第4話 であい
クロエの通う高校で、旧友に出会う
一方、
🏫
面談室で向き合う3人。
クロエの担任の吉岡先生と学年部長の山崎先生、あとは俺だ。
話の内容はクロエをこの学校に編入させる事。この事案は
この内容の簡単な説明をすると、クロエと俺が正式な兄妹として日本で暮らす事だ。
そのために、まずはこの学園への編入を希望している。
フランスの学校へは話は済んでおり、あとは日本の学校がクロエのことを受け入れられるか? の問題が残っていた。
「こんなのって無いだろ…。」
封書の内容を確認された山崎先生は目に涙を浮かべている。
フランセを得意としない吉岡先生には、俺が口頭でその内容を告げた。いわゆる、クロエがフォーニエ家に歓迎されていない事を遠回しに話したのだ。
子供の中に女性は2〜3人いればいい、いわゆるフォーニエ財閥の政略結婚の使い道として、女性は2〜3人いれば事足りている。
その他の子供達。俺も含め、使い道のない子供は金を渡して、さようならって事を伝えたところ、吉岡先生までもが涙を流す始末。
話の流れで、俺がクロエと初めて出会った3年前の話もした。
それはジジイの最後の再婚相手、
クロエは当時14歳。体は大きくてもハートは子供だ。母親の葬儀で大泣きをしていたが、俺には慰めることもできず、見守ることしかできずにいた。
そんなクロエを周りの大人は目障りに感じていたようだ。
ジジイがクロエに向って、
「Ta gueule!」
(黙れ!)
と怒鳴りつけた。その時にいた周りの大人はクスクスと笑っていたのだ。
その時の俺は、無我夢中となり、声を殺し泣き崩れるクロエを抱き上げロビーへ連れ出し、そのままジジイの秘書に話を申し出た。
「Cet enfant est-il sur le chemin ? Je peux en parler.」
(この子が邪魔だったら、俺が育てるけど?)
「Tu veux de l’argent ? Noe.]
(お前はもっと金が欲しいのかい?)
「Je veux rendre cet enfant heureux.」
(この子を幸せにしたいだけだけだよ。)
「Tu es hypocrite.」
(偽善者が…。)
「C’est un compliment pour moi.」
(褒めてもらえて嬉しいよ。)
その日から俺はクロエと話すようになった。
俺が日本に帰国した後も、毎日スカイプで会話をしていた。
🏢
12:43 会社に到着。
午後からの出社に対し、課長から多少の嫌味を言われたが、咎められるほどの事ではなかった。
デスクに着くと、たくさんの付箋がモニター画面に貼られている。
私が自宅からリーモートによる、データの送信に感謝の電話があったようだ。9時まで待たずにきたデータが、とても嬉しかったようだ。
おそらく協力会社は連日、会社に泊まり込みなのかもしれない。
今更なのだが、私の会社はソーシャル・ネットワーク・ゲームの制作会社。携帯電話アプリ専用のゲームを制作している。
私の部署は企画と販促の、企画・販売促進部。私は企画の方を担当している。
今日はその打ち合わせだ。私の考えた、女子向けアプリ、着せ替えロープレを世に出すため、構想を練ってきた。
世の女子たちよ、イケメンを着せ替えしようではないか! ウェ〜ヘッヘッヘッ。
🏫
面談室のドアがノックされると同時に、山崎先生が緊張した面持ちで立ち上がる。そしてドアへと向かった。
「失礼しますね。」
上品な口調の女性。細いのに貫禄がある。おそらく、この学園の理事長あたりだろうか。
「初めまして、細谷さん。
ウヒョー! オーラありすぎだっちゅーの!
「初めまして。クロエの兄、細谷です。この度は突然の訪問と申し出に対応いただきありがとうございます。」
今ので大丈夫か? 挨拶ってこんな感じか? 我、バリバリ緊張しているんだけど…。
「とんでもございません。取り急ぎですが、山崎の方からお話はお聞きいたしました。不都合がなければご実家からの封書を私にも拝見させて頂く事はできますでしょうか?」
俺は断る理由もなく、その封書を棚橋理事長に読んで頂いた。
棚橋理事長が封書を読む間、山崎先生は俺に話しかけてきた。
「細谷さん、小山田
小山田 麻穂子、俺の7つか8つ年上の隣に住んでいたお姉さん。子供の頃にお世話になった人。花札やトランプを教えてくれた、優しいお姉さん。
「細谷さんにとっては、あまりよい思い出はないかもしれませんが…。」
「あれは事故ですよ。避けられようのない事故です。」
「そうかも知れませんが…。」
事故…。
麻穂子さんの妹、千穂子ちゃんが庭で遊んでいる時の出来事。
トラックで帰ってきたおじさんが駐車する際に、後方の千穂子ちゃんに気付かず、バックで庭に入っていった。
千穂子ちゃんは麻穂子さんから借りたヘッドホンを耳に当てていたため、トラックの音に気づかなかったらしい。
その光景を目の当たりにした、俺の親父が千穂子ちゃんを突き飛ばし、代わりに親父がトラックの下敷きになった…。
「もしかして千穂子ちゃんは未だ気にしているのですか?」
「それはわかりませんが、トラウマはあるようですね。」
確かに、先週の夜は妙によそよそしかった…。俺もそのトラウマの一部か? その割には後部座席で騒いでいたな…。
「実は麻穂子さんの娘さん、この学園の卒業生なんですよ。OGとして来客席にいるはずです。」
「そうなんですか!? 日本って狭いな、おい! あっ、失礼。」
「もう、そんなかしこまった話し方はおやめなさい。お二人は同級生なんですよね。こんな重大なお手紙を読んでいる時に…。」
ご立腹な様子の口調。だが棚橋理事長は笑顔で我々に話された。
俺たちはスッと立ち上がり、頭を下げる。
この人、こわっ…。
🎭
10月下旬の講堂。普通なら肌寒く感じるこの場も、たくさんの人のおかげで熱気があるようだ。
本日のメインイベント。毎年恒例の演劇部による喜劇が始まる。
今年の主役は、交換留学生の クロエ・フォーニエさん。脚本も手がけたらしい。
題目『お帰りになられては? シンデレラ』
今回はシンデレラのパロディーのようだ。
彼女
「カタコトの日本語で私が話せば、会場は大爆笑よ!」
と言っていたらしい。
関西系フランス人なのだろうか…。
「横山さん、久しぶりだね。隣に座ってもいいかな?」
「どうぞ…って、ふごぁ!?」
話しかけてきた男性は恩師の山崎先生。だが、奇妙な声を出し驚いたのは、山崎先生と一緒にいる男性の方にだ!
この人はママの恋する相手(多分だけど)の、細谷さんではないか!
なぜ、ザキヤマといるのだ?
とその時。
ブブゥー…。
まあ、これも毎年恒例のブーブークッションの刑。
今年の受刑者はザキヤマだったようだ。
「違うから! オナラじゃないから!」
ザキヤマはそう言って自分のお尻をパタパタしている。
マジでジワる…。
気を取り直したザキヤマは細谷さんに向かい、私たちの紹介をされた。
「この子たちが麻穂子さんのお嬢さんだよ。」
ザキヤマ? なんで細谷さんが本当のママのことを知っているの?
「初めまして、細谷です。失礼ながら、山崎先生からお話はお伺い致しました。お二人とも麻穂子さんの面影があり、素敵な女性になられましたね。」
この人はママを知っているんだ…。
何だか嬉しい…。
「ありがとう御座います。生前の母をご存知なのですね。」
って、そう言えば!
「あの! 先日は母を送っていただきありがとう御座います!」
「いいえ。帰り道が一緒だっただけです。気にしないで下さい。」
おい、華乃も何か喋りなさい!
私は華乃にアイコンタクトをした。
私を見ろ華乃!
細谷さんの事を凝視しすぎだっちゅーの!
「華乃。」
私はアイコンタクト虚しく、名前を呼んだ。
我に返る華乃。
そして、開口一番。
「やっば…。」
「はい?」
おいー!
細谷さんが驚いておりますよー!
細谷さんが「はい?」とか言っちゃってますよー!
「華乃! 失礼でしょ! 細谷さん、すみません!」
とりあえず、秘技ステレオごめんなさい。を披露した。
「あははは。息がピッタリですね。」
よかった、気分を害してはいないようだ。
「あの私、妹の華乃です。細谷さんも同窓会に出席されますか?」
直球ー!?
「はい。知り合いは山崎さんと小山田さんだけですが、せっかくなので出席しようと思っております。」
やったー! ママに報告だ!
私と華乃は向き合い、「うん。」となづいた。
そして、ブザーと共に喜劇『お帰りになられては? シンデレラ』の公演が始まった…。
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