茶飯事
「遅刻遅刻ぅ!!!」
僕はマスクのせいで食パンをくわえることができないので、仕方なく手に持って急いで学校に向かった。遅刻寸前なのは前日の夜中10時頃からゲームをしていたせいだ。寝る前の時間をゲームの時間にし始めてから、9ヶ月。どうやら努力じゃショートスリーパーにはなれないらしい。
「よし!!!なんとか、電車には間に合った。」
学校は8時からだから、この調子ならギリギリで間に合うだろう。電車に飛び乗り、そのままスマートフォンの電源を入れる。7件も通知がきている。
まずはインスタのストーリー更新の通知だ。
「今日も〇〇はかわいいなぁ。」
推しのインスタは即座にフォロー。通知を入れるのは基本だろう。去年の6月頃にあった梅雨のイベントからすっかりハマってしまって、それ以降SNSを食い入るようにチェックしている。
次はLINEの返信だ。
「あいつ、またあの写真を…!」
クラスメイトから送られてきた自分の事故画、いつまでそのネタを引っ張るんだと内心少し腹を立てつつ、それでも僕はwキーを連打して返信をする。
「お、あの子からも返信きてる!」
僕の気になっている女の子だ。いつも一日に一回しか返信がこなくて、なかなか話せていないけど…。それでもかれこれしつこくLINEを続けて5ヶ月くらいだ。
と、ここで目覚まし時計の通知だ。
「音オフにしてたから良かったけど…。」
毎日アラームをセットしているにも関わらず、一向に目が覚めないのはなぜだろうと、我ながら自分の熟睡度には驚きながらも、通知を4件消していく。
そしてゲームのスタミナ回復の通知だ。
「やばい、今日の3時からもうイベント来てたんだっけか!?」
初日からイベを走ろうなんて意気込んでいたのにも関わらず2時くらいで寝落ちしていたせいで、結局こんな中途半端な時間からの参加になってしまった。
「もうこりゃ、上位は狙えないだろうなぁ。」
どうやら後1駅で学校の最寄り駅に着くらしく、アナウンスが微かに聞こえてくる。眠いせいで意識が遠いからだろうか。なんだか周りがいつもより静かな気がする。
また通知だ。いや通知なのか?これはいつもの通知なのだろうか。スマートフォンが鳴り止まなかった。通知が何件も何件も来る。インスタ、LINE、ニュースあらゆる媒体からの通知が鳴り止まない。
「な、なんだ!?!?」
振動のせいか、驚いたせいか、スマホが手から滑り落ちパリンと音を立てて割れた。
「あぁ!!スマホ壊れたああ!!」
悲痛の声をあげながらしゃがもうとすると、世界は滅亡していた。
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