第18話 [We all remember yesterday]
第18話 [We all remember yesterday]
mille@system:date
mille@system:mar,8th 20xx
そんな風に、なにげなく過ぎて行く日々。
前を見て、歩いているうちには気づかない、speed...
でも、振り返ったとき?...
もう、少し陽さしも暖かくなってくる桜三月。
散歩道ではなく、学校の前の坂道を、milleは登校している。
いつものように、いつもの制服で。
今日も(?) 急いで。(^^)。
..とっ、とっ、とっ..
.. 急がないと..また!ちこくだわ!。
始業ちょっと前なので、生徒はほとんどいない。
校門をくぐって、玄関へ。
いちもくさんっ!
とっ、とっ、とっ、とっ、....
はっ、はっ、はっ、はっ、....
まだ、つぼみの桜並木は、それでもほのかに、さくらいろ...
春のいぶきを感じさせて。
milleは、ふと、立ち止まる。
...もう、いちねん、たっちゃったんだ....
思い出す。
去年、ここで。
芹香さんに、お花をつけてさしあげようとして。
ちょっと、痛かったこと。
芹香さんが、優しくしてくれて...
...あの、とき...
いつか、ひろゆきさんに、わたしが花をつけてあげる、時が..
くるのかな。って..思ってたけど。
もう、すぐなのね....
早あしで過ぎて行く、時の流れ。
ふと、振り返ると、一瞬のようで。
少女は、..想い出でいっぱいに。
しかし、時はまた、進むのだ!
♪〜キーンコーン.. カーンコーン〜♪^^;
「あ!いっけない!^^;;;。」
ぱたぱたと、上履きにはきかえて、走って行く。
駆け抜ける気圏に、どこか春の薫。
・
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そんな頃、浩之は。
もう登校しなくても良いのだが、なんとなく学校に来て、教室にいた。
「なあ、雅史さ..。」
雅史も、サッカー部を引退して、手持ち不沙汰なのか、
それでもやっぱり、どうしてか、教室に来ている。
「なに?」
よく通る、爽やかな声で答えた。
正面を向いて話す。
「俺達もさ、高校生じゃなくなっちゃうなんてさ..。」
「うん、そうだね。早いもんだね。
つい、昨日みたいな気がするね。入学式。」
「いろいろ、あったな...。」
「そうそう、中庭でさ、水鉄砲でサヴァイヴァル・ゲームしたりさ..。」
「あん時はおかしかったな。まったく。学校にあんなもの持って来てさ...
志保の奴さ..。」
「じゃ〜ん!」
背後から、タイミング良く現れる志保。
「お、でやがったな。」
からかい口調も、いつになく寂しそうな。
それに気づき、志保は......
「な〜に、しんみりしちゃってさ〜ぁ。まだ早いわよ。まだ!。
終ってないのよ。まだ!」
「...そう、だよな。まだ、終ってない!んだよな!」
浩之は、こころの中のもやもやをふっ切るように。
志保を見る。
彼女は、その瞳の色合いを微妙に察し....
「そ。じゃさ、ゲーセンでも行こう、帰り。
こないだの続き。(^_^)」
「おまえ、そればっかだな....。(^^)。」
と軽口を叩きながらも、浩之は彼女の思いやりに
こころ、暖まる思い、で..
....そう..."まだ"....終ってない....
無言でつぶやく。
そして...
... 卒業... か。
...この学校にくるのも、もうすこし..
milleと学校で会うのも。
と、いつになく、回想...
「ちょっと、ひろ、!な〜に、またぁ。
聞いてた、あたしの話し!。(^^)。」
.....と、志保は。元気つけようと。
彼女の瞳にも、どこか寂しげな彩..
それに気づき、浩之。
「おお、わーりぃわり。んじゃ、また、メシでもかけッか(^^)!はっはは。」
と、ややオーバーにはしゃいで見せた....。
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さて、自由登校の楽しい授業(?)は飛ぶように過ぎ....
(作者実感。授業がないと、なんであんなに楽しいのかな..)
あっという間に、放課後がやって来る。
「.....。」
浩之は、いつものようなルーズな歩調で廊下に出。
2年教室の方へ。
廊下を、上履きをひきずりながら歩き、階段を下る...
すた、すた、すた....
階段の踊り場で、ふと、足を止める....
...ああ、ちょうど今ごろだったかな...
雪の日。
曇ったガラスに、何か指で書いていた、mille。
「.. なにやってんだ?。」って聞いたら..
「な、なんでもないですッ!..^^;;;。」 って。
後ろ手で、慌てて...
ガラス、拭ってたっけな..(^^)
なんだか、今日はノスタルジックな浩之である。
どこか、思うところがあったのか....
ひとり、想い出に微笑みながら、階段を降りようと...
「先輩!。」
はっきりとした口調に、ふと、顔を上げると..
ショートカットの女の子、2年生だろうか。
体操服に、ジャージを重ね着して。
まっすぐに、浩之を見ている..大きな瞳。微笑んで。
..この子は...
「ああ、葵ちゃん、元気..だな。」
葵と呼ばれた少女は、顔いっぱいに微笑みを浮かべ。
「はい!先輩、卒業おめでとうございます。」
「(^^)..ありがとう。葵ちゃん、クラブの方、どうだ?。」
浩之は、「卒業」という言葉の響きに、少し辛い物を感じながら。
しかし、葵の気持ちを思い、ようやく「ありがとう」という言葉を発し、
そして、話題を変えようとした。
「先輩、..どうかなさったんですか?...。」
葵は、浩之の表情を見。
彼女らしい鋭い勘で。そう答えた。
浩之は、どっきり。!
「! ^^;.. あ、いや、なんでもねぇよ、ちょっと、腹へったな〜ってさ。
また、いつかみたいに、飯、いっしょに食おうな、葵ちゃん。
じゃ、練習がんばれよ!。」
早口で、言葉をつなぎ。
浩之は、階段を足早に下る...
気流が、葵の頬を撫で。
彼女は、大きな瞳に、不思議そうな表情を映し...て。
「? 先輩.....。」
浩之の背中を、ぼんやりと追った。
・
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・
階段をくだりきると、2年教室の階。
放課後、ざわざわと賑やかなようす。
走ってどこかへ逃げる男の子
「こらぁー、まてぇ〜!。」
と、追いかける、勇ましい^^)女の子。
少し前までの、自分達を見ているようで。
どことなく、懐かしいようで。
.. それを、「懐かしい」と感じてしまうことに。
浩之は、時間の経過を意識しながら...
「彼女」の姿を探した。
いつもなら...
ちいさなからだで、懸命に「朝日印」のモップを動かしている..はず。
だが。
今日は、廊下に「彼女」の姿は見えない。
浩之は、なんとなく、こころ淋しくなる。
いつも、そこにいるはずの「彼女」の姿が、虚像として
彼の脳裏にflushした..。
踵を返す。
...と。
木製のダスト・ボックスを抱えた、milleが、廊下の角から見えた...
重そうに、ゆっくりと。
一歩一歩。歩いて来る。
箱が大きいので、底を持っていると前が良く見えない(^^)。
浩之は、なんとなく安堵し、すぐにいつもの表情に戻る。
声をかけずに近付くと、「ひょい」とダスト・ボックスを持ち上げた。
mille は、手を前にさし延べて、箱を抱えた姿勢のまま。
急に荷重が減り、びっくりして顔を上げた。
「!... あ、れ..ひろゆきさん?...(^^)。」
瞳を見開き、浩之の微笑みに気づくと、まるい顔をほころばす...
「あ、すみません、持っていただいたりして..。」
「おっす、mille。頑張ってるな、そうじ。感心感心。」
浩之は、自分では意識せずとも、「いつも」に戻っている。
なんとなく「とりもどした」ような感覚の中で。
「はい!わたし、お掃除だけは自信あるんです。もともとは、
メイドロ.......。」
「めいどろ?。」
「あ^^;;, いえ、お掃除だけは。はい。!。」
mille は、ちっと慌てて。
...「ほんとうの」自分の事は、まだ話してないから。
....でも、「話せる」時がくるの?それとも..?
すこし彼女は、胸騒ぎ。
このまま、浩之との間隙は、埋まらないのではないか。と。
ちょっと、不安になる.....
しかし、「彼」の笑顔が、そんな不安を和らげる...
「ああ、そうだよな、いつかも、俺ん家の風呂場とか、ぴかぴかにしてくれてさ。
ほんと、すごいよなmille...俺、掃除、駄目だから^^;。」
その、「彼」の言葉に、mille は。
「ありがとうございます!。わたし、おやくにたてて、うれしいですッ!。」
にっこりと、顔じゅうで笑う。
さくらいろの頬、上気して。
そんな、mille を見ていると、浩之は自然に笑顔になって。
その、愛らしさに、思わず彼女の髪を、撫でようとした..が。
ここが学校の中で、彼女がクラスメートの中に居る、という事に気づき。
思いとどまる。
もどかしい。
ここが、俺達だけの世界だったら.. と。ふと、不思議な想像を浩之はした。
「mille、今日はもう終りだろ?一緒に帰らないか?ひさしぶりに。」
何故か、普段より優しい口調になっている。
「はい!もうすこしで終りですから、待っていていただけますか?。」
「ああ、ほんじゃ、校門のとこで待ってるよ。」と、浩之は微笑みながら返す。
ダスト・ボックスを、教室の入り口でmilleに返して。
「気をつけろよ?指、挟むなよ....。」
「はい!。おきづかい、ありがとうございます...。!あ、あわわ〜!!!^^;;」
milleは、重いダスト・ボックスを持ったまま、おじぎをしようとしたので...
バランスを崩す。。
とっさに、浩之はmilleを受け止めて。
「だいじょうぶか? ^^;ひとりで。」
と。
「はい^^;重ね重ね、申し訳ありません、ほんとうに。 もう.....、だいじょうぶです。。」
mille は、やっとのことで、そう言うと、よたよたと、教室に入って行った。
...だいじょうぶかな〜?
と、浩之は、一生懸命に力をこめている背中を見送りながら、そう思いつつ、
いとおしさに、目を細めた..。
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・
階段を下り、一階の廊下を歩いて行く。
一階には、事務室や、受け付けがあったりもする。
もう、卒業式の準備に、忙しそうにしている事務員さんや、用務員さん。
そんな、慌ただしさ。
どこか、大晦日みたいに、浩之は感じながら、玄関でスニーカーに履き替え、
校庭へ。
「なーにしてたのよぉ、ヒロ!。」
目の前に、志保が。
ちょっと、いつものからかい口調で。
目は笑っている。
「...なんだっけ...?約束してたっけか...?」浩之。
「も〜、なーにいってんのよ。ゲーセン行こうっていったじゃな〜い。」
と、志保は。
「おー、わりいわりい。^^; ちょっと、用事出来ちまった。
またにしようぜ、ごめんな。」
と、浩之は、いつもより丁重に謝る。
....ごめ..んな..?
志保は、その浩之の口調に、微妙なニュアンスを感じて。
「ま、いっか。じゃ、先に練習して、腕上げとこ〜。じゃ、お・さ・き。」
と。
.... ワリィ^^;
浩之は、志保の思いやりを無にしてしまい、その上、気遣いをさせてしまったことに
こころの中で謝り、
... ありがと、志保。
.. いい奴だな、おまえ...。
と。言葉にすることはない、思いを告げた。
「ひろゆきさーん!^^;。」
冬服をひるがえしながら、milleが駆けてくる。
「すみませんッ! あの、おまたせしちゃいまして..^^;;。。」
息(?) はずませて。
「..早かったな、mille、俺、今降りてきたところだよ..
そんなに急がなくてもいいのに..(^^)。」
と、浩之は、めいっぱい、という感じで駆けてきた彼女を
とても愛おしく思いながら。
「じゃ、行くか。」
「はい!。」
ふたりは、校庭を歩いて。
もう、クラブ活動の運動部員もいないので、静かなグラウンドに
スニーカーの靴音だけが。
さく、さく。
ざく、ざく。
さく、さく。
ざく、ざく....
夕方でも、もう寒い、という感じはしない。
桜並木も.. つぼみのままに。
校門を、くぐる。
今日は、なぜか、ふたり静かに。
坂道を下ってゆく...。
丘の上の、この場所からだと。
街の音が、まるで音楽のように聞こえてくる..
その、ひとつひとつに、ひとりひとりの「生」がある。
生きている、Energy...。
「なあ、mille....。」
浩之は、ようやく何かを語りはじめた。
「はい?。」
mullti は、歩きながら横を向いて、浩之の顔を見る。
「俺さ、この一年、楽しかったよ、なんだか。
卒業したくないな、って思ってるくらいさ。」
いつになく真顔で、前を見たまま、浩之はつぶやく。
「わたし、も.. とても、しあわせです...。」
mille、うつむきながら、前を見て、そう話す。
すこし照れているのか、頬が赤い..。
碧の髪が俯きかげんの頬にふれ、さらり、と歩みにあわせて流れた。
「でも、さ、明後日、卒業式が終ったら、もう、ここには来られない。
もう、高校生じゃなくなっちまうから、さ...。」
浩之は、静かに。寂しい気持ちを抑えながら。
「...........。」
milleは、うつむいたまま。
前を見て、歩いている。
伏せ目がちの、瞳から。
しずかに、涙。
流れて。
まるい頬、つたって落ちる....。
その涙の意味を思い、浩之は語る。
今、言っていいのかな?とためらいながら。
「俺、お前が好きだぜ。ずっと前からも、これからも。
いつも、お前といっしょにいたい..いつまでも......。」
立ち止まった、浩之はmille を見つめ、そう告白する。
常緑樹の並木の下。
梢が風に揺れ、さわさわ.. と音をたてた。
mille は、浩之の方に向き直り、顔を上げる。
大きな瞳はもう、涙でいっぱいだ。
いつものように、顔じゅう笑顔にして笑った....。
しかし、その瞳にはどこかしらかげりの彩..
「.........。」
無言のまま、浩之の胸に。
浩之は、そのちいさな存在の温みを全身で感じ、ようやく訪れた安堵、を憶えた...
夕暮れ近し..
すこし、つめたい春の風が、制服の裾に絡んだ...。
・
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mille@system:date
mille@system:mar 10th 20xx
そして...
今日は、卒業の日。
「第25回 卒業式会場」
去年と同じような、校門の看板。
受け付けの、テーブルに花の記章。
祝 卒業... と。
去年は、あかりを手伝って。
芹香の胸に、花をつけようとして。
ピンを指に刺して。
痛い思いをしたり。
そんなことを思いだしながら。
mille は、「彼」の登校を待っていた....。
と....
いつもと同じように、ポケットに手をつっこんで。
だらしなく歩いてくる... 人影。
「あ、ひろゆきさん、おはようございます!。」
milleは、元気よく。
ちょこちょこと走って、浩之のそばに。
「あ、おはよう、mille、」
浩之は、優しく微笑む。
見上げるように、彼女は笑った。
まるい顔が、ひまわりのように...。
「ちょっと... しつれいします... ^^;;;。」
背伸びをして、浩之の胸に花、をつけようと。
「ん.. syo........。」
浩之は、膝をかがめた。
安全ピンの先端は、無事。納まった。
「できた...(^^)。」
mille、微笑む。
そのまま、見上げたままで。
「そつぎょう、おめでとうございます!。」
にっこり。
浩之も、にんまりと笑いながら。
「ありがとう...(^^)。」
と、答えた。
やわらかなひざし、あたたかく。
春。うららか......。
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