第9話[rainy days and mondays

第9話        [rainy days and mondays]







その微笑み、ちょっと謎めいたように。

ブロンド・ガールは、時刻(toki)の刻みを逆転させて。


浩之は、なんとなく何か引っかかっているかのようで。



「う〜ん...。」




たしかにどこかで見たような、でも、はっきりとは...

桜の古木、幹を撫でている。と、

つるりとした樹皮に、旧いきずあと。



「.....。」




浩之はそれを人差し指で撫で。

......どこか、これに見覚えがある。


なんか、ひどく叱られたような.....

想い出が。...おおきな人に。




「!」




そうか。あれは。



....さっきのブロンド紳士。

どっか、声に聞き覚えがあるような。

........と。いうことは...。




「レミィ?」


「フフ...。」



ふたりは視線を桜の梢に。


遠い、記憶を懐かしむか...。





「ひろゆきさん、どぉしたんですか?」



そこに、milleがすずめのような足取りで。


浩之を見上げている。





「ああ、ああ、なんでもない。」



レミィ、にっこり。


「....?」

milleは、不思議そうに、ふたりの間の空気を感じ、小首を傾げた.....。







さて、楽しい週末も終わり....また、Weekdayがやってくる。


月曜日。


学校の桜並木も、雨に洗われて。

花びらが水溜まりに浮かび、美しくも儚い花の命の最期のPerformance。



その、桜の花びら。

波紋に揺れて、雨だれに揺れ。

いくつもが、ゆれて、ゆら、ゆら...万華鏡のよう。


「,,,きれい..です、ね...。」


水たまりの桜花を、milleはずっと見ていた。

窓際の、昼休み。

雨のしぶきが、飛沫となって。

ゆっくり、静かに、そらにひろがる....。



....雨は優しく大地を包み、

山の碧さをひきたてる


谷に集まり 河はながれて

海の蒼さに、溶けあって......



さて、日々は駆け足で。

さわやかな風、ちょっと秋の風のような感じがする爽やかさに

すこーし雨の匂いが漂うと

この街にも入梅がやってくる。


衣替えも過ぎ、ちょっぴり半袖がまだ肌寒い今日この頃。



またある雨の、月曜日。



milleは、つつじの植え込みが雨に濡れ、より華やかな色彩を帯びるのを

楽しそうに眺めている。

教室の窓から時々落ちる雨垂れが花弁を揺らし

その音楽的リズムを瞳で追っていた。



....雨。



「...いつかも、こんな、雨の中....。」



六月の雨の匂いは、彼女の記憶を呼びもどす.....。



公園で、雨宿りして。

ひろゆきさんが、通りかかって。

とても、親切にして下さって。

.....ホワイトディ?の、思い出..。


milleは、外の景色を眺めるでもなく、思い出に、いつしか微笑んで。

にっこりと。


外は、雨...。


校庭の桜並木も、雨に打たれて。


うすぼんやりと、ピンクのヴェール、かぶってる。


硝子窓を、雨だれが。ゆっくり、静かに、流れて....おちる。



桜..?



「..あ..。」



お花見の時のひろゆきさん、とレミィさん....。


なに、を、お話してたのかしら...?


ちょっと、気になります..。



いつもと違った雰囲気が、ちょっと不思議な感じでした。



milleは、「恋する乙女」らしく。

恋人の、こころ、気にして。

すこし、心配...。




「まぁ〜るちッ !?」

「!(^^)あ、ひろゆきさん.。」


「なにやってんだ、ひとりでぼんやりしちゃって。」

「..あ..なんでもないんです、ちょっと...。」


「...?...なんか、心配ごとでも、あるのか?」

「!?...え....^^; 。」


「いや、なんかさ、..。」



「あ、だいじょぶですぅ。ご心配、おかけして、申し訳ありません。」

「そうか、なんでも言えよ、遠慮しないでさ。」


「はいっ!(^^)。」


おおきく、うなづく、にっこりして。

短めの髪が揺れて。浩之を見上げる。


そんな彼女を、浩之は穏やかに、微笑みながら...見つめる。

愛おしげに。



雨の音が、バック・グラウンド・ストリングスのように.....。




そして、午後の授業。

.....なんとなく、落ち着いた気分で、milleは校庭を眺めていた。

老教師が擦り切れたスリッパで歩いてくる。教科書を読みながら。


スタ、スタ...。


外をみてぼんやりしている彼女の頭に優しく触れる。

mille、驚く、全身で。


教師の方に向き直り、肩をすくめて。「....。」

教師、白髪頭でにんまり。



外の雨、降り続いている..。



静寂を破り、終鈴が鳴る。




「はい、今日は...ここまで。」





教師の言葉、終を待たずに騒ぎ出す。生徒たち。

奔放な、エネルギィ。


その様子。

老教師、愛おしげに微笑み、「.............。」


静かに、教室を出て行く。


スタ、スタXタ.....






さて、いつものように(?)ようやく、解放。

浩之たちは、家路に就こうと。



「じゃ、帰るとするか..。、雅史、今日は?。」

「ああ、雨でグラウンド使えないし、今日は休養かな。」


「んでも、部の方はいいのか?」

「うん。まあ3年にもなると、気楽なもんだよ。2年が主体だしね。」


「.....そうだよな。」





つい、この間、入学したばかりみたいな。

そんな気持ちだったけど......な。

もう、先輩も、卒業しちゃったし。

.....先輩、元気かな....。




浩之は、芹香のことを思いだして。

まっすぐな黒髪、すいこまれるような瞳。

不思議な存在感...。

よく、中庭のベンチで、空、見てたっけな.....。


浩之は、中庭の方を見る。雨あがりのひざしに、濡れたベンチが照り返し。

そこに、芹香の存在がない事が不自然なような。

そんな、感情が彼を、つつんで。



「よ!少年!。」



志保は、いつものように元気に。

なんとなく、楽しげ...だ。


「....なんだ、また雰囲気を壊す奴が..どっかのゲームみたいな登場のしかただな....。

「まま、そういわんと。ねぇ、あんたたちさぁ、今度の休み、暇?。」


「.....おまえ、わかってて言ってるのか?」

「.....なにが?」


「志保、来週、テストだよ。」


「あー、すっかり忘れてた〜。はは。(^^;。」


「おまえ、長生きするよな......。^^;;; ぜったい。」





いつものように、賑々しく。

3人は、家路へ。

階段を下って、階下へ向かおうと。

後ろから、聞きなれた女のコの声が。


「まってェ〜、みんなぁ。」

急ぎあしで、ぱたぱたと。


「お、あかり。」

浩之は、いつもの調子で。おさななじみ、という気楽さからか。

ちょっと、乱暴な口調、でも、優しい口調で..。





「ごめーん、ちょっと先生の所へ.....。」お下げを揺らして、ようやく、息が整う。




「なんかやったのぉ、あかりぃ?」

心配、と、好奇心半分。といった感じの、いつもの「志保ちゃん情報」の顔で。



「....困ったやつだよな、みーんな自分とおんなじだって考える...。」



「なによぉ、ヒロ。あんただって似たようなもんでしょ?」

ちょっと、からかうように。


浩之は、”乗ろう”としたが、あかりが。


「ちがうのよ、志保。今度のテストの範囲で、わからない事、あったから。

先生に、教えてもらってたの。」




「なーんだ、そうなの。でも、あかりはさあ、だいじょぶでしょ、

そんなに勉強しなくても。」


「そんなことないよ。やっぱり、ちょっと心配。進路の事とか、ね。」


「うーん、ーー;....そうね〜。」



珍しく(?)学生らしく。

いつものメンバーで、廊下を歩いて行く...と。


2年生のフロアへ。


「あ、この教室、なんだか懐かしいね.....浩之ちゃん。」

あかりは、2年教室のひとつを見。そうつぶやく。


「...そうだな。ほんのちょっと前なのにな....。」

浩之も。茫洋と。


それぞれ、みな、それぞれの。

「想い」を残し、時刻だけが駆け足で過ぎて行く。

教室は、時の流れなど無いかのような風情で。

ただ、そこに佇んでいる。



廊下の向こう端。

小柄な少女が、「朝日印」のモップを持って。

ごしごし、と。床をこすっている....。

その、ひと動作ごとに。短めの断髪が揺れて。

体が軽いのか、押し引き、ひとつ、ひとつに反動をつけて。

懸命なところ、表情からも「うかがわれる」


「おーい、mille ! 。」


「あ(;^^;)ひろゆきさん!おかえりですか?」

顔をあげ、少女は、顔を綻ばす。


「なんだ?また,,掃除当番か?」


「あ,,,,はい^^;。」

まっすぐにこちらを向いて、うなずく。


「....他の当番は?」

浩之は、周りを見る。

だれも、いない。


「あ、みなさん、テストなので.....。」

ちょっと、うつむく。


「.....また、押しつけられたのか....。^^;;。」

「....すみません....。」


下、向いて。

大きめの制服の肩が落ちてて、それが、なんとなく哀愁の表情のようにも見えて....




「しょうがないな、ほれ、モップ貸せ。」

浩之は、ちょっとお兄さんっぽく。


「あ、そんな、また、御迷惑を.....。」


「いーんだよ、な、みんな!。」


「ああ。」

「うん!」

「そ〜ねぇ。ま、後輩が困ってんの、ほっとけないでしょ。」


「.....ありがとうございます....すみません,,,,,」

milleは、ちょっとうつむき加減に、笑った。





「ふ〜。掃除って、結構疲れるものね〜。」

額をぬぐうそぶりで、志保。


「普段、さぼってっかんな。」

からかうように、浩之。


「なーによ〜。あんたが掃除してんのなんて見たこと無いわよぅ。

ったくぅ、可愛い子には甘いんだから。」


「お^^;;;、俺は、別に....。」


「照れるな照れるな。」


「べ、別に照れてなんか....。」

口を尖らせ、そっぽを向く、浩之。


「あっはは〜......。(^^)。」

図星をついた、とばかりにはしゃぐ志保。


「.......。」


その、やりとりを少し距離を置いて、傍観するあかり。

ふと、窓の外を見上げる......、と。


「あ!....虹!。」



「え?」

「どこ、どこぉ?」

「ほんとだ。雨、あがってたんだ。」

「......。」

「きれい、ですぅ。(^^)。」


それぞれに、めいめいに。

虹を、仰いだ、5人。


いつのまにか、雨は上がって。

雲間から、レインボゥ・アーチ。




!....★




あかり、いきなり駆けだす、堰を切ったように。


「おい、どこいくんだよ、」


階段のほうへ、


駆け上がる、一気!


鉄扉を開ける。

屋上へ。


雨に濡れたコンクリートの屋上。

やわらかな光線が、まぶしい。


「............(^^)。」


見慣れた街並みが、ぼんやりとかすんで。


彼方から、虹が。


.......いつか、こんなふうに。

.......浩之ちゃんと虹、みたっけな.....




重苦しい金属音を立て、鉄扉が閉じる......。





「おーい、あかり。どうしたんだよ。」

浩之が、のんびりとやってくる。





「ほら、浩之ちゃん、虹が...きれい.....。」


「ああ、そうだな。.....いつかも、こんな....。」


「ほんの、ちょっと前なのに、ね。」

「.....そうだ、な.....。」





ちょっと湿った、さわ風が。

彼女の胸もと、すりぬける.....。



「どうしたの、急に。」

雅史、まっすぐに。


「あ......ほら、虹、ね^^; 。

もっと、近くでみたくって....。」


「ああ、もう、薄れてきちゃったね...。」


「........ほんと。」


束の間の、虹。

......つかのま、の、ふたりっきり、だった.....。

あかり、いつになくマイナーな。

6月の、雨のせい?



階下に戻り。


「どーこいってたのよ〜、三人で。」

「ごめん、志保。虹、見てたのよ。」

「....ふーん....?。」



「さ、かたづけて、みんなでかえろうよ!」

あかり、明るい、いつもの表情で。





「よーし、気合い入れてくぞ!」


「はいっ!」

「OK!」

「いくわよ〜!」


「まあ、やりゃできるもんだな。」

浩之は、見違えるようになった廊下を見回し。

床は、その表面に鏡像を映すほどに光輝いている。


「そうだね、なんだか知らないけど、真剣に掃除したのなんて久しぶりだよ。」

雅史は、その風貌に似つかわしくないような一言を。


「まー、あたしがマジんなればざっとこんなもんよ。」

志保、いつものような得意の表情で。


「そーだよな、めったにマジんなんないからな.....。」


「.....なんか、妙ないいかたね。まるであたしが.....」


「わかるか?」(微笑)

「わかるわよ。」(笑)


.....はは、は、は....(^^).

.....ふふ、ふ.....(^^;)



コンクリートの校舎に、みんなの笑い声が響いた。




さて、そうして大団円?

みんな、モップを鞄に持ち替え。

学校前の坂を下って行く。





「ねえ、志保、テスト勉強、どうする?」

あかり、おさげの先を撫でながら。


「そ〜ね、今回、ちょっとピンチなのよね。」


「いつもじゃねぇか?」


「言いにくいことはっきり言う奴ね、ひろ、あんたも似たようなもんでしょ?。」


「うう,,,,,,ーー#;....。」


「そうだ!みんなでテスト対策しようよ!ミレちゃんもいっしょにどぉ?」

あかりの提案に、みんなうなづく....。と。




「あれ、ミレちゃん?」


「.....さっきまで、いっしょに歩いて......あ。」




路地沿いの、旧い日本建築の家。生垣のあいまに、紫陽花。

その、緑の葉、紫の花を、milleはじっと見ていた。


視線の先に、かたつむり。


おおきいのと、小さいの。


とろとろ〜ろ.......。



「mille、なにみてんだ?」


「あ、でんでんむし.....かわいいです....(^^)。」

にっこりと、ちいさなゆびで指さして。


「....ああ、ほんとだ。こんな都会にもいるんだな。.........。

ほら、雅史、カタツムリだよ。」


「あ、ほんとだ。めずらしいね、このあたりじゃ。これ、親子かな?」


かたつむりは、つのを動かしながら、ゆっくりと。

時間の流れがちがうか、のように。





......親子、か.....。




milleは、ちょっぴりペーソス。


そんな顔色を見、浩之は。

「あ、mille、あかりがさ、いっしょにテスト勉強しようって。」


「ほんとですかぁ、ありがとうございます、あかりさん!(^^)。」

milleは、明るく。


「ほら、これでも一応先輩だから、去年の事、覚えてるし。ばっちりでしょ?」

あかり、milleを、妹のように気遣う.....。


・・・さて、humanoidは、テスト勉強をするのかな?(笑)




雨上がりの空に、つばめが三羽。

滑らかな、グライディング。


季節は巡り.....夏は、もう、すぐ......。









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