第4話 解読から始まる追及劇
4-1 解読
エルモット家焼失事件から一日後。
「むぐぁ。」
レスト・ウィーラー改めレスト・ピースフルは、頭を抱えて机に倒れ込んだ。
「んががががが、頭が痛い。」
『古代レジア語』と書かれた本が机に上に置いてある。
彼は以前図書館で回収した、シェルフ・レアードのスキルをもってしても
が、たった今挫折した所であった。
難しすぎた。文字が複雑で分かりにくい。その上、古い文書であるため、状態が悪く、所々が欠けている。
「ああ、解読機でも作りましょうかねぇ。」
周りを見渡してみるが、手頃なアイテムが見つからない。
と、彼の視界にあるものが写った。
「はぁーい。おひさー。つっても昨日ぶりだけど。」
そう言って入ってきたのはシェルフ・レアードであった。
「こんにちは。何か情報は?」
レストが問いかけた。彼女はセント・マネドールの事情聴取に立ち会うべく騎士団の元を訪問し、帰ってきたところであった。
彼女は手を肩の横で翳して首を横に振った。
「なーんもないわねー。犯行ってか事故に関しちゃ全面的に認めてるけど、アレイトス教に関しては黙秘。マネドール商会の本部じゃ例の紋章を見つけたらしくて、どうにも結構深い繋がりがあるっぽいってのはわかったみたいだけど。」
レストは肩を竦めた。
「はぁ。結局大きな前進は無しですか。」
「まね。で、そっちはどうよ。」
「一応、解読の方は出来そうです。これで。」
そう言ってレストはチカチカと光る箱を取り出した。
「なにそれ。」
「解読機です。スキルで作りました。」
「マジで?機ってなに?」
「まぁその、なんかすごい仕組みくらいに考えて下さい。詳しく説明すると難しいので。」
「へー、まーいいわ。アタシは謎が解ければそれで。」
シェルフは細かい事は気にしないタイプであった。
「んで、解読出来るならして見せてよ。」
シェルフの催促に、
「ちょっと待って下さいね。」
と言って解読機を起動させようとすると、
「ハロー、如何お過ごし?解読の方は順調ですの?あらシェルフさん。来ていらしたのですか。……んんん?」
カーネリアが扉を開けて入ってきた。入ってくるなり彼女は顔を顰めた。
「……何か違和感がありますわね。部屋の間取り変えました?」
その言葉に、レストは気不味そうに言った。
「えへへ……ちょっと解読機を作るのに色々と。」
レストが言葉を濁した事が気にかかり、シェルフが改めて周りを見渡すと、ある事に気づいた。
「ああああっ!!カウンターがない!!」
「あははは……その、
「あれ高かったんですわよ!?部屋の内装は意外と掛かるのですわ!!」
「後で戻しますから!!許して!!」
「そーよ。細かい事気にしちゃダメよお嬢様。」
「
興奮するカーネリアをまあまあと抑えながら、レストは解読機を使って本を読もうとした、その時。
「失礼致します。」
誰かがまた部屋に入ってきた。
段々レストは腹が立ってきた。行動を邪魔されるというのはなかなかにむかっ腹が立つものである。彼は基本的にそこまで心が狭いわけではなかったが、立て続けになると少々堪えるものがあった。
「今度は誰ですか。」
声色には若干の苛つきが乗ってしまった。
「取り込み中でしたか。失礼致しました。ですが事は急を要するものですから、ご了承頂きたい。」
そう言って声の主は頭を下げた。体が動くたびに、その身に纏った鎧がガシャリと音を立てた。
レストはその音で声の主に察しが付き、そして同時に顔が青ざめた。
「ああああああもうよくある間違いを失礼しましたごめんなさいレヴィさん!!」
ドアの前には騎士団長レヴィ・トゥイーナが立っていた。
「謝るのは
「いえいえ、その、気になさらず。」
解読機は横に起き、もてなしをしながらレストは言った。
態度が明らかに自分達と異なる事に、カーネリアとシェルフは若干の不満を隠せなかった。だが彼の考えも理解は出来るので、口にする事は無かった。
この国、レピア国において、最大の武力を有しているのが王立騎士団である。
冒険者が身銭を稼ぐ事が主体なのと違い、彼ら彼女らは国が掲げる正義を為すために日夜魔物と戦い続けている。
その信念の強さは戦闘力にも反映されており、二流冒険者は三流の騎士にも敵わないとさえ言われている。
そんな彼ら彼女らに逆らい、機嫌を損ねればどうなるか。火を見るよりも明らかというものであった。
だが一方で、当代の騎士団長である彼女、レヴィ・トゥイーナは人格者で知られていた。怒りを露わにする事は殆どなく、その怒りは国を脅かす者にのみ注がれると言われている。そのため、この程度の無礼ではまだ怒りを買う事はないだろう、とカーネリアは内心たかを括っていた。
「そ、それで、えっと、どのようなご用件でしょうか。」
差し出されたコーヒーを一口喉に通してから、レヴィは口を開いた。
「そちらのシェルフさんからお聞きしましたが、レストさんは探偵だそうで、なんでも謎を解くのに長けているとか。」
「……え?」
レストがシェルフの方を見ると、彼女が口を開いた。
「あのセントってのを捕まえた経緯とかをさー、話してたら誰がそんな色々やったの?って聞かれたんで、説明しちゃったんだけど、マズかった?悪りぃ悪りぃ。」
シェルフはバツの悪そうな顔で手を前に立てて頭を軽く、極めて軽く下げた。
レストは何も言えず、このままの流れに身を任せるしかないと腹を括った。
「…………えー、まぁ。」
「そこで貴方にお願いがあるのです。」
レストは心内で呟いた。嫌な予感がする、と。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます