おうち時間のわんこの風船

アほリ

おうち時間のわんこの風船

 今日はシーズー犬のまめたろうは、家の中。


 飼い主の由美子さんは、新型ウイルスの緊急事態宣言中の外出自粛中。

 毎日の散歩する数も少なくなり、余り好きな外へ連れていってくれない。


 「外はこんなに晴れてるのに、何であーひまひまひまひまひまひま!!

 ご主人様!!外に行こうよ!!散歩したーい!!散歩!!散歩!!散歩!!散歩!!」



 キャンキャンキャンキャン!!



 ・・・あっ・・・!!


 シーズーのまめたろうは、肝心な事を思い出した。


 ・・・今、ご主人様はあの部屋で仕事してるから、静にしてね!って言い聞かせられるんだっけ・・・?!


 そうなのだ。


 シーズーのまめたろうの飼い主の由美子は、ここ最近は部屋の中でテレワーク中なのだ。


 無闇に吠えたり音を立てたら、ご主人様の仕事に支障をきたして怒られる。


 この前も廊下を駆けて思わずズッコケた音で飼い主の由美子に、

 「『め』でしょ!!」

 と怒られて、大好きなドッグフードをお預けされた事を思い出した。


 「あーひまひまひまひまひまひまだワン!!」 


 シーズー犬のまめたろうは、部屋中の部屋から部屋へウロウロと散策した。


 「何かないかなあ?暇潰しになるような面白い事は?」


 シーズー犬のまめたろうは、飼い主の由美子の子供の海斗君の子供部屋にやって来ていた。


 「何か面白いオモチャないかなあ・・・」


 シーズー犬のまめたろうは、海斗君のオモチャ箱に顔を突っ込んでごちゃごちゃと掻き回して、品定めしていた。


 「ミニカーとか汽車のオモチャは転がしたら、コケてまた音が鳴るし、ラッパを吹いたそれこそ大目玉だし、変身ベルトを鳴らしたら論外だし・・・」



 ごちゃごちゃごちゃごちゃごちゃごちゃごちゃごちゃごちゃごちゃ・・・



 「ん?」


 シーズーのまめたろうは、口に柔らかい物を探り当てた。


 鼻でその柔らかい物をクンカクンカと嗅いだ。


 「これは・・・?」


 シーズーのまめたろうは、その柔らかいものをくわえオモチャ箱から引っ張り出そうとした。


 

 びょーーーーん!!



 「やばっ!!これ伸びる!!何かに引っ掛かって取れない!!」



 ぱちん!!



 「うわっ!!」



 どてっ!!



 突然、柔らかい物が弾けてオモチャ箱の前で尻餅をついた。


 シーズーのまめたろうは青ざめて辺りを振り向いて鼻を辺りをクンカクンカと嗅いでだ。


 「ふぅ~・・・ご主人様に気付かれてない。よかった・・・」


 シーズーのまめたろうは、その柔らかいものを調べてみた。


 「ゴム風船だ。まだ膨らませてないやつ。」


 シーズーのまめたろうは思い出した。


 それは、だいぶまえに海斗が飼い主の由美子と一緒に買い物に行った時に景品で貰った、パンチボールのゴム風船だった。


 「海斗君は、僕の前で一生懸命にシュッシュッと空気入れで膨らませて、ぽんぽんぽーーーん!!と手に輪ゴムで弾いて遊んだっけ。

 あれ、面白かったな。

 ぽんぽんぽーーーん!!

 最後には、僕が牙剥いて噛みついてパーーーンしちゃったけど。

 本当にドデカイパンク音だったな。

 あれは不味かったな。海斗君泣かせちゃたし。」


 シーズーのまめたろうは、ある衝動にかられた。


 「まさか、このパンチボールがもう一個あるなんてね。

 待てよ?これ、膨らませてぽーんぽんぽーーんしたいなあ。」


 シーズーのまめたろうは、部屋中に空気入れを探した。


 「あれ?あれあれあれ????空気入れないなあ。

 ご主人様に聞かなきゃ・・・って、ご主人様は大事な仕事中だし。」


 シーズーのまめたろうは、ふーっ・・・と深いため息をついた。


 「そうだ。空気入れが無ければ、口で?僕の息でこのでっかい風船を膨らます?

 海斗君だって、口で膨らましてる途中で息があがってギブアップして空気入れでふくらましたんだぜ?

 ・・・って、膨らましてみる?一度僕の口で膨らましてみるかぁ!!」


 シーズーのまめたろうは、深く深く息を吸い込むと、萎んだパンチボールのゴム風船の吹き口を咥えて思いっきり吐息を吹き込んだ。

 

 ぷぅ~~~~~~~~~~!!


 ぷぅ~~~~~~~~~~!!


 ぷぅ~~~~~~~~~~!!


 ぷぅ~~~~~~~~~~!!



 シーズーのまめたろうは、頬っぺたをパンパンに孕ませ顔を真っ赤にして一生懸命にパンチボールのゴム風船に息を吹き込んで一心不乱に膨らませた。



 ぷぅ~~~~~~~~!!


 ぷぅ~~~~~~~~!!


 ぷぅ~~~~~~~~!!



 「あーーー!!息が続かないっ!!ギブアップ!!」



 やっぱり、自分の身体よりひとまわり大きなパンチボール風船を口で膨らますのは無理だと悟ったシーズーのまめたろうは、口からパンチボールの吹き口を放した。



 ぷしゅ~~~~~~~~~~~ぶぉぉぉぉーーーーーしゅるしゅるしゅる!!



 パンチボールの風船は、シーズーのまめたろうの吐息を吹き口から吹き出して右往左往に部屋中にくるくる回って吹っ飛んでいった。


 「うわー!!面白い!!また膨らまそう!!」


 シーズーのまめたろうは、また萎んだパンチボールの風船の吹き口をくわえて、ぷぅ~~~~~~~!!ぷぅ~~~~~~!!と息を入れて膨らましては、吹き口を放して風船を部屋中に飛ばして、その様にシーズーのまめたろうは腹を抱えて笑い転げて遊んだ。


 「あれ?こんなとこに、風船の束。」


 それは、いつぞやの海斗が誕生日の日の飾り付けに使ったゴム風船の余りだった。


 シーズーのまめたろうが、パンチボール風船をオモチャ箱から引っ張り出す時に一緒に飛び出してきたのであろう。


 「これなら、僕でも口で膨らませられるぞ!!」


 シーズーのまめたろうは早速、その風船の束からひとつ取り出すと風船の吹き口をくわえて、思いっきり息を吹き込んで膨らませた。



 ぷぅ~~~~~~~~~!!


 ぷぅ~~~~~~~~~!!


 ぷぅ~~~~~~~~~!!


 ぷぅ~~~~~~~~~!!



 「この位膨らめばいいかな?」


 シーズーのまめたろうは、大きく膨らませたゴム風船の吹き口を爪でキュッと縛ると、鼻でぽーんと突き、


 ぽーん!ぽーん!ぽーん!ぽーん!ぽーん!と、ジャンプして鼻で風船を突いて遊んだ。




 ぽーん!ぽーん!ぽーん!ぽーん!ぽーん!ぽーん!ぽーん!ぽーん!ぽーん!、ぽーん!ぽーん!ぽーん!ぽーん!



 シーズーのまめたろうが、自らの吐息が詰まった黄色いゴム風船を鼻で突く度に、ぽーん!と反動でふわふわと宙に舞い、

 ふわふわと降りてくる黄色い風船にまた鼻で突いて飛ばす。


 ・・・愉しいっ!!愉しいっ!!愉しいっ!!愉しいっ!!・・・


 シーズーのまめたろうは、思いっきり運動したせいか、舌を垂らしてハッハッハッと息をして体温調整をした。


 丁度、鼻を高く突き上げて飛ばした風船がふわふわと降りてきた。


 「さあ、突くぞ!よいしょっと!!」



 ぱぁーーーーーーーーん!!



 ・・・やばっ・・・!!



 シーズーのまめたろうの顔が青ざめた。


 体温調整の体制のまま口を開き、降りてきた風船がシーズーのまめたろうの鋭い牙に触れてパンクしてしまったのだ。


 はらり、はらりと降りてくる割れた風船の破片。


 「ど、どどどどど・・・どうしよう!!

 仕事中のご主人様の邪魔しちゃった!!

 これはご飯お預けどころじゃないよ?!」


 シーズーのまめたろうは、慌てて風船を海斗のオモチャ箱にしまった。



 じす、じす、じす、じす・・・



 「やば!ご主人様に見つかった!くわばらくわばら・・・」


 「ただいまー。」


 子供部屋に来たのは、マスク姿の海斗だった。


 海斗が小学校から帰ってきたのだ。


 ・・・やばい!マジでやばい!オモチャ箱から風船を勝手に引き出して遊んだ事がバレたら・・・!!


 「ほーら!まめたろう!!よしよしよし!!元気だった?

 あれ?」


 海斗は、オモチャ箱の縁に垂れ下がった割れた風船の破片と膨らまし癖の付いて皺のよった萎んだパンチボール風船を見つけた。


 「ははーん。まめたろう。俺の居ない間、

風船であそんでたね。」


 ・・・ご名答・・・


 シーズーのまめたろうは冷や汗をかいた。


 「よし!まめたろう。一緒に風船で遊ぼうか。宿題おわってからな!!」


 「くう~ん?!」


 その後、海斗はしゅっ!しゅっ!しゅっ!しゅっ!とポンプでパンチボール風船や束の風船に空気をいれて膨らまし、部屋を風船だらけにしてシーズーのまめたろうと一緒に部屋いっぱいの風船を突いたり飛ばしたり割ったりして遊んだ。


 「海斗、お帰り。まあ!!」


 テレワーク仕事の手を休めて海斗の部屋にやってきた由美子は、部屋いっぱいの風船にまみれた海斗とまめたろうに驚いた。


 「ママ!仕事終わった?」


 「きゃん!きゃん!」


 シーズーのまめたろうは、部屋に敷き詰められた風船の中から飛び出して、由美子の足に抱きついてきてキャンキャンと目を輝かせてハッハッハッハッと舌を出して跳び跳ねた。


 「うわー!風船だけ!よかったねまめたろう!ママも一緒に遊ぼうか。まめたろう!」


 「きゃん!きゃん!」


 おうち時間、一時の2人と1匹の風船パーティー。






 ~fin~

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