刺さる青のガラスの花

@nozuki_miu

刺さる青のガラスの花

ある女性が社会に出たものの社内のイジメにより社会から引退するところから始まります。




家族は4人、ママとお母さんと姉と私。私は青藍せいらって呼ばれてる。


姉が食事を持ってきてくれてそれを食べる毎日。


私はヘッドマウントディスプレイをつけてインターネットの海に潜る日々。


こんな私でも食事を作ってくれて、運んでくれてまで命を繋いでくれている家族に申し訳ないな、と思いつつも私にできることはこれくらい。


社会のあらゆる情報を得て色々と飽きないように工夫して生きている。




そんな毎日を送っていると深夜に大きな振動がした。


久しぶりに両親のいる時間帯にリビングへ向かうと床に両親が倒れており、大量の血液が流れていた。


私は焦って姉の自室へ向かうと腹部が刺されており、傷はかなり深く意識朦朧な状態の姉が残した言葉は「生きて…」と一言だけだった。


姉の名前を叫んでいると背後から後頭部に強力な打撃を受け意識を失い倒れる。




意識を取り戻したら知らない海の近く。


どうやらプロの強盗殺人犯のようで女性とは思えない鍛えられた肉体とそれに従う2人の女性。


夜の海は見たことあるけれどこんなにも絶望的な海は初めて…なんて考えていると、


「貴様、目を覚ましたか、お前らは大金を隠していたよな?それは何処だ?」と聞かれるものの私は知らない。頬を殴られ、頭まで痛みの刺激を走らせる。


「知っていたのはたぶん私以外の家族3人です… 」と答える。全身に強い連続の暴行。


「どうした!まだ話さないってのか!?」と大きな声で怒鳴られる。


「本当に何も知らないのか…ヘマしたな、消えるぞ!」と言い身動きが取れない私を海に投げ捨て、逃げていく。




そこに意識が鮮明になってきて、私を海から発見して担いでる相手は銀髪のショートヘアが印象的な黒コートの私より年上な雰囲気の女性だった。


海水に浸り血まみれの私を海から抱き上げ高級車であろう後部座席に汚れることを躊躇わず横にさせられる。


あぁ、またどこか連れて行かれるんだ…と思っていると


「私は医者だ、今から治療するから。」と優しい声で安心させてくれる女性。


幸い傷は多いものの身動きがしづらいくらいと手足を軽く動かし自分の状態を確認する。


そう思っていると彼女の家?に着く。


「着いたよ。」と言われ車から降りる。


「ここが病院ですか?」と聞くと、


彼女は「家でもあり私の職場なんだよ。」と答えた。


歩くのは傷に響くので肩を借り病院の中へ入る。


「まずはその傷から治さなくちゃね。」と言う女性。


確かにこのままじゃマズイのは確実だし素直にベッドに寝る。


引きこもって居たからか恥ずかしながら動物の被れるパジャマだったし寝る時はナイトブラ派だった私。


ちなみに今日のパジャマはパンダのお気に入りなのに海水まみれでヤツらの暴行と私の血で汚れて残念。


服をハサミで切っていくとどうやらあまり大きな傷は無いみたい。


何箇所かかなり痛みがあったものの私は耐える。


消毒をし、化膿止めの軟膏を塗り、場所に合わせた処置をしていく彼女。




一通り処置が終わると「お疲れ様、何飲む?スピリタスでいいかい?いや冗談だよ。」と笑っている彼女。


「そこの冷蔵庫に一通りお酒もジュースもあるから好きなので飲むといい。」と言い消えた女性。


シャワー室も備え付けておりそちらへ消えたようで、私もサッパリしたい欲求に駆られる。


出てきた彼女に「シャワー借りてもいいですか?」と聞く私。


「入浴はもちろんダメだけれどサッと浴びるくらいならいいよ。但し消毒し直しだけどね、まぁそれは構わないから入っておいで。」と返ってきたので浴びる私。


そういえば洋服どうしよう!?と思っていると外のカゴに用意済み!用意周到で驚きです。


海水のベタつきも落としたところでサッパリとして先程までとはいかない処置をしてもらい、ドライヤーまでお借りしてると、喉が渇いている事に気づく。


「本当に飲んでいいんですか?」と聞く私に彼女はコクリと縦に頷く。


冗談抜きにスピリタスを飲んでる女性を横目に私はオレンジジュースとウォッカでよくわかんないけど作ってみる。正確な作り方はあるのだろうけど私は知らないのでこのカクテルをスクリュードライバーと呼べるのかな?


彼女はニュースを見ている。


「速報です。(ノイズの走る音)に一家殺人事件により死者3名行方不明1名の事件が発生。行方不明の名前は…」と、


私に気づくと消してくれた。


色々あったからかお酒が美味しく感じる。


「自己紹介が遅れたね、年齢は29才。開業医と裏で刺青師をやっている。名前はミサさんと呼んでいいよ。」と言われる。


「私は青藍です、歳は24才。今は無職で…」と言いかけると、


「その先まで聞くつもりは無いさ、誰にだって事情はある。」お優しい方だ…。




このお酒本当に大丈夫なのかな…と思ってフラフラしてくると「ベッドに横になりなさい。ちゃんと綺麗にしておいたから。」と告げられる。 私はお言葉に甘えて横になることに…「おやすみ、青藍。」と心に響く声を感じつつ意識がストンと落ちる。




翌日、目を覚ますと昨日あったことが全て現実だと実感する。


声を上げて見っともない顔で泣いていると飛んでくるミサさん。


察してくれるとおいで、と胸を貸してくれる。


ミサさんが「私も見っともない泣きっ面で何度も泣いた事がある。私が支えるから安心していい。」と優しく囁いてくれる。


かれこれ1時間くらいは涙が枯れるまで泣いていたと思う。


ミサさんが泣き止むまでついてくれたおかげでとりあえずは大丈夫。


「ありがとうございます。もう落ち着いたみたいです。」とお礼をすると


「昨日から何も食べていないんじゃない?お腹が空いたんじゃないかな、よかったら私のフレンチトーストを食べない?昨晩から仕込んだんだ。」と涙と鼻水を拭いてくれて微笑む彼女はまるで女神のよう。


「いただきます…」女の子は甘いものに弱い。




かれこれ数日ミサさんのところに居候している。


何せ着替えもおろか全財産失ってしまって行くあてが無いのだから。


ミサさんも頼っていいし何なら住んでもいいと冗談なのか本気なのか分からない顔で言っていた。


そんなこんなで何日目かの朝食を迎えている時、


お言葉に甘えて暫くはこの暮らしを送ることを相談しようとしていると、ミサさんの方から


「ねぇ青藍、貴女4人家族よね?」


「まぁニュースにもなってますし…」


「私の本当の名前知りたい?」


と意味深な言葉が彼女の口から出る。


コーヒー片手に木枠の写真立てを持ってくる。


ママとお母さんと2人の少女と赤ちゃんが写っている。


私が生まれた頃に撮った写真かな?と思って見ていると知らない少女がいる。


「実は私は、青藍の姉なの。いつも志保が長女だと思ってただろうけどあの子次女だったのよ。私が長女。」


私は何が何だか分からなくなる。


私は「どういうこと?家族は一緒にいるものじゃなかったの?」と聞くと「致し方なかったのよ。みんなを恨まないであげてね。」とのこと。


「で…本当の名前って何?ミサじゃないの?」と聞くと「ミサじゃないの…本当の名前知りたいなら私の技術で青藍に刻むわ。ダメ…かしら。」と彼女が弱った顔を初めて見た。


私は「うん、いいよ。」と特に偏見も無かったので答えると、


ミサさん?は「本当!?私が彫り師だって事教えたのに!?準備してくるね!」と私が写真を見てる間に行ってしまった。


今時タトゥーがなんとかなんて古い考えだしいいよね。




「リラックスして、深呼吸。」と言うと彼女はお香みたいのを焚いて私に紙タバコを吸わせる。


ってこれなんかおかしくない?って思っているとそんな感情も消えていく。


どうやらこれはママ達の時代には無かったってやつでお香は痛みを消すためにリラックスしてもらおうと思ったみたい。


そんな状態で何分かすると彼女は細い針と黒いインクを持ち私の子宮の辺りに百合の花を刻んでいく。


リサ?LISA?理沙?これが彼女の名前?彼女は刻みながら語っていく。


ミサというのはいつも黒い服でお香を焚きながらタトゥーを入れるから通称ミサなんだって。指がとても綺麗に見える。


なんか凄い。


何をしてるのかよく分からないけど痛くないしいっか…と思っていると「出来たよ。」


と彼女は告げる。


しばらくしてタバコの効果も切れてきたところでタトゥー入れてる姿が姉に似てたの。やっぱり家族なんだね。




「とにかくヤツらみたいな酷いことしてごめんなさい。」


と謝られ続けたけど「私には理沙さんしかいないから大丈夫だよ。」って答える。


理沙さんはこう言った。「このタトゥーは貴女のイメージ、白百合を刻んだの。花言葉は純粋、無垢、純潔、威厳。青藍、貴女はまだガラスのように儚い存在だから私からの強くなれる魔法だよ。」


これからどうやって生きていけばいいか不安だけど、理沙さんのように、白百合のように、なんとか強く生きなきゃね。




そう思っていると… 「リリィってわかる?」って聞く理沙さん。


そりゃ百合でしょ?ママとお母さんも百合婚だし…


そりゃ知ってて当然。




「今まで彫ってきた中で一番多いのリリィなんだ。」


「多分百合婚が広まったからじゃないかな。」と言う理沙さん。


「行く当てもないでしょう?」


「いっそ私達で百合婚しない?」


と大胆告白。


正直打ち明けられる前まで私は彼女に恋をしていた。


理由は分からないけれど教えてもらう以前まで当然なのだけどいつも世話してくれた姉に似ていたからか、はたまた彼女の孤独を知り理沙さんにもガラスのような儚さがあることを知り私でも埋めれることを知ってしまったからか。


私はコクリと頷く。




「じゃあ私にも貴女の…SEIRAを入れるね。鏡持っててくれる?」と言われ震える手で近づける。


私の手元を見ながらひと針ひと針入れていく。


「はぁ…はぁ…これキツイね。流石に私でも自分のお腹に入れるなんて思ってなかった。」そりゃそうだよね。


徐々に墨が入っていき完成する。




「理沙さん、大丈夫?何か持ってくる?」と聞くと、「冷たいお酒持ってきて、なんでもいいから。」と難しいご注文。


とりあえず私が飲んでたのと同じのを持って行く。


「あーありがとう。これからは理沙って呼んでね。」


「当然だよ!理沙おねぇちゃん!」




寝室まで連れて行かれて初めて入る寝室はオシャレなゴシック基調のキラキラ光るシャンデリアに三又の蝋台にまでと細かいところまでこだわりを感じると思っていると広いベッドにどーん。


「さっき彫ってる時の声、可愛くて仕方なかったんだ。」と言われてめっちゃ照れる私。


「貴女も磨けば光る宝石なんだからちゃんと身だしなみ整えなさい。」


うっ、引きこもりだったのでそこは大目に…いやもっもとなんですが。




お香は今度は違うし変な紙タバコもないけどキスがとっても嬉しい。


おでこや頬や首元。なんか恥ずかしい。


恥ずかしさで変な声出ちゃうけど今は2人きりだしいいよね。


で、理沙おねぇちゃんの凄い提案。




「志保に会いたい?」


なんと理沙おねぇちゃんが志保ねぇに見える魔法があるみたい。


私は頷くと理沙さんの両腕が私の首を締めていってギリギリ息が出来ない状態でいると一瞬だけいつもの志保ねぇに見える。


パッと離すと 「どう?見えた?見えた?」


と興味津々の理沙おねぇちゃん


「はい…見え…ましたよ…理沙おねぇちゃん…」と再び会えて喜びと悲しみの混ざり合っている感情で涙を堪えながら言うと「そっかー良かったねー…」




理沙おねぇちゃんは私より年上だし1人で生きてきたのだから経験豊富。


私はリードしてもらうかのように全身に甘い口づけしてもらう。


耳をちゅぱってされながらタトゥーのところは避けて身体を撫でる。すっごく優しいところに思わず私は手を伸ばしてしまったものの理沙おねぇちゃんは恋人つなぎで応えてくれる。あぁなんて幸せなんだろう。


と思っていると耳から唇へと移る。


さっきの感覚とは違う。どんどん濃厚になる。


つい私は抱きしめて…と言ってしまい自分でもびっくり。


傷が痛くならないように背中から抱きしめてくれる。


そして何故か胸を触りたがる理沙おねぇちゃん。私はこの抱きしめていてもらえる感覚を長く浸りたいので「やだー♡」と恥ずかしげに応えてしまい私は駄々っ子なのか!と思ってしまい恥ずかしい。




このまま1時間も眠ってしまい理沙おねぇちゃんには申し訳ない…とベッドの上で土下座しようとしたらふらっときてどてーんと広いベッドで助かったーと思いつつ理沙おねぇちゃんも眠っていたみたい。お互い特に怪我も無く一安心。


お待たせしました理沙様ーと思いつつキスを交わすだけですぐに熱情は盛り上がる。


やっぱりあんなこんなになるのかなぁと思ってると理沙おねぇちゃんは「今日は胸までね。傷、内腿にもあったでしょう?」と気遣ってくれる、流石です…


胸は私の方が少し大きい?まぁ引きこもりでしたし間食多かったからこれはピンチなのでは?と思いつつそんなの愛には関係ないので私からぎゅーっと抱きしめてどっちがどっちの胸なのか分からなくなってしまうくらいに。


「どうしたのよ。」って笑う理沙おねぇちゃんに私は「ダメ!今日は記念日なんだから最後までだよー!」って言い、果てに果てました…




それから3ヶ月後




後にダブルウエディングドレスで白が私、黒が理沙おねぇちゃん。


リリィのタトゥーが入った女性たちの幸せな結婚式でした。


会場のみなさんは知らないけれど実は理沙おねぇちゃんには私の名前が彫ってあるんですよ!逆に私の体にはLISAの名前もね、私たちだけの秘密!




〜アフターストーリー〜




理沙おねぇちゃんが仕事で遠くに行かなくてはいけないと言い私がついてくしかない!と言うと当然の却下。


これはあの技しかない…と思いつつ日常を過ごし理沙おねぇちゃんがお客さん対応してるときに私はリビングまで行き仕事先とホテルを確認して、当日いってらっしゃいーと見送り私も身支度をして理沙おねぇちゃんの仕事場方面へ向かう。


これって本当はいけないこと!?と今気づいたもののこれはもう止められないー!と夕方まで街で時間を潰してホテルにチェックイン!理沙おねぇちゃん来ないかなーとベッドで待っているとガチャっとドアの音がして「わー!」と驚かすと「もー貴女は…」と呆れられてしまいました。全て読み通りらしく美味しいディナーとホテルのお部屋でワインを飲みながらキスを交わしました。

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