、クガナの意思も、そこにはない。全ては不幸な偶然でしかなかった。少なくともクガナの結論はそのようなものだった。


 死に場所を探し、さまよっていた。なのに気付けば死ねなくなった。


 今度は死ぬ方法を探していた。なのに今は、死なないために足掻いている。


 つくづく、人生とは度し難い。


「そういうものだ」


 と、かつてハバキは笑った。ユラも笑っていた。クガナはその時、笑わなかった。だから今、その分笑おう。なんと間抜けな人生か。


「……アラドベレク。お前はどうなんだ? お前はどうして生きている。……死にたいなら、俺が殺してやるぞ」


 今なら分かる。

 死線をくぐり、アラドベレクの命を感じた今ならば。


 きっとユベリオもそうだったのだろう。神としての命。崇められるものとして生き続けることに、いつしか疲れる日が来たら。


 もし、来たというならば。


 その時は。



 ◇



「わたしはアラドベレク様を止めますよ。ヨルメア。こんな戦いは、アラドベレク様も望んでいない」

「……そうですか。そうなるのでしょうね。やはり」


 遺跡の中央、輝き続ける神剣ソラスの前に、ヨルメアが立ち塞がった。

 神剣ソラスが、アラドベレクを解放する鍵。それはエルシャにも、ヨルメアにも分かっていた。ここで全てが決まる。


「まだ終わらない。終わらせられない。わたくしの願い、わたくしの望みは、まだ尽きてはいないのだから」

「いいえ。終わってますよ、とっくに。むしろ始まってもいない。師匠は元から、土地神を殺すつもりなんて無いんですから」


「……だとしても、アラドベレクを放置することはできない。殺さなければ、外民が死んでいく。だから殺す。それがクガナ様の甘さです。貴女を……生かしたのだって、きっとそう。あの人の甘さから出た過ち」

「……違いますよ。そんなんじゃない。本当は……わたしはずっと……気付いてたんです。あの人は、殺されるためにわたしを殺さなかったんだって。かつて自分が殺した、ユベリオ様がそうだったように」

「……!? どういう……」


 エルシャは再び白銀の大剣を——竜牙を、構える。

 大上段に。振り下ろすために。


「やるならどうぞ、わたくしごと。この計画が失敗すれば、わたくしの希望は潰える。もはや生き続ける意味もない」


 神剣ソラスを守るように、ヨルメアが手を広げた。


 そんなヨルメアなど見えないように、聞こえないかのように、エルシャは独白を続ける。


「あの人はきっと、ずっと無意識に探してたんです。あったはずのもう一つの道を。殺してくれと願う相手を殺さずに済んだ、『もしも』を」


 だから。


「ここでわたしが、師匠に。いいえ、あの人に!」


 振りかぶり。


「——クガナさんに、見せてあげなくちゃならないんです!」


 斬り下ろす。


「その——『もしも』を!」


 そして白銀の刃は、神剣ソラスを——音も無く両断した。



 ◇



 アラドベレクの首、その直前で、クガナの刃は止まっていた。そしてアラドベレクもまた、止まっている。止まって、自らの身に起きたことを確かめている。


 それから目の前の傷だらけの男を見て、その傷を大きな大きな舌でべろりと舐めた。

 二度、三度と男を舐めてやったところで、空に向かって咆吼する。


 それからクガナを、そして遠くのエルシャを見つめ。咆吼すると、軽やかに跳び出した。


 アラドベレクはアルディシアの野を駆け、森を跳び越える。沈むことなく湖の水面を走り、何を踏むこともなく大地を駆け巡る。


 そして再び、最後の咆吼をすると、人の作り上げた防壁を、祝福の地とそれ以外を分かつ壁を、何の躊躇いもなく跳び越えて、走り去っていった。


 その足跡の全てに、豊かな自然を育みながら。


「……あれは、一体……」

「あれが本当の、アラドベレク様なんだと思いますよ。何にもとらわれず、自由気ままで、奔放な、子供みたいな神様」


 腰が抜けたようにへたり込むヨルメアに、エルシャが笑いながら言う。

 そんな二人の元に、よだれでベトベトになったクガナがやってきた。


「……ひっでえ目にあった……」

「怪我のことですか? よだれのことですか?」

「どっちもだよ……おかげで傷は治ったけどさあ……」


 ぼやくクガナと、楽しげに笑うエルシャを、ヨルメアがぼんやりと見つめる。そこではっと気付く。


「そ、そういえば……わたくしはどうして生きて……?」

「んあ?」


 ぬめるよだれを拭いながら、クガナはヨルメアの疑問に答える。


「何があったのかよく知らんけど、こいつの剣の動きはもう当てにならんぞ。振ったのと違う場所を斬れるようになってるからな」

「議場の暗殺者を倒した時に習得しました。名付けて——」

「無剣。お前のオリジナルじゃないからな」

「うええ!? 嘘でしょう!? 師匠の技に、そんなのありましたっけ!?」

「あるよ。つか見せたことあるだろ。というか見たことあるから使えたんだろ、あの時」

「そうだったかなぁ……本当に全然覚えてない……むしろ師匠のどの技が技なのかも、たまに分からなくなるんですよね……」

「……師匠甲斐がない奴だな、お前は」


 無駄口を繰り返すクガナとエルシャ。

 そこでクガナが「あ」と思い出し、ヨルメアに言う。


「そういやお前さ。とりあえず外領……いやこの言い方もおかしくなるのか……? まあ今はいいんだけど、とりあえずアルディシアに侵攻してきた連中を、撤収させてくんない?」

「え、いえ、わたくしは……彼らを侵入させた罪でこれから死刑を待つ身になるかと……」


「それ今すぐじゃないだろ。俺は今あいつらを帰らせろっつってんだよ。あいつらに伝手あるの、この国でお前しかいないんだから」

「そ、それは……その通りかもしれませんけれど……」


 状況が把握できない。というわけではないものの、ヨルメアはだいぶ混乱していた。この場で斬り捨てられても仕方ないようなことを、これまでにしてきたはずだからだ。


「く、クガナ様は……わたくしのことを……お許しいただけ——」

「いやそれも無いけど」


 言うより前に答えた。


「かといって、俺がここでお前を殺す理由も別に無いんだよ。お前はこれから、裁判でもなんでもかけられて、死刑になっときゃいいんじゃないの。俺の知ったことじゃない」


 よだれを拭い終えた布を、そこらにぽいと捨てる。それを何かに使えそうとエルシャが素早く掴んで回収した。


「あ、待て。こいつには殺す理由あったわ。お前の家族の仇。間接的だけど」

「いや、さっきあえて殺さなかった時点で察してくださいよ、師匠」

「それもそうか。じゃあ今の無し」


 クガナは大きく伸びをして、あーあ。と大口のあくびをする。


「……疲れた。傷は治ったが血が足りん。ここで寝ていいか?」

「駄目です。わたしが引きずっていくの大変なので」

「……冷静に考えると、なんで俺の行動に弟子の許可がいるんだ」


 ぎゃいのぎゃいの言い合う二人をよそに、ヨルメアは再び、アラドベレクの足跡を眺める。


「アラドベレク様は……一体、どうなってしまったのですか」

「あくまで、わたしの予想ですけど」


 ごろんと横になったクガナを持ち上げながら、エルシャが答える。


「本当の意味で、解放されたんじゃないでしょうか。神剣ソラスはこの土地に住む人々と、アラドベレク様の間に交わされた、契約の証……とかだったんだと思います」


「契約……?」


「アラドベレクはこの地に祝福を。この地の民はアラドベレクに信仰と力を。まあ大体そんなとこだろ。あまりにも古すぎて、そんな契約を交わしたこと自体忘れられてたみたいだが」


「もしあなたが土地神を殺した師匠じゃなく、土地神自体のことを同じくらい熱心に調べていたら、違う道もあったかも……なんて、今更言っても仕方がないんですけど」


「そんな……ことって……わたくしは、何のために…………」


 焦点の合わない目でうなだれる。

 そんなヨルメアとは対照的に、クガナは遠く空を眺めた。


「そんなもんだろ、人生なんて」


 透き通った青い空に、錆色の竜が飛んでいった。

 ……そんな幻のような姿が、少なくともクガナの目には映った。

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