おうち時間は終わらない
ムネミツ
おうち時間は終わらない
見知らぬ天井は、僕の写真で埋められていた。
首を動かして見れば壁にも僕の写真が貼られている、勿論窓にも。
僕は今日もパンツ一丁で、彼女のベッドに鎖で繋がれている。
トントン♪ 部屋をノックする音が聞こえる。彼女が来た!
ピ! と言う電子音、次にジ~! と唸る機械音がして最後にガチャリと鍵が開く音が鳴りドアが開く。
「お待たせしました先輩♪ さあ、お体を綺麗にしてパンツも替えましょうね♪」
可愛らしい声を上げて入って来たのはピンク髪に眼鏡を掛けた巨乳の美少女。
服は白のセーターにチェックのスカート、胸の前で洗面器とタオルを抱えている。
彼女の名はユイ、小学校から高校に至るまでずっと僕の一学年下の後輩の少女。
僕は彼女の家に監禁されている。
「先輩、私と付き合って下さい!」
バレンタインの夕方、公園でチョコレートを僕に差し出すと同時に告白してきた彼女が可愛らしくてOKの返事をした所で僕は意識を失った。
意識を取りもどした僕が見たのは、天井一面に貼られた僕の写真だった。
「……くっ! 鎖だとっ! ていうか何で僕はパンツ一丁なんだ!」
天井一面が僕の写真と言う以外はゆるふわ女子の部屋と言う具合にピンクのカーペットやクマのぬいぐるみで飾られたファンシーな部屋。
そんな部屋のベッドに、僕は大の字で手足を鎖に繋がれていたのだった。
明るい鼻歌と共に足音が聞こえドアが開く、入って来たのはガウン姿のユイだった。
「ユ、ユイ! これは一体どういう事なんだ!」
「うふふ♪ 先輩、やっと私達結ばれるんですね♪」
「いや、段階すっ飛ばし過ぎてるし犯罪だよ! 助けて!」
必死に手足をばたつかせてもがくが、手足の拘束は解けなかった。
「逃げられませんよ先輩♪ 先輩には私のお婿さんになっていただきます♪」
ガウンを脱いだユイの一糸まとわぬ姿に僕は目を奪われてしまった。
そして、僕はユイと結ばれた。
「先輩、私達ずっと一緒ですからね♪ 私が一生、先輩も生まれてくる私達の子供も養いますから♪」
結ばれた翌朝、僕を抱きながら優しく可愛らしい笑顔でユイは語り掛ける。
こうして、僕の監禁生活が始まった。
一日の始まりと終わりはユイと共に眠り、ユイと共に目覚める。
彼女に謎の紫色の液体で浸されたタオルで全身を洗われると、自分で洗うより綺麗になり生えてきた髭もなくなる。
用意される食事も、僕が知っている現代日本で手に入る物とは違う青く光を放つスープや黒い虫なのか貝なのかわからない肉を食べさせられる。
僕の世話が終わるとユイは、クローゼットから魔女の様なとんがり帽子を被り魔法使いの様なローブ姿に着替えて出かけて行く。
そして、昼食時や夕食時に夜には部屋に帰って来て僕と過ごす。
「ユイ? 君は何者でどこへ出かけているんだ!」
勇気を出して聞いてみた、何かがおかしい?
自分が現代日本にいないのではと言う気がしてきた。
「先輩♪ 私、異世界に魔法使いとして呼ばれたんです♪」
ユイは、ファンタジーな事を言い出した。
「ま、まさか! ラノベみたいに家ごと転移とかって言うんじゃ?」
僕が趣味で読んでいる、ライトノベルでよくあるパターン。
チートパワーで現代生活を異世界に持ち込む主人公がユイなのか?
「はい♪ この世界を救う報酬の前金で私の家と現代生活を持ち込む力をいただきました♪ ただ、折角彼氏になった先輩を置いて行くなんて嫌だったので先輩も家ごと連れて来ちゃいました♪」
笑顔でとんでもない事を語るユイ。
つまり、この家の外は剣と魔法の異世界?
「魔法使いの仕事は結構大変ですが、先輩との暮らしの為なら平気です♪ 組んでいるパーティーの仲間や国とも先輩との生活を優先と認めてもらっています♪」
ユイの話を聞く限り、ユイは国が自由を認める程の魔法使いで誰も逆らえないと言う事らしい。
「安心して下さいね、毎日テレポートで帰りますし私にちょっかいを出そうとする男なんていませんから♪」
私は先輩の物、先輩は私の物とつぶやくと同時に僕は眠りについた。
僕のおうち時間は、ずっと終わらない。
おうち時間は終わらない ムネミツ @yukinosita
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