雨の日の夢
みかんの木
雨のち雨そして晴れ
ぽつぽつ。
磨りガラスの上を、あまつぶが伝う。
ツーッ、ポタッ
ペタペタ
窓を触ると、さわったところがきれいになった。こっちまであまつぶが染みてきているのだろうか。晴れる様子はなく、空はどんどん黒くなっていく。遠くで、ゴロゴロ、ゴロゴロと雷の音が聴こえた。
ーーーこんな調子じゃあ散歩にもいけないわ。 ママ大丈夫かしら、雷さんに食べられたりしないかしら。
ゴロゴロ、ゴロゴロ
さっきよりも音が近づいてきた気がして、思わず目を瞑ってしまった。首につけているアクセサリーがシャンっと鳴った。
怖い気持ちをがまんして、友達になろうと思って、ゴロゴロ、と喉を鳴らしてみたけれど、雷さんには届かなかったみたい。それどころかもっと怒らせちゃった。なにかしただろうか?やっぱり私と同じでお腹が空くとご機嫌ななめになるのね。そういえば雷さんは何を食べるのかなあ、ささみは食べないだろうし…ネズミも食べないわよね…
ピカッ、と空が光った。光に照らされて、あまつぶがキラキラと光る。
ーーーそうか、あまつぶを食べてるのね。
あまつぶ。見たことはあっても食べたことはない。でもきっと甘くて美味しいのね。だって、雷さん、さっきより静かになったもの。
でもまだ雨は降り止むことはなかった。
シトシト、ポツポツ
ーーーさっきより少し弱くなったかしら。安心したらなんだか眠たくなってきちゃったわ。
何時間眠っていただろうか。起きたら、空はキラキラと輝いていた。あまつぶを出して軽くなったのだろうか、黒くて重かった雲が空高くにもこもこと浮いている。
空から金色のはしごが架かっている。キラキラと光るそれは、あまつぶとよく似ていた。
ーーー仲間なのかしら。きっとあまつぶを雲の上に連れて行くのね。
「な〜にやってんの?」
ママ!!帰ってきた!!!
聞いて聞いて!あのねあのね、凄かったの!雷さんがあまつぶを食べてね、あまつぶさんが金色のはしごで空に登っていったんだよ!
「ん?そうなの〜、おやつ欲しいんだ、わかったわかった、今持ってくるね。」
おやつかあ…今日もママ、わかってくれなかったかぁ…
「はい、おやつね。そういえばさっき近所にね、ご自由にお取りくださいっていう箱がおいてあって、中におしゃれなお皿がたくさん入ってたんだ。雨に濡れてて、慌てて救ってきたの!お皿だけどね〜。まだ冷たいかもしれないけどいい?あ、濡れててごめんね、嫌だよね〜、着替えてくる。」
ーーーあまつぶ??ちょうど食べたいと思ってたわ!さすがママ!
ペロッ
ーーーあまつぶって甘くないのね。味はお水と一緒だわ。でも、なんだかとっても暖かい感じがする。
ママの髪の毛は、あまつぶで濡れていた。
振り返ったママの髪の毛から落ちたあまつぶが、私の体に当たる。
ニャッ、と思わず声が出る。
「ごめんね!!!」
冷たくて気持ちが良かったんだけど、ママは髪を乾かしに行ってしまった。
あまつぶ。とっても暖かくてとってもきれいなもの。キラキラ。
雨の日の夢 みかんの木 @mikannoki
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