第15話 [A Christmas gift for you from...]

第15話  [A Christmas gift for you from...]






ふたりを乗せたLRTは、郊外区間に入ると、高架の専用軌道に入り

より、速度を速めた。



見慣れた都会の風景が、びゅんびゅんと飛び去ってゆく。



「わぁ.....。」


少年のようないでたちのmilleは、運転台の横の前面ガラスから

行く手を眺め、その速度感に驚いていた。



「すごいですね、ひろゆきさん。いつも、乗ってる電車なのに。

 ジェット・コースターみたい。」



「(^^)。ああ、そうだな。いつもは路面電車区間だからな。」





VVVF・インヴァータは高周波の音を発し、ランニング・ノッチ。


あっという間、という感じで、郊外の小さな駅に着いた。




簡素な、木造を模した駅舎はログ・ハウスのように見える。


片面だけのプラット・フォームから改札を抜けると、駅前から

すぐになだらかな丘陵となっていて、一面、緑の牧草地帯。





「......。」

「......。」




ふたり、言葉を失っていた。



「とっても、きれいです....。」

「ああ..。すごいスケールだな....。」



駅舎を振り返ると[...Natural Park]と。


自然公園。




「でも、ひろゆきさん,今日は、どうして『ズボンはいてこいよ』って...。」


いつかと同じ、胸当てcoverall のジーンズのmilleは、そう尋ねた。



「ああ、今日はあれに、乗るんだよ。」




丘の向こうを、指差した。



とても,小さく、ぽつんと、なにかが動いたように、milleは思った。




「...?」



「さあ、いくぞ。」






ゆっくりと、牧草地帯の丘を登ってゆく。




さくり、さくり。


さくり、さくり。


さくり、さくり......。




行く手に、ログ・キャビンのような建物が見えてきた。





「さあ、もう少しだ。」^^;


「はいぃ...。」^^;





歩きながら振り返ると、さっきの駅舎が、豆粒のように小さく。


電車の軌道が緩やかなカーヴを描いていた。






さっき、ちいさな点に見えた物は、4本の脚で立っている動物だった。


二人が近づくと、そのうちの一頭が、ゆっくりと近づいてきた。




黒い、短い毛に覆われた皮膚。

しなやかな、鬣。

長い、尾。






すぐ、ちかくまで来ると、それは意外に大きな物体で、milleは見あげ、驚いた。




「.....こんにちわ^^;。」




ちょっと、こわごわ、声かけてみた。



動物は、黒い瞳でじっと、milleを見ている。




「おおきい,,,んですね。」



「......。」







「なんだ、mille、馬、見たことなかったのか?」



「はい、本で、見たことはあるんですけど....。」




「そうか、まあ、俺も乗るのは初めてさ、賭けたことはあっけど(←コラ!)」




「乗る?んですか...。」






「ああ、そうさ。今日は、これに乗ってみようと思ってね。」




馬は、ふたりの会話をじっと、聞いているかのように。

耳をぴんと立てて。


そのうち、傍らの草を食み始めた。


口で千切るようにして、もぐもぐと、延々と草を食んでいる.....。



「おい、しいですか?(^^)。」


milleは、その様子を不思議そうに見ている。

馬の長ーい顔はちょっと彼女を見たが、また黙々と食べている。


もく、もく。

もく、もく。

もく、もく...。



「.....?^^;。」



そんな二人?を見。

浩之は、ポケットからコンパクト・カメラを取り出し、シャッターを切った。



その、かすかな機械音に、馬とmilleは同時にカメラを見た。








「あはは、わりいわりい。邪魔しちゃったかな?^^;。」


浩之。ちょっとテレ笑いで。




「写真機、ですか?」

milleは、小さなカメラのレンズを見。


「ああ、雅史に借りてきたんだ、良くわかんないけどな、使い方。

  記念写真とろうぜ、mille。そこ、並べよ、馬の隣に。」



「こう、ですか....?。」


milleは、馬の顔の傍に立った。

馬はうなだれて、milleを横目(?)で見ている....。


「じゃ、撮るぞ。」



「........。」


浩之は、シャッターを下ろした。


瞬間。


馬は、milleの着ていた服の肩の辺りを、ぱくりっ!


「あ^^;。」


「きゃっ!^^;。」



ファインダーに、楽しい瞬間が映し出された。^^;。



「ははは。」


「...(^^)。」



「........。」




馬は、首をもたげて、小さくいなないた。


ちょっと、愉快な表情で。



「もぅ..^^;。」

milleは、着ていた服をちょっと見たが、穴が空いたりはしていなかった。

どうやら、馬は親愛の情(?)を表したみたいだった。




「おい、大丈夫か?。」

浩之は、milleの方へ駆け寄る。



「はい、服を軽くつままれただけです。」

milleは、肩の辺りを見て。



「そうか...馬って、結構いたずらなんだな。^^;。」





「やぁーいらっしゃい、お二人さん!。」


チェックのワークシャツ、ジーンズ。白い髭と長い髪。

恰幅のいい初老の。牧場主らしい。


見知らぬ男が親しげに声をかけてきたので、二人ともびっくりした。



長靴。

腕まくり。二の腕には剛毛。

丸い顔は微笑んで。


しかし、その様子があまり自然なので、なんとなく親しみを感じ、二人。


「..はじめまして。」

「こんにちは(^^)。」


と、すこし遅れた挨拶を返した。



「わっはっは!さあ、堅苦しいのは抜きにした!!。早速、乗ってみるか?

 今日は、馬に乗りに来たんだろ?。」



「はい。」

「はいっ!(^^)。」



「ははは!、それじゃさっそく!。..お嬢さんはポニィの方がいいかも知れんな。」


白い髭は、振り返ると、馬小屋の方に歩き、後ろ手で手招きをした、



「......。」

「......。」


ふたり、戸惑いながらついてゆく。

ざっくばらん、というか、無造作な彼はどことなく暖かい感じがして。

まるで、この丘の景色そのもののようだ、と浩之は思った。




「よィッ^^;しょ!」


milleは、鞍がつけられたポニィの鐙を踏み、渾身の力で馬に"よじのぼった"。

小さい馬、とはいえ、彼女には十分大きい。


やっとのことで鞍によじのぼると、普段とは違った景色が見えて.....。



「わぁ(^^).....!。たかい...。」



馬の背の高さに乗っているので、視点が高くなって。


遠くの峰峰が白く尖っていたり、青空や、真綿のような雲や。

そんな何気ない景色まで、さっきまでとは違って見えて。



「どうだ、大丈夫か?」


浩之は、すこし離れて、大きな馬に乗っている。

2階から見下ろすように。


「ひろゆきさん、おおきいんですね。」



「...(^^)、ああ、馬がな。」



「あ^^;、そうですね....。」




「さあ、お二人さん、鞍をしっかりつかんだ!歩くよ!。」




白い髭は、さっき、milleの服を食べた馬に乗って。


先頭にたって馬を歩かせると、二頭はそれに付いて。


ゆっくりと歩き始めて。



ぱか、ぱか。

ぽこ、ぽこ。

ぱか、ぱか.....。



牧場の丘を、ゆっくりと横切り、山の方へ。



「.....^^;。」

馬の背中は、でこぼこしていて、揺れるので

ちょっと怖かったけれど、でも、あたたかかった。




牧場に、たくさんの馬。


駆け回っている子馬や、それを遠く見まもる母馬や。


生まれたばかりの赤ちゃん馬が、母親に寄り添っている姿や。



「(^^).....。」..かわいいです..(^^)。


milleは、いたいけな赤ちゃん馬の華奢な手足を見て。

よりそう母馬の優しいまなざしを見て。


「....いいなぁ....親子って....。(^^)。」



そう、首をすり寄せ合う母子馬の姿を、見ていた....。



ちら、と何かが目の前に下りてきた。



「あれ....?」





ふわ、ふわと舞い降りる。

純白の風花、さらさら。




「わあ(^^).....。」


「お?....。」


「おお!降ってきたか?...今年は早いのぉ...。」





遠い峰から飛ばされたのか、真綿雲から舞い降りたのか。


天使の羽のように、ふわり、ふわり。


ひとつ...ふたつ...みっつ....。


馬も足を休め、茫洋とその情景を見ている(?)。



ポニィのたてがみに雪が。

milleはその、ひとかけらをつかもうとする...が。


ちいさな指先に触れたとたん、とろけて。


まるい、みづ珠になって。

掌に、ポロン、と。



「,,,(^^)。」



みずたまに、さかさにけしきがうつってて。

丘の草原。

白い山。

ひろゆきさんと、牧場のおじさんと。

みんな、ゆれてて、きらきらと.....。



milleは、冬の訪れをmemoryに記憶していた。

二度目の冬。


雪の記憶を思い出して....。


研究所に降ってきた、初めて見た雪。

学校で、ひろゆきさんと...^^;。

スキー場。...(^^)。


いくつもの想い出が,駆け抜けていった。



飽きることなく、揺れるみづ珠を眺めて。

ポニィは、ゆっくりとまた、歩みを始めた....。



...ありがとう....。

milleは、誰に言ったのか。

そんな言葉をつぶやいた....。



さて、それからひと月ほどが過ぎて。


mille@root:date

mille@root:December,24th 20xx.....


今日は、クリスマス・イヴ。


今日は皆でパーティーでもしようか?と...。

いつものようなお祭り女(?)志保の提案で...。



milleは、「彼」の迎えを待って。

窓際で、外を眺めている。


街明かり、遠く瞬き、白銀に。


今夜は、どこか華やいで....。




息で曇った硝子窓。

黒い空を見上げて。




「ゆき、ふらないかしら....(^^)。」




と...。


夜闇から、のんびり歩く「彼」の姿が。



「あ.....。」(^^)




窓辺の彼女を見つけた彼は、硝子に寄って..


「メリー、くりすます。(^^)。」




milleは、まるい顔一杯に笑って。



「め、merry、christmas。(^^)。」



「....。」

「....。」


ふたり、瞬間。

微笑み合って。





milleは、思って。


....クリスマスって、いいなぁ....。(^^)




なんとなく、Happy。




空からも、プレゼント。



「あ...。」

「......。」



ガラス窓をはさんで、見上げた二人。



同じ顔。



その表情が可笑しくて。


「ははは(^^)。」

「うふふ(^^)。」




硝子越しに、笑いあった。



大粒の雪がいっぱい降ってきて....。


華やいだ風景に、彩りを添えた。



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