第24話  [moonglow]



第24話   [moonglow]




秋深し。



きょうも、いつものように一日がすぎて...


milleたちの住む、研究所の居住棟の白い建物も、夕暮れが朱に染める。



さっきまで秋晴れの青空だったけど、いまはあかね色した夕焼け空が美しく。

すじ雲をオレンジに染めて、きょうも夕陽がゆっくりと...沈む。



「...きれい...ですぅ..。」(^^)



milleは、リヴィングの外のベランダから、その空を見上げて。


静かにふけゆく秋の空を、胸いっぱいに。



...こんな、そら、は...



どこかでいつか見たような、でも、見たことないようような。



不思議な感覚で、夕焼けのグラディションを眺めていた...が。




こと.....





微かな物音を感じ、振り向く。

大きな瞳にはまだ、夕暮れの残像がいっぱいで。

みんな、オレンジ色に染まっているように見えて。



....あ..れ....




milleは目をこすって。


いま、自分がなんで振り向いたのか、ちょっとわからなくなってしまった(^^)





こと.....




また、物音が。




...!?...




部屋には誰もいないはず...




ドアはオートロックなので、誰かがいる、はずはない...が。



季節はずれの幽霊か、超常現象か。

どちらにしても、milleのシナリオには出てきそうにない話。(笑)







...琴音ちゃん.. か..芹香さん...が....





ここに、いたらいいのに。

milleは、そう思った。



....でも.....




いまはひとり。

長瀬は、まだ研究室にいるはず。



.........ここから、おおきなこえだして..



と、思った。





が、声がなぜか出てこない。




milleは、だんだん心細くなってきた。




さっきまでに夕焼け空も、もうつるべ落しに暮れて、いまは藍の宵。




振り返り、空を眺めたその時。







台所の人の気配が、動き始めた。







...........!!






ぱた、ぱた、ぱた .....





近づいて...くる.....!?....




milleは、振り向くのが怖くなって、じっと月を見たまま、固まっていた。






ぱた、ぱた、ぱた .....ぱた。




ベランダのすぐそばに。





ぱた。




足音が停まった。




.......お月さま..わたしを守って..




milleは、昨日、芹香が言っていた言葉を思い出した。




「........。」





......お月さま...は、幸運...の.....?






「.......。」 こくり。






.....こころに..ねがう...と....?





「.......。」 こくり。






milleは、こころに願う。








.......お月さま..わたしを守って..!







「mille。」




静寂を破る、低い声!







「きゃーーーーーーー!!。」








milleは、耳を押さえてしゃがみこんで。

そのまま、ベランダにへたりこんでしまう。





背後の幽霊(??)はびっくり。(笑)

目を見開いて。


ちょっと、たじろいだ。







「mille、大丈夫か。わたしだ。」




後ろ向きにへたりこんでいるmilleに、聞き覚えのある低い声。


その主は.....





長瀬だ。




「... お... とう... さん.....?....。」



振り向いたmilleの頬には涙がつたい。

それでも、笑顔はまだどこか、ぎこちなく。


ようやく、安堵が訪れたことに気付く。





「いらしたん..ですか...?」



milleは、涙を拭いながら。




「さっき、戻って来たんだよ。...いや、済まん。

部屋にいないのかと、思ったんだ。」



と、長瀬は愛娘を引き寄せ、静かに撫でた。




「 ....よかった...。」



と、 milleは長瀬を見上げ、にっこり笑った。






長瀬もにっこり。



「そうだ、mille。おだんごを作っていたんだよ。手伝ってくれるかな。」






「... おだんご ....ですか...?。」





「うむ。月見にはだんご、を供えるのが昔からの風習でな 。」




「そう.. なんですか....。」





mille は気付く。

さっき、台所の気配は..すると...。




「あの ...キッチンにいらしたんですか...。」



まだ、動揺が収まらない声で。





「ああ、だんごを作っていた、んだ。」と長瀬。





..............(^^)。




mille はナットク。

幽霊はいなかった、んだ。





「よかったですぅ。」(^^)








それから ...



ふたりでお団子を作って。


月のきれいな窓際に、お供えを。



あ、そうそう、すすきの花も。


(これは、長瀬が。)





そらに、ぽっかり、お月さま。


まるく、やさしい、お月さま...






mille、にっこり。



空を仰いで........












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