第21話 innocent man

第21話     [an Innocent mam ]








梅雨の晴れ間の 青空と

おひさま、うつる、みづたまり。

まるい瞳と、碧の髪と

あかるい、笑顔、うつってる....





mille@system:date

Jun 17 20xx...



日曜日。

今日のmilleは、街へお出かけ....

...と、その前に「彼」と待ちあわせ。




坂を下って、住宅街の。

いつもと同じ、公園通り。

舗道ひとりで、とことこと。

夏服、さらり。風さわやかな。

六月のそら、遠く、綿雲...




「あ、ひろゆきさーん!(^^)」




公園の、入り口。

アルミニウムの、車止め。

そこに腰掛け、かかと踏んでる。

人待ち顔の、彼は呼ばれて、

微笑み顔で、手を軽く振る...




「よぉ、mille、早いなぁ。」

浩之は、彼らしく率直な言葉、でも口調は優しい....


「はいっ!(^^)きょうは、わたしのおねがいを、

きいていただくのですから...。」

と、にっこり。




もう、夏を思わせる風が、碧の髪をそよがせる。

白い夏服の裾を、さわやかに揺らし、空の彼方へ駆けて行く...


つばめの雛が三羽。同じ軌跡を描いて飛び去っていった。






「それで、今日は買い物だったよな?。」

浩之は、舗道を歩きながら。横を歩く彼女を見。


「はい。あの、ちょっと、みたてていただきたいものが...。」

と、milleは、彼の方を見。



「見立て?俺、センス悪ぃぞ?志保に聞かなかったか?。」

と、浩之は意外なmilleの言葉に。



「いいえ^^;、でも、きょうは、ひろゆきさんに...。」


と、話しながら、milleはデパートメント・ストアのエントランスへ。




磨き込まれた大理石の床。

白亜の円柱は、細かい装飾が施され、中世ふう。

金属の飾り電灯には一点の曇りもなく...




「.......なんか、すごいな.....。」

「きれいですね.....。」


ふたりは、その重厚さに圧倒されていたが....。




浩之は、ひとこと。

「なんか高そうな店だな...大丈夫か?^^;。」と。


milleは、にっこりと。

「あ...それは....^^;..だいじょうぶだとおもいます。」


何か、確信のあるような口ぶりに浩之は...

「....?、まあ、いいか。何買うんだ、ところで。」




「はい、あの...きょうは..。」




と、歩きながらエントランスを。



制服がしっかりと決まっている店員が、静かに礼。




浩之は、思わず頭を下げてしまう。

「あ、ども^^;。」


.....なんか、落ち着かないな....。





「なあ、mille、どうしてここの店にしたんだ?。」



milleは、歩きながら浩之の方を見上げて、

「はい、それは....。」

エスカレーターを昇り、上階へ。


.......?


いつものmilleだったら、こんな...



浩之は思う。

普段から、こんな風に先に立って行く奴だったかな....?


上の階は、アパレル・フロア。

"Men's" と、表示がOrganic-LCDのカラーパネルで。

きらびやかなロゴも、virtual-reality。





「なあ、milleさぁ...。」

...なんで、紳士もの...あ...?


「はい、なんですか、ひろゆきさん?。」

先を歩いていたmilleは、振り返る...と。


「あ!こんにちは!。」(^^)



と、浩之の背後へと、挨拶。




浩之は、ちょっとびっくりして振りかえる....と。




真新しい制服の、デパート・ガール。

きりり、とりりしい脚線美。

タイトスカートの曲線美。

.........(^^)....(これこれ。)





「どこ見てるの?。」制服は、聞き覚えのある声で。







.....あ、顔見るの忘れてた....(おいおい。^^;)







浩之は、あわてて声の主を見る。



「........!。」


「おどろいた、藤田君?。ふふ。」(^^)







浩之の後ろで微笑んでいたmilleは...

「おしごと、いかがですか、理緒さん。」(^^)


浩之は、改めて理緒のデパート・ガール姿を見る....。




「やだぁ、...あんまり見ないで....恥ずかしい.....。」^^;




と、ちょっとほほ、染めて。

そんなところは.....


....初めて会った時、みたいだな.....。と

浩之は、思い出していた。




学校の屋上。

午後のそよ風。

青空がさわやかな。


.....ちょうど、いまごろだったかな....

同級生なのに、敬語で俺と話して。

はねた前髪が可愛かった、二年生のあの頃.....






「藤田君?。」





浩之は、その声で自分が回想にひたっていたことに気付き、

「ああ、ワリイ、....へえ、理緒ちゃん、いいとこ就職したな〜。」





「えへへ....夏休みにここの店でバイトした時に、

『卒業したら、来ないか?』って。それで..ほら、わたし、

頭ワルイでしょ、^^;だから、勉強しなくていい、って嬉しかったし。」




「へぇ〜...いいなあ、理緒ちゃん、よく働くもんな。

地道にやってると、いいことあんな、ほんと。」

と、浩之は。



「でもびっくりだよ、『理緒ちゃん』ってより『雛山さん』って感じだよな。

それにしても偶然..

             ....あ!」



...どうして、milleが先あるいてったのか。

....こんな高そうな店に、自信もって入ったか。



「mille...もしかして...きょうのことって...。」



「はい....


、りおさんが『びっくりさせちゃお!』って。

それで、ちょっとひろゆきさんには..

すみません。」

と、milleは本当にきまりわるそう。



その様子に、浩之は、

「いやぁ、おどろいたな、本当。まさか...な。

面白かったよ。」

と、彼女たちの気持ちを思い。



「そう、!じゃ、大成功ね、milleちゃん。ありがと。」

と、理緒は、にっこりと、少女の表情にもどる。」



「はい!。」(^^)



と、milleはまた、愛らしく微笑む....。





「milleさ、『見たててほしい』ってのはさ....。」

と、浩之はふと思い出し..



「あ、わすれてました。あのぉ....。」と、mille。



「じゃあ、『紳士ものはあちらのコーナーでごさいます』。(^^)

お客様。」

と、理緒は営業の顔で、わざと。おどけて。



「はは、理緒ちゃん板についてるよ。ベテランみたいだな。」

と浩之は喜ぶ。



「えへへ^^;」

と、理緒も営業スマイルを崩し、笑顔になる。


「うふふ。」

と、milleもにこにこと...。




「よーし、じゃあ、見てやるか。」

と浩之は、紳士小物のコーナーへ...



後についていこう、とするmille。


理緒は、ひとこと。ちいさな声で。

「よかったわね....milleちゃん(^^)。」


振り返り、milleは、静かに。理緒をまっ直ぐに見....

「はい....ありがとうございます..りおさん....(^^)。」


と、あたたかな思いやりに包まれながら。







「おーい、なにやってんだ?ふたりで。」

と、その時、浩之の呼ぶ声が。




「あ....はーい。」

「あ、ごめんなさい.....。」


ふたり、瞳でほほえみあい、浩之の後へ。





「そうだな...選ぶっても、相手の好みがわからないとな..。

mille、誰に贈るんだ?。」

と、浩之は、小物を見て歩きながら。


「あ、あの....おとうさんに....。」

と、milleはすこしうつむいて。


「....それだと、普段使うものの方がいいか。

あんまりお洒落、って感じでもないから、

装飾品とかはあまり好きじゃないだろ....。」


と、浩之は、長瀬の無骨な、研究者らしい顔を思い浮べて。


「そうね....milleちゃん、じゃあ、実用品で、ちょっと気の効いたもの、

とかがいいかもね....。」

と、理緒は、デパートガールらしく。



「お、理緒ちゃーん、さすが。新入社員なのに、すごい。」

と、浩之はちょっと冷やかす....。



「えへ、^^;もう、藤田くんったら。あたし、こういうの好きなの。

お客さんが喜んでくれると、なんだか嬉しくて.....。」と、

理緒は、ちょっと、照れ笑い.....。



「んでもさ、理緒ちゃんらしいよな。そういうの。

いいよな、なんかさ。」

と、浩之はさらに。


「そ......もう、やめてよ、からかうのワ。!^^;。」

理緒は頬を真っ赤にして、うつむく。


「あ、ごめんよ。でもさ、理緒ちゃんにはいい仕事だよな。ここ。」

と、浩之は真面目に。


「わたし、お仕事好きなんだ、ここの。」

と、理緒は、素朴にそう答え....


「あ、そうだった、お仕事、お仕事。

プレゼントだったわね^^;....。」

と、ちょいとあわて気味.....。


「あ、あっちのなんかどうかしら....。」と...

いきなり歩きだし.....


Dumb!☆



磨き込まれた床に、ペタン、と転んだ.....


「あ!」

「りおさん!」




「理緒ちゃん...大丈夫か....。」

と、言いながら、浩之の目は笑って。


milleは

「おけが、ありませんでしたか?」と。

心配そうに。






「いたたたた....やっぱりダメネ、まだ。ふふふ....^^;。」

と、理緒は立ちあがりながら。


「ははは。」

「ふふふ...。」


と、静かなデパートの一角は、和やかな雰囲気に包まれて。




「そうね、こっちのペイズリーのなんか、いい感じじゃないかしら。

これ、歴史のある柄だから、学者さんのお父さんなら

喜ばれるかもしれないわね.....。」と、理緒は。



「ほんとすごいな、理緒ちゃんって。

頭悪くなんかないよ、全然。

俺、そんなことしらなかったよ。」

と、浩之はちょっとびっくり。



「あは、これは『お仕事』だもの。」

と、理緒。



「よくごぞんじですね....ほんとうに。」

と、milleも。



「やだぁもう、今日はどうしちゃったの、ふたりして。

また転んじゃうわ、そんなに持ち上げると! ^^ 。」

と、ちょっと(汗;) の理緒。



「じゃあ、それ がいいかな。 mille はどう思う?」

と、浩之。


「はい。わたしは。 (^^)。」

と、mille。




「じゃあ、それに ....と、これ、かなり高くないか?舶来だしな。」

と、浩之は、プライス・タグを見 .....(冷汗;)

....いや、自分で払うワケではないけど、貧乏ネタにはうるさい浩之(笑)




「あ、それは、まかせて!」

と、理緒。



小さな声で「社員割引があるの......。」と。(^^)。



「あ、ありがと理緒ちゃん。本当に。」

と、浩之。

貧乏ネタにはうるさい(クドイかな ^^;)



「ごめいわくで、ないですか? .....。」

と、mille。




「大丈夫、マイフレンド。」

と、理緒。



浩之は。

「なんか、古ーいギャグみたいだな、それ。(なんでオマエは知っている?)。

理緒ちゃんって、ホントはお姉さんなんじゃあ ....

最近、「お姉さまぁ〜。」って中学生に慕われてるっていうし( ?????) 。」




「なによぉ、それぇ〜。おまけしてあげないから。」

と、理緒は、口調が砕けて ......笑顔。




「うふふ(^^)。」

と、milleは、その様子を見て微笑む。



「ひろゆきさんと、りおさんって....わたしが転校してくる前から

ずっと、おともだちだったんですか? 。」


と、ぽつりと。



理緒は、笑顔で。

「そうよ〜。いつだったかしら、忘れちゃったけど。

  いいお友達だったの。」


と、理緒は、milleを気遣う。



浩之は、その言葉を聞き.....

「そうだよ。なんか友達っていうか、俺にとっては妹みたいな感じだったな。

それが、最近じゃ『お姉さま〜』。だもんな。」

と、合わせる。





「藤田くん、なにそれ?^^;。」





「あ、いや....こっちの話 ^^;;;;;;;。」





「ありがとう、理緒ちゃん。」

「ありがとうございました、りおさん。」


と、浩之と mutliは、二人並んで。


デパートのエントランスで。


milleの手には、リボンのついた小さな包みが。しっかりと。



「ううん、ありがとうございました。当店をごひいきに。」

と理緒は、笑顔で。



「お、もうすっかりプロだな。仕事、がんばれよ。じゃな。」


と、浩之は、 milleを促し、帰路につく。



milleは、ペイブメントに出、理緒の方を振り返り、ぺこり。

瞳が微笑んで。






「 ...............。」


理緒は、二人の背中を見送り、ちょっとため息。




「さ、お仕事しなくっちゃ!。」



と、従業員通路の方へと、しなやかなステップで消えた......。




夕暮れが、そろそろ夕闇に近づく頃。

研究所の前へと、 On-Demand EVが停車。



「きょうは、ありがとうございました。」

と、milleは車を降り、 運転席(といってもほとんど自動操縦だか)の浩之へと感謝のキモチ。



「ああ、俺、楽しかったよ、理緒ちゃんが元気で、嬉しかったしさ。」

と、浩之はにこにこと。いつになく穏やかな表情。



「はい。おせわになりました。」ぺこり。

碧の髪がさらりとゆれる。



「じゃあ、今度、また休みにな。」

と、浩之。



「はい、ありがとうございます....運転、気をつけてくださいね 。」

と、mille。



「ああ、じゃあな。」

と、浩之は、EVのパーキング・ブレーキをリリースする。

VVVFインヴァーターの音楽的なノイズが高まり、EVは静かに走り去っていった。


浩之は、窓から片手を出して、さよならを振った。



その、行方を見送り、坂を下ってゆくモーターのノイズが聞こえなくなると、

milleはすこし安心したのか、微笑みを浮かべた。



研究所のエントランスへと、小走りに駆けてゆく....。

中庭の照明が、ひとつ、ふたつ。

オレンジ色に光り始め、やがてブルーに変化すると、次第にいつものような

白銀の光を放ち始めた........




ちいさな足音が、小走りに長瀬の研究室に近づく。




「ただいまぁ。」



と、ドアを開け、駆け込んできたのは、彼の『愛娘』。



「おお、mille、おかえり。」


と、長瀬は、白衣のまま。


回転椅子で振り返り、娘に微笑みかける。





「あの...ね、おとうさん.....。」


milleは、後ろ手に先ほどの包みを持って、長瀬に歩み寄る。




「ん、なんだね(^^)mille。」



と、長瀬。







「はいっ。プレゼント。」



と、両手で包みをさしだす。笑顔、。

やわらかく微笑みながら。




「おお、ありがとう。綺麗だな、これは.....開けてもいいかな?。」




milleは、こくこく、とうなづく。



上品なリボンを解き、ラップを開く。




ペイズリー柄のネクタイ。




「ほぉぉ、これは高級なものを....有難う、mille。」




mille、にっこり。




「わたし、締めてあげる。」



「そうか....はは、ありがとう。」


と、長瀬は、「娘」とのふれあいが嬉しくて。笑みに。




「えと、....んと....こうだったかしら....あれ、このあいだ、あかりさんにおそわったときは....。」



数分.....(^^;)





「はい、できました....ちょっと、まがっちゃったかしら.......。」


と、汗;; 笑顔のmille。






「いや、いい感触だ、ありがとう、mille。本当に。....



.......?今日は、私の誕生日だったかな?......。」




と、長瀬はカレンダーを見ようと.....





「おとうさん!きょうは『父の日』よ!。.....ありがとう、おとうさん.....! (^^)。」





その言葉に、長瀬はちょっと感慨。

電灯のあかりが滲んで見えて...........。




俯いたところに、ネクタイの柄が目に入る。


楕円の物体が、不定形で多数。

不思議に、東洋的なイメージが西洋的に洗練されたそれは........




「不思議な柄だな、これは。ゾウリムシの顕微鏡写真のようだ。」



と。ちょっと、照れ隠し。




「ふふふ。おもしろい...おとうさんらしい(^^)。それ、ペイズリー、っていうのよ。」




「そうか?.....ははは(^^)。」


「うふふ(^^)。」




無機的な研究室が、ひととき、優しいムードに包まれる.......







きょう........



六月、第三日曜日...............




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