4-4 調査・2
「これ、まさか?」
「見間違いでは無いでしょう。多分。」
「本当にこいつら、邪教で秘密なの?随分とこう、バッタリ会う事多くなーい?」
「多い、ですねぇ。」
この紋章が何を指し示しているかは容易に理解出来た。レストには忘れようのない紋章である。
アレイトス教。
何のためかはわからないが、謎の力が込められた宝玉を求めており、そのためならば殺戮も厭わないと思われる、謎の邪教。
先日セント・マネドールが商売しようとしていた相手である。
そして、確定したわけではないが、レストやカーネリアの両親、そして家宝を奪った犯人が属しているかもしれない。
「偶然かどうかはさておき……。随分と因縁ができてしまったのは事実ですね。今回の殺人に何か関係しているのかは分かりませんけれど。」
「どーせ犯人はこいつらの誰かじゃないの?」
シェルフが吐き捨てるように言った。
「そういう決めつけはよろしく無いので。今は何か関係があるかも、くらいに考えておきましょう。それより、他に……。おっ?」
レストはさらに荷物をごそごそと漁る。すると何かを見つけたのか、動きを止めると、鞄の中から何かを取り出した。
「手紙ね。んーと、『分かった。依頼されていた金は四日後の夜に持っていく。当日ドアを開けておいてくれ。』……何のこっちゃ。」
手紙を覗きながらシェルフが言った。
極めて丁寧に書かれたものである事が伺えた。どの文字もカクカクと直線かのように綺麗に書かれている。どれだけの時間をかければこんなに綺麗に書けるのだろうかと思ってしまう。
そしてレストは、その内容についても考えを巡らせた。
「……これはなんでしょう。スオードさんに宛てた手紙、ですか。依頼、金。なんでしょう。」
「みたいですわね。」
「殺人が起きたのは夜でしたね。この手紙の主が指定したのも夜。もしかすると、この手紙の主が犯人かもしれませんね。」
「おっ、結構な進展じゃん。」
「でもこの手紙には……、と、あれ、指紋がついてる。」
「おお、では楽ですね?」
「いや、僕も会った事無い人なので、誰かの指紋がついている事は分かっても、これが誰なのかはまだ分からないですね。」
「逆に申せば、それを探せばいいという事ですか。」
「まぁ、はい。漠然と探すよりは大分楽になったなとは思いますけどね。」
「んじゃどうする?」
この後はどうやって調べていくのか、そういう意味を含んだシェルフの問いに、レストはしばし目を閉じて考えた後、口を開いた。
「んー、この人は冒険者なわけですから、ギルドで情報収集が必要ですね。」
「で?なんで
「しょーがないっしょ。あの人、死んだ事になってんっしょ?ギルド的には。顔見られたらバレちゃうじゃん。」
カーネリアとシェルフが冒険者ギルドの前で言葉を交わす。
二人はレストに依頼され、ギルドでの情報収集を行う事となった。レスト自身は現場や周辺での聞き込みを担当している。
二人とも興味本位九割でレストの後に着いてきたので、まさか自分達がこのような仕事を請け負う事になるとは思わず、少々不満を抱いていた。
しかし二人も渋々ではあるが承諾した。
カーネリアは乗り掛かった船からは降りたくない性格であった。それがどんな儲け話に繋がるか分からないからであるのと、同時に、儲け話で無かったとしても途中で降りるとそれはそれで利益を全く拾えないからであった。
彼女は知らない、それがレストの元いた世界では「コンコルド錯誤」と呼ぶことを。
他方シェルフは、死者の弔いのためにも彼が何故死んだのかを突き止めたいという、真っ直ぐな思い故にであった。
「とっとと終わらせましょう。」
「さんせー。」
ある種正反対な思惑を抱きながら、二人はギルドの中へと入っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます