第20話 私が送られるってマジですか?
「いえ、いえいえいえ大丈夫ですよ!? お二人で話してもらってて!!」
「ついでだって言ったろ。寮まで送るだけだから」
灯里様はささっと席を立つ準備をしています。
……ま?
え、これま!? なんで!? 私を送る!?
私はもう少し眺めてられるっていう喜びも大きいですが、それ以上に疑問を感じていました。いや、ここ離島だし、アイドル育成学校ってこともあってセキュリティ厳重だし、寮までそんな離れてないし、送る必要特に無くね? と。
いえいえ送ってもらえるのは大変嬉しいのですが!! なぜ!?
とはいえそこまで断る理由もありません。……ちょっと、あの、紗貴様が怖いですけど……。
紗貴様は感情の抜けたような目で私を見ていました。ヒェッあの……さすがに怖い……! お二人でやっぱり語らってもらった方がいいのでは!? いや、何でも、敵意すらも美味しいとは言いましたけど!! でも私も人間、怖いとは感じますから!!
……紗貴様は相手に危害を加えるタイプの方ではなかったはずですけど……でもこれは……!
「……分かりました。トモリ、また明日。……オサキさんも」
紗貴様は妙だと思えるほどに綺麗な微笑みを浮かべました。
「ああ、また明日」
私はといえば恐怖を感じつつもその美しさに興奮するというなんとも言えない感情に襲われていました。
「ほら、行くよ」
灯里様が席を立ったのを見て、私も急いで立ち上がります。そして困惑と……あんなに言われたのにドキドキを感じつつ後ろをついていきます。……いえ、もう勘違いはしませんし、これはきっとファンだからこそのトキメキですね!! そうです、そうじゃないと。
ふと気になってちらりと後ろを見ますが、紗貴様は窓の外を眺めていました。……あれ、予想外だ。灯里様を見てないって……。
少し疑問に感じつつ、足早に食堂を出ました。
灯里様の後ろをついていきます。すると、灯里様から話し始めました。
「ごめん、僕達だけ話してたから気まずかっただろ」
「あ、いえいえ! おいしっ、見てて和みました」
やっべぇ、美味しいって言いかけたっ……。えっと、和んだ程度なら大丈夫ですかね……?
「……和んだ? 僕とあいつが?」
あいつ呼び頂きましたァァァ!!
灯里様は?を浮かべていますが、いやいや、あんなのファンにとっては最高のやり取りですよ!! 一緒にショッピング行ったんですよね!! 最高ですか!?
「……えっと、はい」
「ふぅん、変なこと言うんだな。そうか、そう言うやつもいるのか……。まあ覚えておく」
灯里様は依然として?を浮かべたままですが、そんな素直で天然で、なのに自然に毒舌僕様しちゃう所が最高なんですよね!!
街灯の下を歩きます。この時間に走り込みをしてる方も居るんですね。はぁぁぁ眼福……。
「とりあえず、明日からは僕の練習に付き合ってもらうし、もしかしたら他に何か頼むかもしれない。早めに寝ろよ」
「お、送ってくださりありがとうございます!」
ペコリと頭を下げると、灯里様はひらっと手を振ってから踵を返します。
あぁぁかっけぇ!! こんなの自然にできちゃうんですもんね!! いや、様になってるっていうか! 初めてみました!
名残惜しげに彼の背中を眺めてから、ふわんふわんと浮くような足取りで寮に入り、自室へ向かいます。あ、杉原ちゃんにお礼言わないと! あと……あぁぁあ! サインもらうの忘れた……。明日頼んでみましょうか……?
……そういや、灯里様が私を送ってくれたのって、あのごめんってのを伝えるためなんでしょうか。
そこまで考えて、ふっと笑いがこぼれました。……本当に素直なんですね、素直で真っ直ぐだ。ゲームの彼と同じで。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます