第17話 les filles
第17話 [ Les Filles ]
冬のお陽さま、柔らかく。
ひざしはほのか、暖かく。
いつか、気づけばあおぞらが。
やさしい温みで、つつんでくれて...。
春、遠からじ.........。
「さ、いこ?。」
「はい・?。」
あかり、milleの手を引くように。
外へ。
....どこへ?...いくんだろ?....。
あかりの母は、玄関で。
ごはんをたべている「まる」に目を細めていた。
あがりかまちに座り、にこにこと。
どこか、雰囲気があかりのようで、でもそうでもなくて。
ちょっと、不思議だ。親子というものは....。
廊下を歩いてきたふたりに気付き、ふりむき、仰ぐ。
「あら、...^^ かわいいのね..よくお似合いよ。
あかり、よくできたわねぇ。」
「あん!。」
「まる」も、ご主人に気付いて。
短いしっぽを振っている。
「へへへ^^; だって、おばあちゃんにしこまれたもーん!。」
あかりもほめられて、まんざらでもない。
milleは....「かわいい」っていわれて...
頬染めて、うつむく。
「あ...りがとうございます...。^^」
か細く、そうひとことだけ、やっと。
あかりの母は、いとおしげにmilleの髪をととのえながら...
「milleちゃんって、『はこいり』なのね。(^~)。」
「え..あ...^^;。」
まえにも、「はこいり」っていわれたこと、あったっけ...いつだったかしら....
「親御さん、とても大事にされてるのね、あなたのこと。」
と、何も知らないあかりの母は、そう、ひとこと。
「...........。」
なにげない、そんなひとこと。
ちょっと、さびしくなって。
milleの表情が、ちょっと曇る...
それを感じとり、あかりの母は。
「....あ、ごめんなさいね、わたし、そそっかしいから^^;。」
と、あかりにそっくりな表情で微笑う。
こんな感じだと、本当に姉妹のようだ。
「さ、いこ!milleちゃん!。」
と、あかり、ムードを変えようと、milleの手をひき、(こんどこそ)外へ。
....そういえば、ミレちゃんのお母さんって?
会ったこと、なかったな...?
ふと、思った。が、そこは親ゆずり(?)の性格が幸い(???)し、
すぐさま快活なあかり、であった。
「...あかり..さん?^^;。」
milleは、わけわからず、てをひかれたまま。
牛に曳かれて善光寺参り(なんだよそれ)
ではないが。
あかりにひかれて見覚えのあるドアの前。
ピン・ポーン!
ドアサインの押しボタンを、慣れた手つきで一度、二度!
どたどたどた...と、玄関の向こうで階段を降りてくる音。
重い。
青銅のドア・ラッチがガチャり。
もの憂げな顔がドアの隙間に覗く。
「うるせぇなぁ...もぅ、今日は学校休みだろ、あかり!.....?。」
「おはよ、ひろゆきちゃん。よくわかったわね、わたしだって。」
と、あかり、優しげに、からかい口調で。
「んなこたぁ、あんなチャイムの押し方するやつぁ...ぉ?」
浩之の目に映る、見慣れたおさななじみ、と、もうひとりの人影。
「お、mille、なんだぁ、どうしてここに...お?(^^)。」
すこし、はにかんだ表情でうつむく、和服姿のmille。
「ん、かわいいじゃんか、mille。
着物着てるとさ、なんか正月が戻ってきたみたいだな。」
「あ...ありがとう..ございます...(^^;)。」
無造作な浩之の言葉、照れに隠れた優しさ。
そんな、気持ちがうれしくて。でも、ちょっと、はずかしくて。
さくら色に頬染めて...まるい顔、ぱっと、ほころぶ....
「...はぁ^^;。」
「どおなさったんですか?ひろゆきさん....。」
「だってさ、正月もかわりばえしなかったしさ、また、正月が戻ってこないかな、
ってさ。着物見てると。」
「まあ、ひろゆきちゃんたら、そんなこといってて...ふふ(^^)。」
「はは(^^)。」
ふたり、笑い出す。
milleも。
「うふふ(^^)...あ、ごめんなさい....^^;...ふふ。」
小春日和は、いつのまにか「春」のひざしに近づいて。
milleの碧色の瞳を、きらきら、と輝かせた......。
・
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......と、今日は「まる」のお散歩してたら、
うれしいことが、ありました。
あかりさん、ひろゆきさんにやさしくされて。
とっても、すてきないちにちでした.....。
milleは、「日記」にそう記した。
ここは、研究所の居住区間、自分の部屋。
大きなガラス窓の外は、漆黒の闇に星が瞬いて。
遠く、眼下には霞んだ街明かり。
「......。」
窓際に歩みより、milleはちいさな指で硝子に触れて。
.......あの、街灯かりのどこかに....
ひろゆきさん、が。
あかりさん、が。
しほさん、が。
れみぃさん、が。
みんな、みんなが...たくさんの方々が。
.....わたし、に、やさしくしてくださって.....
「...!。」
....そう、わたし.....。
もう、ひとりぼっちじゃない!
みんな、みんなが....わたしのことを.....!
...おぼ、えて...いてくれる....。
たとえ、時が過ぎたとしても。
記憶の中の「mille」の存在は、「みんな」のmemoryから消えさることはないだろう。
そのことに気付き、milleは自身が「生きている」証が残されることに安堵した。
それは、人間的な感情だった....のかもしれない....。
こころに、どこか刺さっていた氷のかけらが溶けてゆく。
春のひざしのような、あたたかな心につつまれて。
「.......(^^)。」
milleは、にっこり。
机に戻り、書きかけのDiaryに、書き加えた。
わたしは、いま、とてもしあわせです。
うまれてきて、よかったな。
ありがとう。
日記に、気持ちをこめて。
...わたし...
みなさんに、こんな気持ちをつたえなくちゃ。
なにか、わたしにできることで....。
と、milleは、こころの中でつぶやいた。
・
・
・
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・
mille@system:date
mille@system:Feb,14th 20xx
夕暮れの屋上。
milleは、ひとり。
... どうしよう....
かわいらしいアップリケのついたコットンの手提げには、
その中に.. 手作りのチョコレート。
去年みたいに、一生懸命につくったの。
...でも...
わたせない。
彼女にはめずらしく(?)、考えこんでいた。
...あかり、さん。
...りお、さん。
おふたり、わたしのこと、きづかってくださって。
milleは、記憶の糸を手繰っていた。
去年のヴァレンタイン。
ホワイト・ディ。
お花見。
夏休み。
テスト勉強。
このあいだの、できごと。
...いつも、いつも。
わたしのことを...
あかり、理緒。
ふたりの思いやり、が。
とても、うれしかった。あの日、あの時。
...でも、おふたりとも、ひろゆきさんのこと....
と、気づき、milleは考えている。
わたし、だけ.....おせわになったまま.で、いいの?
なんとなく、渡しそびれちゃって。
夕暮れの屋上。ひとりで。
どうしようもなくて。
沈みかけた夕陽が、彼女を真っ赤に染めている....。
....わたし、どうしたらいいのかしら....
ちいさな胸を痛め、途方に暮れているmilleであった。
.....?
物音に、ふと振り向いたmille。
そこに .. 人影。
... あ.... . .。
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・
・
・
あ、... いたいた.. ^^;
理緒は、あちこち探し歩いていた。
小柄な、制服の肩の落ちた。
碧の髪の下級生を。
...あの子、どおしてるかしら..
まわりに気つかう子、だからな....
そう思って。
あちこち、mille のことを探していた。
体育館。
渡り廊下。
教室、
学食。
中庭。
見つからない...あとは...?
階段を昇って、屋上へ。
そうそう、去年はここで、鉢あわせどん!だったっけ。^^;.. ふふ...。
思い出に微笑んで。
屋上への、重い鉄扉を開いた。
き〜。
ばたんッ!
屋上は、ヴァーミリオンの光に包まれて。
いま、夕日が沈もうとしていた....
その、夕日の方角のフェンス沿いに、探していた碧の髪。
後ろ姿は、なんとなく哀しそうに見えて.....
...milleちゃん....?
声をかけずに、歩いて行って。
ゴム底の上履きが、ぺたぺたとちいさな音をたてた。
その足音に、気づいて。
碧の髪は、振り向いた。
「....あ....。」
・
・
・
「どおしたの (^^)みれちゃん?」
理緒は明るく。
「あ、理緒さん..^^;。」
milleは、ちょっとびっくり。
どきどき。
つとめて、ふつうにしよう。と思っても。
...でも、『ふつう』って、どんな感じだっけ...
そのぎこちない感じは、理緒にどうしても伝わってしまう。
・
・
・
理緒は、なんとなく感じとって。
milleの手もとのコットンの袋を見た。
...うーん... ^^;なんていおうか、な。
「ねえ、milleちゃん?覚えてる、ここ。
去年、ここでさ...。」
milleの瞳、を見た。
翠の瞳は、輝き弱く、揺らいでいる...
理緒の言葉に反応して。
どこか、伏し目がち....
...... やっぱり、気にしてる.......。
...milleちゃんらしいわね...
理緒は、自分の勘を信じた。
「さ、いこう、早くしないと。
今日がおわっちゃう!。」
milleの手を掴んで、駆け出した。
「藤田君、まってるわよ〜。ほら。
だって、彼、milleちゃんが大好きなんだから。
さ、急ご!。」
milleは、理緒のその言葉に驚く。
... どおして、わかったんだろ....
「でも、理緒さん、わたし、それじゃ..。」
理緒は、その言葉に。
「いいのよ、彼もあなたを思ってるんだから。
こういうことは、考えてちゃだめ!... 。」
駆けながら、そう答えた。
横向いて。
その言葉に答えよう、と。
milleも、横向いた...!
★!×!
床の継目に、つまづいて。
ふたり、いっしょに転んでしまった。
「ふふふふ^^;いった〜い(^^)。」
「うふふふ(^^)大丈夫?milleちゃん?。」
いたいのに、可笑しい。
不思議で、複雑な感情をmille は感じとっていた。
「はい、すみません... 。」
milleは、スカートの裾をはたいて。
「ううん、わたしが悪いの、良く転ぶのよ、私。いつも。」
理緒は、ひざっこぞうを撫でながら。
「あ、わたしもです..^^;。」
「え、うふふふふ(^^)。」
「ふふふふふ(^^)。」
milleは、涙がにじむほど笑った。
どうしてそんなにおかしいの?
自分でも、わからなかった......
早春の夕暮れは、優しげ。
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