第22話 待ってください!サインください!
まだ夜なのにもかかわらず、です。その時の私はほぼ脳が働いてませんでした。
「へ……!?」
そんな声を上げ青年は立ち止まり、こちらを振り返ります。……アッ顔が良いですね……。
思わず品定めみたいな失礼極まりない目線を送ってしまいますが……うん、やっぱりアイドルだ! この人アイドル界の新星になりうる逸材だ! 直感でそう感じていました。
ゲームには出てきませんが、絶対そうだっていう謎の確信です。……あれ、なんかこれカッコつけみたいでちょっと恥ずかしい……?
「……えっと……あ、IP科の人……?」
「あ、はい! ……えっと……」
……無言。なぜかシーンと静まり返った中、お互いに見つめ合いました。なんだ、なんだこの謎の緊張感は……!
「あの……見てました……?」
「……はい、見てました……」
罪悪感を感じつつ頷くと、「そっかぁ……やっぱ見られてたかぁ……!」と彼は恥ずかしげにしゃがみ込んでしまいました。え、なにそれ可愛い。ブレイクダンスあんなキレッキレに踊ってた人がこれ? ギャップでこちら昇天できますが……!?
「そっかぁ……なんか恥ずい……。てか! あの、やっぱり曲うるさかった!? ごめん! 起こしちゃったかな!?」
そんな私の心境なんてつゆ知らず、青年は申し訳なさそうに謝ってきます。
「いえいえ! 今日早くに寝て、変な時間に起きちゃっただけですから!
……それより凄いですね……ブレイクダンス?ですか? こんな早くに練習を……?」
「え、ああ……まぁ、そうかな。どちらかといえば体動かしたくなってついって感じですけど……」
はぁ……すげぇ……。私なんていつもならこの時間爆睡ですよ。
……ハッそうだ、本題見失ってた! サイン!! サイン貰おう!!
一応いつどこでアイドルにあってサインをいただける機会があってもいいように色紙とペンは常に持ってるんです!!
バッと差し出して、頭を下げました。
「あのっ、さ、サインください!!」
「はい!?」
頭上から非常に驚いたような声が聞こえました。
「え、あ、えっと……!」
わたわたと慌てているご様子。あああ頭下げてて見えないのがもどかしい!! 絶対可愛いですよこんなの!!
「あの……わ、分かった……けどさ」
しどろもどろな感じで「だから頭上げて!」と言われたので頭を上げると、そのキラッキラした顔にまたしても目がやられました。
はぁぁぁぁ……きらめいてるわ……美しい……!! この学校入ってよかった……。
「でも、あの、俺……
――アイドルじゃ、ない、ですよ?」
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