第21話 見てはいけないものでしたか!?

 ──今何時でしょうか……?


 灯里様の言う通り、今日は早めに眠っていたところ変な時間に目が覚めてしまいました。慣れないことしたから……?


 スマホをつけて、時間を確認します。4:35……随分と早起きしてしまったみたいです。二度寝でもしましょうか……。


 〜〜〜♪


 ……ん?


 外から何か聞こえてきます。本当に小さくですが、窓の外から。……曲?


 …………ハッ、まさかっ、アイドルの誰かが練習を……!?


 ガサゴソッとすぐに立ち上がり窓の方へ向かいます。音は……あの噴水のある広場の方?

 遠目ですが、明かりの下で踊る誰かの影がありました。顔は流石に分かりません。


 …………え、見たい。


 どうせ早起きしたんだし、散歩がてら見てみたい、なんて思ってしまいました。……だって、気になるでしょう!? 迷惑かもしれませんが……!


 一応パジャマ代わりにジャージ使ってますし、これなら着替えなくてもいいですよね、多分。散歩ですし……。


 とりあえず、口が気持ち悪いので洗面所でうがいしてついでに顔洗ってから外へ出ました。まだ曲は聞こえてきます。


 ……とりあえず! バレないようにしましょう! 邪魔してはいけませんし!


 気分は怪盗! あなたのダンスを盗撮しちゃうぞ☆ ……すみません、変なテンション出ちゃいました。


 息をひそめながら噴水広場へ向かいます。盗み見とは趣味が悪い? 自覚はありますが……この欲望は抑えきれないのです……!! そして正直治す気もないです!


 ゆっくりと、散歩をしているのを装いながら、でも気配を消して歩きます。こんな時ばかりは自分の透明人間ばりの気配の薄さ役立ちますかね……? さすがに人居ない中ではバレますか?


 そして、ついに街頭に照らされたその姿があらわになります。


 ニット帽を被った爽やかだけど甘い顔立ちの美青年が、いわゆるブレイクダンスをキレッキレに踊っていました。系統は違いますが、灯里様と並ぶレベルの実力でしょう。あ、え、回る!? 今回ってる!?


 ヘッドスピンを始めた彼に思わず見入ります。見たことあるようで無い人です……私大体のアイドルは覚えてるので、知らないってことはまだ活動してない1年生?


 いえ、そんなことはどうでもいいのです。パネェ……!!


 この方きっとアイドル界の新星になりますよ!? ブレイクダンスのできるアイドル!! 今のうちにサインでも貰っときましょうか!?


 もっと近くで見たいと近づくと……


 パキッ


 お約束とでも言う通り、枝を踏み、かなり大きな音を出してしまいました。それも音楽にかき消されない大きさの。


 オーマイゴッド!!


「……っ!? 何!?」


 もうこの一生のうち何度聞いたか分からないその言葉に固まります。


「……え……?」


 きょろきょろと音の主を探し見回す青年と……目が、合いました。


「……え、あ、うわぁっ!?」


 ワンテンポ遅れた悲鳴と同時に彼は逃げようとします。


「え……!?」


 私も驚き、伸ばした手は……もちろん空を切りました。


 行ってしまう……新星が……サインまだもらってないのに……っ!!


「あの!!」


 気がついた頃にはそんな大きな声を出していました。

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