◆第三条 チヨダク王国は、みんな仲良し楽しい王国になることを誓う その2

「チヨダク王国は、ここチヨダクを首都とする、ニホンの関東くらいの大きさの国! ファンタジー異世界の大きな大陸の中にありますわぁ」


「昔、ニホンのモノを持ってくる魔法が使えるようになって、この世界にはニホンのモノが溢れているんですの」


「はるかに進んだ文明のモノのおかげで、いわゆる中世ヨーロッパレベルだったこの世界は、一気に豊かになったんですのよ! だからみんなニホンのことが大好き!」


 ──車中。俺と姉は、王女がカンペを見ながらしてくれる説明を聞いていた。

「どこも日本的だ」

 車窓から外を見る。道路、建物、車……あちこちに、日本のモノが溢れていた。

「国ぐるみで、窃盗、遺失物横領してるってこと?」と、姉が言う。

「持ってきたモノは元のニホンにそのまま残っていますの。ですからニホンの方にご迷惑ゼロ! ぜんぶコピーなのですわ。この魔法を、【コピペ魔法】と呼んでいますの。使えるのは王家だけ。チヨダク内ではわたくしのみ。きちんと管理しているのですわ」

「魔法、か……剣とかはあんま使わないの?」

 いわゆる『剣と魔法のファンタジー』の剣の方が気になった。

「滅多に使いませんわぁ! だって銃刀法じゆーとーほーに反しますもの! コンプライアンスぅ~!」

 どこからツッコめばいいのか……迷っているうちに、キキッ、と車は止まった。

「着きましたわぁっ!」

 デデン、と巨大な王宮の前に立つ。

「ここに王宮があることに、複雑な気持ちになるよ」

「【コピペ魔法】は、その空間を綺麗にしないと使えないんですの。魔法学者が言うには、泡宇宙的並列世界間の、地形的相似関係から、物体の干渉作用が認められる……だそうでっ! なにもない空間なら、地形的にリンクするものをコピペできますの。ここには古くから王宮があって、ジャマで……いったん更地にすれば、コピペできますのに」

「立派な王宮だからこのままが良いと思うよ」

「アクト様が、そうおっしゃるなら! 今のハウスを大事にしますわぁ~」

 王女とメイド長のとうシロに続いて、王宮おうじよのいえの中に入っていく。

 内部は、増改築を繰り返したようで、いびつな階段があちこちに伸びている、不思議な空間をしていた。

「あっくん。これ、建築基準法違反よ」

「ツカ姉、しばらく法的なツッコミ控えて」話が進まないから。

 絨毯敷きの廊下を歩くと……『歴代国王陛下』という肖像画が並んでいるのが眼に入った。何百年と絵画だったのが、『先王』からカラー写真、『現 ☆ 王』のところは、王女が指で作ったハートマークを突き出すポーズをしたでかいプリクラになっていた。

「先代の王様から、急に文明開化したみたいだなぁ」

「お父様は、天才的な魔法使いでしたの! これまでは、異世界ニホンに対してしつこく欲しいモノを叫んで土下座して、いくつかモノが降ってくるというコピペ法だったのを、魔法陣の技術を応用して、地域一帯の大規模コピペもできるようにしたのですわ!」

「お父様は、今どちらに?」

「父は、過労で亡くなりましたわ」

「そう……ごめんなさい。大変なお仕事だよね」

「いえ。エロゲというものにハマったみたいで。わたくしには『ゲームは一日一時間までな』とルールを決めたのに、自分は夜通しやってテクノブレイクぅ?というので亡くなったようですわ」

「……」なんも言えない。

「それからわたくしが即位して、一年。ほんとは女王なんですけれど、まだまだ未熟でして、王女と名乗ってますの! ささ、お部屋にいらして!」

 ウィーン……とやってきた魔法のエレベーターに、四人で乗った。

 一気に、地上高く、浮くように──王女の部屋、塔の尖端の小部屋へとたどり着く。

 ディ●ニープリンセスが住んでそうな、ピンクでファンシーなお部屋だ。

 なのに、窓から見えるのは日本的なビル群だった。

「毎日、お日様に照らされるニホンの光景を眺めたくて、トーキョー駅や、カスミガセキの周辺はぜんぶコピペしましたの!」

 広がる展望は、日本の千代田区と見紛うところがある。自分たちが召喚された最高裁判所の建物はもちろん、王宮の周辺は千代田区とそっくりだ。

 が、そんな光景の中にもファンタジーなものはある。

 空を飛び交うのは、郵便配達のバッグを持った鳥人に、数匹の翼竜。

 ビルの合間、東の方角には、ファンタジー世界らしい草原が広がっているのも見えた。

「どうぞ、お召し上がりくださいませ。ホンモノのコピペ品でお作りしました」

 とは、いつの間にか、食事の用意をしていたメイド長。

 部屋の真ん中にあるちゃぶ台の上に、膳を置いていた。

 俺と姉はお客様用座布団に座り、膳の上のお握りとお味噌汁をいただくことにする。

「ありがとう……ん……普通に、馴染みある味だね」

「あっくんが飲むなら……ずずっ……美味しいわ」

 コピペしたモノは、ホンモノと変わらないことがよくわかる。

「……あのさ。もしかして、お姉ちゃんたちも、コピーだったり?」

 ──姉の言うように、その可能性だってある。

 自分がSF映画のクローン人間みたいに思えてきて、ちょっと怖い。

 戸惑っている姉……ここは俺が率先して、確認しよう。

「あの、王女。早速だけど、召喚魔法について教えてもらえるかな」

「はいですわ! 【召喚魔法】は、【コピペ魔法】と違う別の魔法ですわ。別の世界から生命体を転移させる魔法でして、喚ばれた方はホンモノそのものですわぁ!」

「良かった」一安心ではあるが、「ツカ姉の身体が若返ってるのは?」疑問は残る。

「チヨダク王国にいらしてくれるお礼のつもりで、いわゆる【転移ボーナス】を魔法陣に組み込んでみましたの! 願い、呟き、イメージした特異体質を授けたのですわぁ!」

 確かに、姉は『十五の時に戻りたい』と呟いていた。その結果こうなったのか。

「ツカ姉、願いが叶って良かったね。普通の女の子としてリスタートもアリじゃない?」

「頼もしいあっくん……じゅんっ……お姉ちゃん裁判とあっくんさえあればいいよ」

「うん。そこ、変わんないね」

「アクト様は、どんなのを身につけましたの?」

「うーん……特に変化ないなぁ」

(もしかして、車に乗る前の【アレ】かもしれない)

 と思いつつも、確証がない。もう少し様子を見てからにしよう。

「ところで……元の世界に戻れるの?」

「召喚魔法の成功例自体、数百年前が最後で、データがありませんの。何度も魔法陣を描いた上での成功で、どれがどう発動して成功したかもわかりませんし……なにぶん初めてのことですので、帰る方法はまったくわかりませんわぁ!」

 あの法壇のあたり一面に描かれていた魔法陣か……グチャグチャだったしな。

(日本に帰れるかどうかはわからない、か)

 脳裏によぎったのは実の親と、義理の親の顔。でも、長期海外旅行ハネムーン中だし、すぐには心配しないだろう。他は、学校の友人たちは……まあ、しょうがない。

 それより、目の前の一風変わったファンタジー異世界を楽しみたい気持ちが勝る。

 あとは、姉の気持ちは、どうだろうか。

「帰らないと困るんですの? わたくし、被召喚者の設定を、『ファンタジー異世界を正しく裁いてくれるニホン人』にしていましたの。だから、元の世界よりもこっちの世界を選ぶ裁判官様がくるものだと思っていましたわ」

 王女の言葉を聞きながら、俺を見てから、姉はうつむき、

「……帰っても、裁判の現場から外される。あっくんもいるし、別の世界でも、裁判ができるのなら、いいのかも……」とブツブツ呟いている。

「そういえば、被召喚者の設定って、一人だけじゃなかったの?」

「人数は必要な数にしましたの。きっと、お姉様と、弟様とで、正しい裁きに必要な人員なんですわぁ!」

「そうか……じゃあ俺は、ファンタジーな世界に不慣れな姉を助ける役割なのかもな」

 ピンクのメイド服の王女は、相変わらず楽しげで、口のかたちを『ヮ』にしている。俺たちの隣、座布団の上に座って、

「ウフフっ。この世界で初めての、ホンモノのニホン人様。一挙にお二人もいらして、とっても嬉しいんですのよ!」

 ちゃぶ台の上に肘をついて、ニコニコと天真爛漫に微笑んだ。

「ぜひ、裁判の件が落ち着いたら、一緒にアニメ見て、ご感想言い合いましょうね!」

 王女の部屋は、見渡すと、日本アニメのVHSや、ディスクが大量に積まれている。

 この服装といい、アニメで日本文化を学んできたみたいだ。

「……ちょっと待ちなさい、王女。裁判の件ってなによ。まだなにも請け負ってないわ」

「ツカ姉、さっき裁判する気になってたじゃん」

「ここ、ファンタジーな国なんでしょ。日本の法律使えないんじゃ、」

「だいじょーぶですわぁ!」

 王女は座布団の脇にあった雑誌『アニ●ージュ』をめくりながら言う。

「もう何十年も前からニホン法、ニホンルールを施行済みですの。お父様がぜんぶ法整備というのをしてくれたのですわ」

「法律が施行されているんだったら、さっきの裁判はいったいなに? 嘘発見のオーヴなんてヘンなもの使ってたでしょ」

「う、うぅん……裁判の難しいお話になると、わたくし……」

「難しいって、あなた裁判官席にいたわ。裁判してたんじゃないの」

「それは……うなので……ぁ……」

 王女の動きがどんどん鈍くなってきた。

「そもそも王家があるなんて……象徴として? 三権分立は? 法治主義と人治主義の区別はついているの? 裁判官はどう選ぶの? 検察官と弁護士はいる?」

「………………」

 様子がヘンだ。開き気味の口が閉じてハイフンみたいな線になり、眼から光が消えた。

「待って、ツカ姉! 王女が、」

 座って、雑誌をめくる姿勢で、眼を開けたまま、

「寝てる……!」

 安らかな寝息を立てていた。

「え,嘘」と姉が絶句し、「あんた起きなさいよ話の途中でしょ!」と揺するも。

「スヤヤァ」

 ダメそうだ。

「エクスタシア様は、楽しくなくなると眠りに落ちてしまうのです」

 ずっと脇に控えている、メイド長の加藤シロがフォローに入る。

「この国の裁判などの話は、他の家臣が行います。今、こちらに向かっておりますので、少々お待ちください」

 俺と姉は、王女の寝てるらしい眼を開けたままの顔を見ながら、しばらく待った。

 ──ウィィィン、と、魔法のエレベーターが開いて。

「お話に遅れ、申し訳ありません! 大法廷の後片付けに手間取りまして!」

 やってきたのは、スーツ風の衣装にメガネをかけた、エルフ耳の家臣だった。

「これはこれはおジャッジ様に、アクト様……本日はお日柄も良く……たははっ!」

 媚びへつらうような笑みをこちらに向けている。その声に起きた王女が言う。

「あらためてご紹介しますわぁ! こちら、王宮府の重臣にして、検察官──」

「ハーフエルフの、氏はさいとう、名をイレアナと申します。以後、お見知りおきを」

 俺と姉に向かって、絨毯に三つ指ついて、過剰なほどに日本的な挨拶をした。

 その容姿は……動きのない場所であらためて見てみると、相当な美形だ。俺より少し背が高い。モデルのようなスタイルに、流れるような金髪の長髪はポニーテール。メガネの奥には翡翠をはめたような緑の眼。エルフという種族は、美形が定番だけれど──

「純血のエルフじゃなくて、ハーフなんだ」思わず感想を口にする。

「プッ! 純血ぅ? あやつらは、森に引き籠もる寿命が長いだけの老・害・凡・俗! ワタシは、ダサい故郷を捨てクールなこの地に参りました! チヨダク王国通販で手に入れたライトノベル『ロー●ス島戦記』を読んでから、ニホン文化カルチヤーにガチハマりのぞっこんですっ。先王様、エクスタシア様に仕え、王国のニホン化を──」

 熱量がヤバい。美形を全力でかなぐり捨てる、日本オタクだったとは……。

「イレアナ、チヨダク王国の裁判についてご説明よろですわ!」

「はっ! おほん。年々、この世界はニホンのモノが溢れるにつれ、王国の暮らしぶりもニホンに近づいてまいりました。それにともない、昔ならばなかったようなヘンな事件が増えまして。優れたモノを授けてくれたニホン人様がお作りになられた、優れたニホン法、ニホンのルールを施行すれば間違いない、と……先王様がご判断なされたのです」

 彼女の年齢は、二十代中頃か……王女とは違う説明ぶりに、俺と姉は聞き入った。

「しかし、我々にはニホンの法もニホンのルールも難しすぎて、うまく使えませんでした。かといって、それ以上の法、ルールを立法するのも至難でした。そこで、人々にニホンの価値観やモラルを浸透させつつ、各地域の役人の手に負えない事件は王宮府が【嘘発見のオーヴ】を用いて裁くことで、人々からの信頼を稼ぎ、国家を統制していたのです」

「ああ……それが、ムジュンを起こして、あの裁判が停滞していたわけか」

 と、俺が大法廷の有様を思い出しながら納得するも、

「あなた、裁判官席にいたわよね」姉の裁判的なツッコミが始まった。

「ギクッ!」イレアナは、長い耳をばたつかせた。

「べ、弁解のしようはありません……エクスタシア様は、チヨダクで最も民からの信頼が厚き方。よって、神器【裁きの欠片】の所持者をエクスタシア様としつつ、実質的な裁判の運びは、司法試験合格者のワタシが行っていたのです」

(神器【裁きの欠片】……)

 マジックアイテムみたいな響きを感じる。

 魔法マジツクといえば、あの宙に浮いていた天秤だ。

 なにか関係があるのか──と、俺が思っている間に、

「司法試験って、司法試験委員会あるの?」

 姉が別の角度から質問をしていく。

「ありません。主に過去問からランダムに出題し、マークシートのみで実施しました」

「それって暗記すれば満点よね。司法修習とか、法曹三者の選択は?」

「しゅ、修習は無く、一定の点数をとれば、弁護士か検察官に登録できるしくみです。試験の一位合格者を裁判官にしようとしていたのですが、トラブルがあり……」

 緊張からか、ビクンビクン、と耳を震わせながら回答している、イレアナ。

「ツカ姉、異世界の人がニホンの法律を勉強してくれてるって、すごいことなんだよ。もっと態度を優しくしたらどう?」

「おぉ……アクト様、お口添え、痛み入ります! どうぞよろしくお願いいたします!」

「うーん……でもね……」唸る姉。「あなたが、検察官、ねえ……」

「そうですとも! この、光り輝くバッジをご覧くださいっ!」

 検察官イレアナは、襟元に隠れていた自分のバッジをもいで、姉に寄越した。

「『JOB 検察官』である証! 秋霜烈日章!」

 確かにそれは、テレビドラマなどで見たことのある、検察官バッジだった。

「このワタシと、ホンモノのおジャッジ様さえいれば! 我が王国の裁判は、【裁きの魔法】は、安泰ですっ!」

 その調子の良い言葉に──

 カチリ、と、姉がオンモードに移った気配がした。

「耳長。その眼にはなにが映っている?」

「は、……と、言いますと?」

「大法廷の時から、手のひらを返したようなその態度。その契機としてあなたが見たのは、裁判所の職員証明書のみ。そんなうわべの情報で、私をおジャッジ様だと崇め、日本のモノなら良いものだと妄信する。そのような浅い考え、勘違いとしかいいようがない」

「あ、あわあわ……」

「まあまあ、ツカ姉。裁判仲間じゃん。もっと仲良く、」

「判検交流は、昔の話よ。今は、検察官と裁判官が飲み会したのをSNSにあげたら炎上する時代なの。悪いけど、裁判に関して、お姉ちゃんは絶対に馴れ合う気はないわ」

 固い決意で言い切り、姉は立ち上がった。

「検察官である証は、バッジではない。検察の正義を胸に、日々国民のために、社会正義を実現する、その信念にあるのではないのか」

「ははーっ! そ、その通りで……おジャッジさ、」

「ひれ伏すのではなく! 立ちなさい!」と姉はイレアナの腕を取り、

「はひっ!」直立不動となるイレアナ。

「裁判官は、検察官の上司ではない! 推定無罪の原則に立ち向かい、裁判官を説き伏せるのが検察だ。二度と、裁判官に、みじめったらしい頭の下げ方をするなッ!」

 ──姉の威勢の良い喝が木霊し……

「……い、今まで……そんなに、熱く……言ってくれなかった……」

 聞こえてきたのは、嗚咽だった。

「ずっと……誰も……ワタシを……ちゃんと……叱ってくれなかったぁっ……」

 ハーフエルフは、プルプルと震え、そのメガネの奥から涙を漏らしはじめた。

「ずっと……王国のために頑張ってきて……でも、空回りしてるって……ひぐっ……なんか違うって……思ってたんです……」

「自信がなくても、自分の課題を他人任せにしてはならない。他人を信じる前に、まず自分を信じろ。間違ったとしてもいい。耳長、あなたは若い。間違うことを恐れずに、自分の感覚で、事件に立ち向かって。全力を尽くせば、必ず道は開けるわ」

「──なんとありがたきご指導っ……ワタシは、まだまだ、ヤングですっ!」

「今日は平日……検察のお仕事、休んでていいのかしら?」

「おジャッジ様に認めてもらうため──なにか犯罪、探してきますっ!」

 自分を奮い立たせるように叫ぶと、彼女は駆けた。

「ちょっと耳長、検察官バッジは、」姉の手の中に置かれたままだ。

「ワタシがぁぁぁ一人前になった時ぃぃぃ授けてくださいぃ──」

 検察官は、はりきって、魔法のエレベーターに乗って去って行った。

「さすがおジャッジ様ですわぁ! 馴れ合わない孤高のお姿! 熱いリーダーシップ! 王国うちの新しい英雄! 好き!」

「あんな会話選択で良かったのか……」

 ファンタジー異世界序盤の会話とは思えなかったんだけど。

 もう、法律的な話や、職業的なお話は、姉を信じよう。

「ねえあっくん。つい発破かけちゃったけど……この国、不安。ほんとに現代日本の法やルールを使って良いと思う?」

 姉から、この国で裁判をしたい気持ちと、本当に裁判して良いのかという疑念との、ジレンマを感じる。

(この世界をゲームではなく、一つの社会として捉えた、当然の反応だ。でも……)

 俺としては、日本のモノが溢れる王女の部屋で、王女の話を聴いて……日本人として、この国に興味を持ち、できることをしてあげたい気持ちになっていた。

「普通、被召喚者って、その固有のスキルで活躍していくものだから……」

 と、ゲーム的感覚で言いながらも、

「でも、裁判していいかどうかは……どうだろう……前例がなくて、ピンとこない……」

 強力なスキルで魔物を退治する、とかなら、簡単だ、わかる。

 でも、日本の裁判ってやっていいのか?

「エクスタシア様。お二方が、困惑していらっしゃいます」

「もう夜ですし、このへんで、リラックスタイムにいたしましょう~」ピンクな王女が、楽しげに言う。「うちの『別荘』には『温泉』がありますのっ」

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