第8話 cherry blossom

第8話        [ Cherry blossom ]



「お花見、いいデスね。ニホンの心。ワタシもツレてってください。」


と...レミィが。



「ああ、いいぜ、なんたって、大勢の方が楽しいからなぁ。」


「oh,そうデスか。じゃぁ、family,一緒に....。」

「はは、なんだかにぎやかになるな。」



milleは、そんな情景を、にこにこと。

友達が、いっぱいで、なんとなく嬉しい、のかな?「ひとりっ子」だし。



「でも、みんなのスケジュールどうかな?それと場所とかも。」



雅史が、いつものように。



「...そうだな、俺はいいけど。暇だし、雅史、部活は?」

「うーん、そうだね。午後からだったら、いいかな。クラブも終わるし。」



「そーぉねぇ。夜桜見物ってのも、いいわよね。」

「酔っ払って暴れるなよな、“また”。」




「なーによぉ、“また”とは。誤解されるようなこといわないでよね。」

「誤解じゃないから、いーんだよ。去年を忘れたか?」

「ぅッさいわねぇ〜、つまんないことよく覚えてるわねぇ、あんた。^^;。

男のくせに。」

「お前も、酔っ払うなよな、女のくせに^^;。」

(お酒は二十歳になってから!)

「なによぉ。」

「なんだよぉ。」



「まあ、まあふたりとも。それじゃ今度の土曜で、どうかな。」



「いいね。」

「いいんじゃない。」

「いいわね。」

「はい!。」




「おし、じゃ決まりだな、でも、どこでやるか、なあ雅史。」

「そうだね、公園とか、河原とか_ミとか...。でも、場所、とれるかな。


「...まあ、いいか。じゃ、現地集合ってことで、OK?」


....と、いうわけで、(?)花見と相成ったわけでありまして。

夜桜見物仕様?に、提灯やら裸電球やらで至れり尽くせり、の

都市の公園に皆、やってくる。


「ちょっと、はやかったですね。」


milleは、ひとり、公園に、「いちばんのり!」だ。



未だ、だーれも来てはいない。桜並木の方は、もう陣取りなんかが始まってる。



「だれか、こないかなぁ........。」



外れたあたりの常緑樹のある、芝生のほうに。



どこからともなく、鳩が舞い下りてきて。彼女の周りに。頭の上にも、一羽。



「あ...鳩さん、こんにちは。」



彼女はにっこりと、鳩にあいさつ...。鳩も、小首を傾げ、返答?している...。


「....かわいい(^^)。」


頭をよちよち、と振りながら歩く鳩を見、milleはつぶやく。


「あ、そうですぅ。」



用意してきたお菓子を、少し分けてあげよう。

もっていたクッキーをかけらにして、地面にまいてあげる。


「きゃッ!」


頭の上やら肩の上やらから鳩たちは飛立ち、はばたきの音で彼女は驚き、

瞳を閉じる。

クッキーに、鳩たちは嬉々として群がり始めた。

その様子を、にこにこしながら彼女は、眺めていた....と。



「おーい、mille!なにやってんだ?」

「あ、はーい!」



浩之の声。...鳩はとびたって。

milleは、小走りに浩之の側に。


「早かったんだな。」

「はい!。なんだか、みちにまよいそうで..。」

「はは、milleらしいなぁ。」


「^^;...。」

すこし、うつむき....。


傾きかけたおひさまが、彼女のまるいほほにちょっぴり陰影をつけた。

おだやかな、遅い午後.....。

もう、夏の訪れを予感させるような夕刻の感覚。

milleにとっては、実感したことのない「夏」という感覚をどう記憶するのだろう?

初めての、「夏」を。


.......なにか、いいことあるかなぁ......?




「やあ、早いな。」



さわやかな、サッカー少年らしく、雅史がやってくる。

ボーダー模様のシャツが、サッカーへの「想い」を感じさせる......。



「結構、混んでるね。」

「そうだな、今が見頃だしな...どこか、空いてるところはないかな。」


「ちょっと、難しいかな...場所、取っとけばよかったね。」

「そうだなあ...あれ、志保は?。」


「一緒じゃなかったの?」

「..いや、雅史と一緒だ、と思ってた。」


「...まあ、いないほうが静かでいいか....。」

「そんなこといってると...。あとで....。」



「怖いわよ!。」




「お。でたな。」

「な〜にが『でたな』よ。人をお化けみたいにいわないでよ〜ぉ。」


「似たようなもんだろ。」

「失礼なやつねーぇ、あんたも。元からそうは思ってたけど。

そんなこと言ってぇ、つれてってやんないわよ?」


「お、何だ。場所取っといてくれたのか、さすが、手回しが....。」

「ちょーしいいんだから、まったくぅ。とっときの、穴場があるのよ、穴場が。」


「どこだ、それ?」

「まあ、ついてらっしゃい!」


「...なんだか、怪しいなぁ、変なところじゃないだろな。」

「だーいじょぶよ、心配性ねぇ。......。」



「あ;;ごめーん、遅れちゃって.....。」

「お、あかり、遅いぞ。」


「ごめんね、浩之ちゃん、支度してたら、つい....。」

「すごい荷物だな、それ。」


花見弁当?かな。お重の包み、はなやかな色彩の風呂敷包み。

両の手に、持ちきれないほど。



「へへ、ちょっとがんばっちゃった^^;。」



「あかりさん、お料理が得意なんですね。」

「えへ^^;。こんど、一緒にお料理しましょう?」

「はい、おしえてください、いろいろ。わたし、お料理は苦手で。」



「...と、ところで、レミィは?。」

「ま〜、まかしときなさい!この志保ちゃんに、!。」

「...?..ま、いいか。」



志保は、そういいながら、公園の外へ。


「おい、どこいくんだよ。」

「まーまっかせなさいっ!」

「おーい、まだかぁ。」

「志保ぉ、ずいぶん歩いたわよ、^^;。」

「住宅地の方だね。この辺りに桜の名所って、あったかなぁ。....。」

志保は、風格のある西洋館の、厳粛な感じの鉄扉の前で、足を止める。

煉瓦造りの高い塀で、中の様子はわからない...。

「....?。」

どこか、見覚えが.....あるような。

浩之は、記憶の糸を手繰って。



「★!。」



青銅の重厚な掛け金を外し、志保は門扉を開ける。




「お、おい、ひとん家だろ。志保!。」

「.....。」


志保は、無言で。後ろ手で、手招き。




雅史、あかり。黙ってついてゆく。


「お、おい、みんな...。」



ふたり残される、浩之とmille。顔を見合わせて。


「.........。」

「.........。」



仕方なく、浩之は門をくぐることにした.....。

足を、一歩。....もう、一歩。高い壁のせいで、周りは薄暗い....。





「Hey! Hold Up!!」







振り向くと、ブロンドの紳士。

鈍く光るライフル!



銃口が、不気味に。




「た、た、たすけ...そーりぃ? ゆーあ、うえるかむ★★!!・!。」





浩之は、両手を挙げ。

もとより、英語は駄目だ。^^;・(ぉ。






ブロンド紳士は、照準を浩之に向け、にんまりと。


「あああ、あやしいもんじゃありません、おーい、志保!雅史!あかり!」



誰も見えない。どーなってんだ?


milleは、浩之の陰で、小さくなっている。




.....なんとしてでも、こいつを守らなきゃ。

浩之に、少年らしい自負が生まれた。



顔を上げ、ライフルの方向に、足を一歩.....。




その時.....。




閃光!

炸裂音!





浩之は、とっさにmilleをかばい、身を伏せた....。



硝煙臭...煙。

........もう。だめかも....。

などと、浩之は思った。





静寂。





.....俺は、死んだのか?milleは?、あかりは?




「Hai ! Welcome !!!」

「Hai ! Welcome !!!」

「Hai ! Welcome !!!」

「Hai ! Welcome !!!」




「....あれ?」




浩之は、地面から起き上がって、辺りを見た。




クラッカーを持った、みんなの笑顔。

フットライトに照らされた桜の古木。




「Dad、ジョウダン、きついデスヨ。ヒロユキ、おどろいてます。」



レミィが、ブロンドと、明るい表情。ちょっと困った感じで。



「....あれ???....それじゃ!」




悪戯っぽく笑う志保。


「へへぇ〜。ひっかかったわね。^^;。」





「てめぇ〜...! こら、待てッ!」




脱兎の如く、逃げる志保。

追う、浩之。





ふたりの行方を、milleは。


あっけにとられて。




「Hai, mille,驚かしてごめんナサイ、ここ、ワタシのウチ。welcome! 」




レミィが、にっこりと。




「そぉだったんですかぁ。(^^)。」



さくらは、満開。


散り始めた、はなびらが。


華やかに...ブロンド、碧の髪にアクセント....。





きょうは、とってもいいいちにちでした。



......と、milleは「こころ」につぶやき、モノ・ローグ。


みんなの笑顔。

にぎやか、ことば、とびかって。




”お花見”も、なーんとなく、ホーム・パーティーみたいで。


「um。アカリは日本料理、上手ダねェ。」

ライフルを傍らにさげたまま、レミィの父は。

あかりの花見弁当を味わっている。


「いえ(^^;.....そんなぁ....。和食、お好みなんですか?」

あかりはすこし、ほほ染めながら。


「um。ニホン料理、『Spirit』ある。ニホンのこころ。」


.....あれ、どこかで聞いたような...?



「みなさん、いらっしゃいませ。...。」


細身な女性、上品な和服で。

静かな微笑みをうかべて。



「ああ、Wifeだ、よろしくネ、ミンナ。それから.....」




「こんばんは、みなさん。」


ブロンド美人、レミィに似ているけれど、すこーし涼やかな感じ。



「これは、上の娘で、シンディだ。それと......。」



旋風!吹きぬける!


スケボーにのって、ソバカス少年。「ゴーッ」と。

ちょっとはにかんだような表情は、ときどきレミィが見せるのとそっくり、だ・。


「hai ! Micky です、よろしく。」


「ハハハ、これ、Micky!、ああ、これはレミィの弟で、ミッキーだ。

家族は、これで....」


[Bow!」


でかい洋犬、吠える。風格のある顔つき。


「おお、そうだった、これはジュリー。」


......飼い主に、どこか似ている。


アメリカでも、犬は飼い主に似る_らしい。(^^)・




「....なんだか、いいですね.....。家族って。」


milleは、たくさんの友達のにぎにぎしさに、微笑みながら。



「....あれ、ひろゆきさん?」


さっきまで、そこにいたのに?


浩之は、ひとり。

桜の古木の幹に手を触れて。


「うーん、なんか....?」



見たことあるような、ないような。


「俺、記憶力ないからな。勘違い、かもな。」



こういうのを「既視感覚」とかっていうんだよな。(<-あたまいいじゃん?(^^;;;)



「ヒロユキ、どうしたの?」


レミィが、ガーデンテラスのみんなの輪から離れて、浩之の側に。


「なぁ、レミィはさ、ずっとアメリカだったのか?」



「ソウデス、でも、生まれたのは、ニホン。私、『ヤマトナデシコ』!」


「(^^)そうだな、レミィ、日本のこころ、持ってるよな.....?」


レミィは、ちょっとうつむきかげんに。


そんな表情の機微、どこか母親のようでもあり、おさな子のようでもあり。

伸びやかさ、との対比が不思議な存在感。



浩之は、その表情の断片に、どこか遠い記憶を想起し、

回想を続けていた.....。



ブロンド・ガールは、愛らしく。

どこか、謎めく微笑みで。

記憶の糸をたぐりだす.......。












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