魔法

・魔法——鬼道

世の理をねじ曲げ、人の意思を具現する奇蹟を起こすこと。その種類は多岐に及ぶ。西方では魔法と呼ばれ、東方では鬼道と呼ばれる。人間がこれを行使するには、エスペラニウムまたは鬼石きせきと呼ばれる特別な鉱石を用いなければならない。一般に女性の方が適性が高いとされる。東方の陰陽五行説を基本とし、7種類に分類されている。


・魔力——霊力

エスペラニウムや鬼石によって行使される力の源を指す。それがどこからやって来るのかは定かではない。


・陰陽五行説

この世の成り立ちを、陰、陽の陰陽、火、水、木、金、土の五行によって説明する東方の理論。これが魔法——鬼道の分類の基となっている。


・魔導士——武士

それぞれ西方、東方での魔法——鬼道を扱う者の総称である。但し西方と東方では微妙に意味合いが異なる。完全に魔導士——武士のみで構成される軍隊を持つのは、ヴェステンラントと大八洲のみである。


・魔法には2つしか能がない

魔法で出来ることはものを生成することと操ることの2つだけだという意味の言葉。魔法は決して万能ではないという意味にも、その2つには無限の可能性があるという意味にも理解される。


・逆2乗の法則

魔法の強さが使用者からの距離の2乗に反比例すること。つまり、2倍離れた位置から魔法を使うと力は1/4になり、3倍離れると1/9になるということである。


・魔法の枷

取り立てて正式な名称はないが、いかなる高位の魔導士とて1人が同時に使える魔法は2種類までとなる現象を指す。その理由は不明である。なお、縛りはあくまで種類である為、同種の魔法ならばいくらでも同時に出せるし、瞬時に切り替えればあたかも3つ以上の魔法を同時に使っているように振る舞うことも出来る。


・魔法性崩壊

これも正式な名称はないが、魔法によって無から作り出した物体が、およそ24時間で完全に変性し、使い物にならなくなること。故に、魔法によってもの作りを行う際は、必要となる原料を予め用意し組み立てなければならない。但し、人間の感覚を具現化した魔法で、実用に耐え得る精密な製品を作れる魔導士はほぼ存在しない。


魔導鉱石エスペラニウム——鬼石きせき

人間はそれを自らの体に接触させることで魔法——鬼道を行使する。西方ではエスペラニウム、東方では鬼石と呼ばれる。これと人間が揃わねば、魔法——鬼道は発現しない。使用する度に消耗していく。産出地には偏りがあり、それがそのまま大国間の軍事力に繋がっている。一応は金属に分類され、産出したものはすぐに使える(単体であるのかは定かではない)。外見は紫色と特異であり、重さは金属としては軽い方である。


・魔法の杖

主に西方の高位魔導士が使用する、エスペラニウムを棒状に加工したもの。持ち運びや使用に最も合理的であり、高位魔導士は常時携帯している。


・鬼石帷子かたびら

東方の全ての武士が肌着のように着用するもの。鎖帷子のように鬼石が編み込まれている。魔法の杖のように毎度取り出す必要はなくなるが、手元に鬼石がない状況で鬼道を用いるのは難易度が高く、主に全体に訓練の行き届いた大八洲で運用される。


・隠しエスペラニウム、握り鬼石、など

特に定まった名称はないが、武器以外に見せかけて持ち運ぶ為のエスペラニウム——鬼石のこと。髪飾りや首飾り、杖などに偽装される。何らかの事情で武器を公然とは持てない、または失った場合の最後の切り札となる。


・ルカ式魔導士分類法

魔導士を強さに応じ以下に示す4等級に分類する方法。東西問わず、同様の考え方を基に部隊が編成されている。


五千人隊レギオー級=五大二天の魔女——高天巫女たかあまのみこ

神より力を授かったとされるイズーナ・ロベール、長尾少外記しょうげきあやの子孫の中でも尋常ならざる力を持った魔導士——武士をこう呼ぶ。悉く女性である。彼女らがどうして力を持つのかは未だ解明されていない。その力は未知数で圧倒的であり、五千人相当という評価も便宜上のものに過ぎないとされる。


・始原の魔女の心臓

始原の魔女——イズーナの心臓は、永遠に力を失わないエスペラニウムのような何かと化していた。それは4つに切り分けられ、大八洲、ブリタンニア、ルシタニア、ゲルマニアにそれぞれ保管されている。


五百人隊コホルス級——飛鳥衆あすかしゅう

その名の通り、五百の兵士に相当する力を持つとされる、一般の魔導士——武士の中では最高位の者たち。男性もいるにはいるが、大半は女性である。分類の条件にして最大の特長は、鳥のように空を自在に飛ぶ魔法——鬼道を修得していることである。


百人隊ケントゥリア級——大番衆

百の兵士に相当する力を持つとされる高位魔導士——武士。自らの意思をある程度自由に具現化出来る。砲撃や野戦築城など、様々な場面で活躍する。


十人隊デクリオン級=魔導兵——足輕あしがる

一般の兵士であり、魔導士——武士の大半を占める。出来合いの武器しか使うことが出来ない。とは言え、魔法——鬼道の使えない兵士と比べてその戦闘能力は圧倒的である。


・魔女——母衣衆ほろしゅう

魔導兵でない魔導士、足輕でない武士をこう総称する。高位の魔導士——武士とて、この世界では統計上の数字としか見られない。なお、日本語では魔女と訳すが、本来その単語に男女の区別はない。


・魔導兵器、當世具足とうせいぐそく

魔法——鬼道を自らの力だけで使える者は限られる。そこで、予め魔法——鬼道をプログラムし、使用者が力を込めるだけでそれが発現するようにした武器や防具が開発された。狭義にはこのような武具のこと。広義には魔法——鬼道の使用を前提として開発されたあらゆる装備のこと。


・魔導装甲——鬼鎧

鎧兜にあらかじめプログラムしておく魔法——鬼道。またそれを付与された鎧兜そのもの。装着者に脅威を与える飛翔体などの衝撃を吸収し、その損傷を修復する。魔力、霊力の供給源は使用者であるから、使用者がエスペラニウム——鬼石を使いきれば無論、その力は失われる。修復が追いつかない場合もある。また高温で焼き斬る類いのものには弱い。


・魔導弩

本体の下部にエスペラニウムを装填し、事前にプログラムされた魔法で金属製の矢を高温、超高初速で飛ばす兵器。誰でも簡単に扱える設計である。主に西方で使われる。このエスペラニウムは魔導装甲を作動させる為にも使用される。加速の原理は地球ではローレンツ力と呼ばれるものである。即ちこれは魔法を使った電磁加速砲(レールガン)なのである。


爲朝弓ためともゆみ

鬼石が仕込まれた矢を高温、超高初速で飛ばす兵器。弓は普通の人間が扱えない程に張力が高いが、それ以外で特別な加工はない。主に大八洲で使われる。使用者は、事前のプログラムなどに依らず、自らの意思によって鬼道を用い、これを扱う。魔導弩とは違い、飛距離や威力の調整が可能。人口と国力に余裕があり、全ての武士に高度な教育を施せる大八洲ならではの兵器である。


・魔導剣——頼光刀よりみつがたな

プログラムされた魔法——鬼道で、斬り付ける時に高温で焼き斬る刀剣。基本的には柄に埋め込まれたエスペラニウム——鬼石を使うが、使用者が別に持つものを使うことも可能。その原理は振動剣そのものである。東方のものの方が質はよいとされる。


・魔導通信機——遠話機えんわがらくり

光の魔法——鬼道を用いて、音声情報を遠くに瞬時に伝える装置。大陸間での通信も可能。但し遠距離で使う場合は、装置を事前に通信をする対象がある方向に精密に向ける必要がある。また短距離では混線が非常に問題となる。


・魔導探知機

ゲルマニアが開発した、使用中のエスペラニウムを探知する装置。これによって周囲の魔導士の位置が特定可能となった。魔導士の強さなども測定可能。但し高位魔導士には人間の探知を行える者がいる為、条件を互角に持ち込んだに過ぎない。また相手が魔法の使用を封鎖した場合、全くの無力である。

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