第6話


は?え、なにこれ?

戦争でもあったの?

それにしても、ボロ負けしてんな?


不意に振り返ると、一体の負傷した兵士が俺に剣を向けてこういった。


「ば、化け物っ!!!!」


化け物?


「それは、俺の事か?」

「お、お前以外に誰がいるんだ!1人でこの魔王城の兵士たちを殺した化物め!」


ほうほう…って、はぁ!?

俺が兵士たちを殺した?1人で?

お、俺が眠ってた間に何があった?


そう言えば、ヒイロの姿もみえな「我が君!任務遂行致しました!」


と、目の前で兵士を殺した 一体のヒイロではない、悪魔が俺の前で跪く。


「………………だれ?」

「ん?何を仰ってるんですか?先程、私を召喚されましたじゃないですか!」


悪魔召喚?してなんか…


「あ、…そうか。そうだったな。」


俺が眠ってる間は、スキルが憑依してたんだな。俺の体使ってこんなことしてたのか。

というか、どうしてくれんだ。


魔王城崩壊とか、俺この国に乗り込んできた敵になってんじゃん!


こんなつもり無かったのに。


「つきましては、我が君。私をどうか「あぁ、そうだな、帰って構わないぞ?」………え?」


被せるように言うと、何故か捨てられた子犬のような困惑したような顔をされた。はて、何故だ。


「あ、あああの、我が君よ。」

「なんだ?帰らないのか?」

「私は、我が君の元で、……元に居たいのです!」

「はぁ??」


ギュッと俺の手を握って凄く泣きそうな声で言われた言葉に俺は、―――――引いた。


「主様!今戻りました!」

「お?ヒイロか!」


戻って来たヒイロに何故か気分がよくなった。

多分、この手を握ってくる悪魔のせいだろう。


「主様……、その悪魔は誰です?」


何故か不機嫌なヒイロ。


「誰と言われても、名前ないよな?お前。」

「はい!まだ、名前は付けられておりませんから。」


さっきとは違って笑顔で答えてくる。

なんだお前、さっきの演技かよ!


「だそうだ。俺が呼び出したみたいだが、記憶ないし、帰ってもらおうとしていたところだ。」


そう言うとヒイロは俺達の方へ近づき俺の手を握っていた悪魔をぶん殴った。

そして、吹っ飛ばされた悪魔を虫を見るような目でみた後俺に目線を変えてにこりと笑う。


「全くそうには見えませんでしたが、手を取り合って何をされていたのです?」


…………………ンん?


「手を取り合ってって、俺、あいつの手なんか握ってねぇぞ?」

「言い訳は要りませんから、私がいない間に何をなされていたか全部吐いてください!」

「いや、なんもないけど?」


両肩を掴んですごい勢いで迫ってくるヒイロに俺は何故か冷静だ。というか、冷めていた。

すると、突然目前から消えるヒイロ。と、急に復活してきたヒイロに吹っ飛ばされた悪魔。

どうやら、今度はヒイロが吹っ飛ばされたようだ。


「我が君!大丈夫ですか?」


…めんど、心の中で一息つくと俺は悪魔を睨んだ。


「大丈夫だから、そろそろ帰ってくれないか?」

「な、何故私に帰れとおっしゃるんです?私は我が君の元に仕えたいんですよ?」

「いや、俺はお前なんかいらん。」


そういう俺に、ガーンとなっている。

これで諦めてくれるかな。というか、本当にさっさと帰ってくれないか。

そろそろ、ヒイロが復活してくるんじゃ?

ちらりとヒイロに目線を向けると既に復活して、ドヤ顔をするヒイロがそこに立っていた。


「ふ、ふふふふふ!貴方は用済み見たいですよ?さっさとお帰りになられたらどうです?」

「なんだとっっ!!?」

「さぁ、主様。こんなやつほっといて行きましょうか!」


不機嫌オーラはどこに行ったのか、満面の笑みである。というか、


「お前も帰らなくていいのか?」

「………………………へ?」


あれ?この顔どっかで見たような。

捨てられた子犬のような困惑したような、デジャブか。


「え、あ、え???」

「ふ、ふははははは!お前もどうやら、用済みのようだな!!」


何故か犬猿の仲のようだが、知り合いなのかな?


そんな事を思いながら俺は現実逃避することにした。

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