14 かりそめの器

私は世界樹の一枝に生まれいでの葉


一つの季節を呼吸して

やがて落ちて朽ち果てれば

根より汲み取られる一粒の元素


死はみなもとに還ること

大いなる歓びの命とひとつになる

今はただ仮初かりそめの器



私は寄せ返す時間ときの渚に遊ぶ子供


一つの歴史を砂に築いて

やがて疲れて眠りにつけば

磯波にすくい取られる一粒の貝殻


死は始まりにかえること

遙かなる歓びの海とひとつになる

今はただ仮初めの器


   (2002 H14年 8月)

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