2 わたしがいつか死ぬときには


わたしがいつか死ぬときには

空をかけて風になろう


渡り鳥が故郷を見つめて飛び立つように

わたしは空へと羽ばたいて


冴えた青い空気となり

海を越えてゆくだろう



そして砂漠を渡る風になる


ゆかしく碧い月明かりの下

砂礫と岩と遺跡を削り


広がるSteppeいっぱいに

かそけく葉ずれの音を潜ませ


Oasisの棗椰子なつめやしの梢を鳴らし

気ままな羊たちを遊ばせて



そして地球を巡る気流かぜになる


いつか秒速11.2キロメートルに達したら

地球を越えてゆけるだろうか


希薄なIonの流れとなって

宇宙気流になれるだろうか


久遠くおんの時の中

青い静寂しじまを巡るだろうか



わたしはいつか風になる

宇宙そらを巡る風になる


  (1985 S60年 2月)


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