3-11 探偵

「協力感謝致します。」


 鎧を見に纏った白髪の女性、騎士団長のレヴィ・トゥイーナが、レスト達から事情を聞いて頭を下げた。


「火事については今から本格的な調査をと思っていたのですが、まさかこんな早く解決するとは。本来なら我々がやるところ、お手を煩わせてしまった事は申し訳ありませんが。」


「いえ、僕達が好きでやった事ですから。」


「私に出来る事であれば何か報酬というか、何かしらのお礼をしたいところですが……。」


「では、その宝玉を貸して頂けませんか。」


 レストが言うと、レヴィは困ったような顔をした。


「うーん、これは証拠品ですので。」


「全部終わったらでいいです。売ったりはしません。」


 カーネリアが「えっ」という声をあげたが、レストは無視した。


「今僕達は歴史の調査をしていて、宝玉がこの国の成立に関わっているのではないか、という説を聞いた事があるのです。出来ればその調査のためにそれを使わせて頂きたいと思いまして。」


「ふむ、そういう事でしたら、分かりましたとは今すぐには言えませんが、調整はしてみます。」


「ありがとうございます。」


「サンキューね。」


「では、私はこれで。改めてありがとうございました。」


 レヴィはそう言うと、「これで終わったと思うな!!」などと叫ぶセントを引き摺って奥へと連れて行った。


 手錠てじょうはスキルで手の枷てのかせとして紐に変えてある。レヴィでも処理できるだろうとレストは考えた。


「これでまぁ、一件落着、ですか。」


「落着ではありませんわ。結局わたくしには一銭も入りませんでしたわよ。」


「金の問題じゃあないっしょ。ちゃんと真実を知れたんだし、それでいんじゃね?」


 シェルフが頭を掻きながら言ったが、カーネリアは納得していないようであった。


「むぐぐぐぐ。あの宝玉だけでも貰えれば……!!」


「商売相手が捕まったんですし、それで儲けは増えるでしょう。宝玉は、あの騎士の方に期待するとしましょう。」


「むぅん……。仕方ないですわね……。」


 カーネリアは唸りながらも観念したように手を挙げてそう言った。


「しかし、先程の推理はお見事でしたわ。」


 話題を変えるように彼女は言った。それは本心からのそれであった。


「本当ですか?」


「アタシもなかなかカッコ良かったと思うよ。うん。仕事に出来るんじゃない?」


「出来ますかね。」


 レストは照れ臭そうに頬を赤らめながら言った。


「でも、こういう、事件の解決とか推理を職業に出来るものなのでしょうか?」


 カーネリアの疑問に、レストは言った。


「まぁ、出来ないわけではないと思います。一応そういう職業も……どこかにはあると聞いた事がありますし。」


 まだこの世界にはそれを示す二つ名がない事をレストは知っていた。


「なんていう職業なのですか?」


 答えて良いか少し迷ったあと、彼は言った。



「えーと、探偵っていうらしいです。」

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