第10話 アイ育ファンの皆様……すみません!!
貴方様は私に死ねと申すですか!? 呼び捨てだなんて滅相もない!! 私なんかがそんなことすればアイ育ファンに暗殺されてしまいます!!
「……は、はい……ト、灯里様!!」
今度こそ返事はせねばと足の痺れといろいろで震えた声を絞り出します。
「……ま、それでもいいけど……」
様付けに一瞬怪訝そうな顔をした灯里様でしたが、受け入れてもらえました。
ありがとうございます……!! ありがとうございます……!! これでもアイ育ファンの皆様への罪悪感半端ないですが!! ありがとうございます!!
そしてアイ育ファンの皆様……すみません!!
ぶっちゃけめちゃくちゃ嬉しいですッ!!
灯里様はスマホを受け取りスクロールしてますが……マジで何しても絵になるなこの人は……そして、フッと笑いました。
「……へえ、うまく撮れてんじゃん。一切ブレてないしほぼ静止してる……凄いな。地味なだけかと思ってたけど、やるじゃん」
グッフゥッ!!
その微笑みと、突然来た毒舌の破壊力は凄まじかったです。ご褒美の方で。
あぁぁぁあ、本当に貴方様は何度私の……!!
まだビリビリする足を堪えながら、おそらくもう私は
……ああ、本当に、幸せだ……。
幸せだ……!!
「……うん、いつも通りいい感じ。……で、
あ、そこに気が付きますか……! てか名前!? 名前で呼ばれて……!?
もうそこそこ引いてきてる気もするから立ち上がり……そして崩れ落ちました。だめだ、まだ力入んなかった……!!
「……ちょッ君、大丈夫!?」
あぁぁぁぁ! 私なんかが心配をかけているぅぅぅ!! すみません、すみません!!
「ダッ大丈夫です!! 痺れちゃってるだけなので……!!」
「痺れた……? ああ、そういえば君ずっと正座してたな。馬鹿だろ」
グハァッ……!!
灯里様の一言で私はいろんな意味で倒れ込みそうになりました。
ああ……良い。最高……もう私Mでも変態でも、なんでもいいや……。
「……ほら」
……!?
…………!?
私に向かって差し出された綺麗な手……。
この手を取っても良いのですか!? 良いのですか神様!? 私、手、洗ってたよね!? 汚くないよね!?
……すみませんアイ育ファンの皆様、私、いきます!!
その寸前に、メロディが流れ始めて固まります。
「……もしもし?」
私が手を置こうとした所には何もなく、無常にも手は空を切りました。灯里様はナイスタイミングと言えばいいのか掛かってきた電話に応答しています。
……まぁ、そうですよね。そうなって当然ですよね……私、高望みしすぎました……。
そんな美味しすぎることありませんもんね……これだけでもサービス頂きすぎですもんね……!!
なんとか地面に手をつき立ち上がります。よし、今度は足、大丈夫そうです。
「……僕でいいのならぜひ、お受けします。
……あー……分かりました。16時からですね。学園側には僕から連絡しておきます」
……何かお仕事の依頼とかなんでしょうか……?
16時、てことは早退になる? はぁ……凄い、さすが元人気子役! 学園長のお……それは言っちゃ駄目でしたね、本人が気にしてますし。
「……ああ、もうこんな時間か」
窓の外は夕日が沈みかけていて、かなり時間が経ったことを示していました。……ああ、一瞬だった……。
もうこの幸せな時間にも終わりが来るのか、なんて余韻に浸っていると、灯里様は思いがけぬ攻撃をぶつけてきました。
「……君は僕のプロデューサー役だろ? 7時半、食堂へ来てくれ。予定をすり合わせておきたい」
…………え?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます