16 更 夜《こうや》

降り積む吐息を凍らせて

しんしんと雪が降る



生きることに後ろ向きな罪人つみびと

安らかな眠りに見放された迷宮の小部屋で


黎明れいめいの東に背を向け

浄土じょうどの西を憧憬しょうけいしながら


凍り付いた吐息を

ひとつひとつその手で溶かす


やがて両手が凍えても

ことなく降り積むばかり



降り積む吐息を凍らせて

しんしんと夜が更ける


  (2003 H15年2月)


**************

 私の住む地域は、太平洋に面した割と温暖な所で、冬でも雪が降ることは少ないですが、この詩を書いた日は、とても寒くて雪が降りました。

 はじめは風に混じって粉雪が山の方から飛ばされてくる感じ、それから、だんだんと、シャーベット状の雪の塊が降り始め、夜になっても静かに降り続く雪は、まるで、私の凍えた溜息が心に降り積もるようだと感じたのでした。

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