第3話 ユキオとタケル


夜になってユキオは、昼のうちに遊んで溶けた身体を修復しはじめた。


幸い、庭にはまだ雪が残っている。



ユキオの身体がだんだん小さくなってゆくのを見て、

タケル君は哀しそうな顔をしていた。


「ユキオ……いなくなっちゃうの?」



大丈夫だよ。ユキオはいつも、タケル君のそばにいるよ。


朝になったら、また一緒に遊べるからね。



小さな枝で出来た手で雪を体に付着させ固めるのは、なかなかに困難な作業だった。


だが、自分でやるしかない。


ユキオを作ってくれたタケル君は、そのせいで

ひどい風邪をひいてしまい、今は外に出られないのだ。


朝までに修復を終えて、タケル君の寝ているベッドのある

窓のところまで辿り着かなければ…


そして目覚めたタケル君に、世界で一番に「おはよう」を言うのだ。



ユキオは、一生懸命 身体に雪をくっつけた。


残った雪には、泥が混じりはじめている…


あとどれくらい、修復出来るだろうか。


そんな思いを払い除けるかのように、ユキオは作業を続けた。


タケル君の笑顔を見る為に…





なんとかがんばって元どおりの体に近づけたけれど、

タケル君は朝になっても戻らなかった。


ユキオは待った。


その日も、次の日も、また次の日も、

ユキオは毎晩体を修繕しながら待った。


でも、タケル君は戻らなかった。


そして雪も、もう降らなかった。



(タケル君、らいねん、きっと また会える…よ……)




「あら、あの子ったらこんなところに」

「どうしたんだい?」

「窓の外に、ほら……これ、何かしら」



朝日の当たる窓辺には、きらきら光る小さな水たまり。

その中に、小さな枝が2本と小さな石ころがふたつ、残されていたのでした…


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る