第26話 そういや今世で見たことなかったですね。
……そういえば、私、紗貴様のダンスって見たことない……?
ゲームでは何度も見たのですが、こちらでは一度も見たことありません。紗貴さまはこれまでモデルとしての活動が多かったので……。
「そういえば、さっき僕が踊ってたとき、紗貴と何話してたんだ?」
灯里様の声が隣から聞こえました。
……え、隣!?
隣を向けば、そこには灯里様のご尊顔にふわふわの薔薇色の髪……え!?
灯里様が座っていました。
へ、あ、え、灯里様も隣に座ってくれるんですね……!?
紗貴様といい灯里様といい、サービス精神旺盛過ぎやしませんか!! ありがとうございますごちそうさまです!!
えっと、何話してたって……。
「あの、灯里様について……その、聞いていました」
誤魔化すのもどうかと思い、素直に答えました。すると灯里様は驚いたような声を出します。
「……僕の?」
ええそうです貴方のことです!
灯里様は驚いた様子ですが、私が紗貴様と話せる話題なんて灯里様のことぐらいしかありませんよ……!
「……なんでだ?」
灯里様はこてん、と首を傾げました。ふぐっ可愛さで殺しにかかってますね……!?
なんでって、そりゃあ……。
「あの、灯里様のことをもっと知りたいなと……思って……」
「僕のことを……?」
きょとんとした灯里様を内心悶えながら眺めていましたが、ふと、曲がいつまで経っても始まらないことに気が付きました。
あ、と嫌な予感を感じながら紗貴様の方を見れば……彼はこちらを無表情で凝視していました。
ひえ、こわ……っ!?
あまりにも人形めいていて、思わずそんな感想を抱いてしまいました。ヤンデレやべぇ……!!
そんな私に気がついた灯里様が紗貴様に目を向ければ、先程の表情が嘘のように、彼はにこりと笑いかけ手を振ります。
変わり身早!! でもそんな所も最高です!!
「紗貴、そろそろ始めたらどうだ?」
「ごめんなさい、二人の話が気になってしまって……。分かりました。では始めますね」
紗貴様はラジオのボタンを押し、曲を再生しました。そして踊り始めます。
おおお……これは……!!
動き一つ一つが紗貴様の良さを強調しているというか、容姿も相まってすごい……優雅です。曲はアイドルあるあるなポップな感じの曲調なのに、指先一つ一つの動きが滑らかで、まるで舞踏会で女性をエスコートしているような……あ、すみません紗貴様がエスコートするのは灯里様だけでしたね!
ひゃあああっ、さっすが小さな王子様!!
「紗貴のダンスは綺麗だろ。ダンスで自分の世界に引き込んでくる……本当に尊敬してる」
灯里様が隣から話しかけてきます。
……灯里様、そういう性格ってことは分かってましたけど、そう……相手の良い所を認めて素直に言える所、凄いと思います。
自分の得意なことで他の人に、それも同年代の人に凄いとか言うのって、案外難しかったりするんですよね。負けたって感じがするというか……そう感じても認めたくなくて素直に凄いとか言えない、前の世界の私はそんな感じの人間だったので……。
「そうですね……とっても綺麗です。世界観があるというか、舞踏会で踊ってるみたいで」
「舞踏会、か。確かにそうだな。
……やっぱり、小崎って見る目がある。君が僕の担当で良かったよ」
へ? いえいえそんな滅相もない!! ただアイドルオタクなだけですよ!!
「あ、ありがとうございます……」
少し照れつつお礼を言うと同時に、曲が終わります。そして駆け寄る音。
「トモリーー!! ボク、どうでしたかー!?」
「ああ、上手かったよ。さすが紗貴だ」
紗貴様は灯里様に抱きつくと、にへらっと彼の前だから見せるだろう蕩けた笑みを見せます。
ズッキューンと胸を撃ち抜かれる感覚。
え、なに!? 何今の表情!? 可愛すぎでは!? 紗貴様マジエンジェル!! ここの絡みほんっと尊い!! 紗貴様がこんな表情見せるとか最高のギャップ萌えですよ……!!
「……だーけーど、こっち気にしすぎだ!」
灯里様は紗貴様のおでこに軽くデコピンしました。
「あぅっ!」
「紗貴は僕達を気にしすぎだ。そのせいでダンスだけに集中できてなかったろ」
「うっ……、だってトモリ達が何話しているのか気になってしまって……」
「そんなの後で聞けばいいだろ……」と呆れたように鈍感を発揮する灯里様。だがそこがイイ!!
むぅーっと可愛らしく唇を尖らせる紗貴様。こんな表情灯里様の前でしか見せないでしょう。可愛すぎる!!
「小﨑も何か言ってやれ!」
「へ!?」
突然話を振られワタワタしてしまいます。え、えっと……これは批評をすればいいのですか!?
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