第2話 入学式で私は歓喜しました。

 今世の私も、というか私も、さすがといいますか、かなりのアイドルオタクでした。ちなみにその時は二次元じゃなく三次元の、です。ココ大事。こっちではなぜかは分かりませんが、バーチャルアイドルって少ないんですよねーって、話が逸れました。


 この世界ではアイドルが人々の最大の娯楽。


 それは私も例外ではなく、7歳、初めてライブに連れて行ってもらった時から、みるみるうちにアイドル達の沼に沈んでいきました。


 今の私の部屋はお宝グッズの数々、殆どそれらで構成されていると言っても過言ではありません。


 次第にそれは人間観察ならぬアイドル観察に至り、私の持つタブレット端末内は数々のアイドルの資料、記録で物凄いことになっています。……あ、もちろん女性アイドルのもあります! 美女も美少女も大好き!! 


 そして、いつやら私もアイドルに……ではなく、アイドルをプロデュースする、手助けをする仕事につきたいと思うようになっていきました、中学1年生のことです。


 ……そんな時、日本最大の男性アイドル排出校だったセンドライトスクールにプロデューサー科ができたのです。


 日本最大のアイドル学園とのこともあり、そのプロデューサー科、変な人を入れない為なのか偏差値も半端なく高く70以上ありました。


 私はあの……あとで説明するんですけど諸事情で友達がおらず、学校では真面目に授業を受けるしかなかったので、もともと頭は良かったんですけど、それでも偏差値70以上を受けれるほどではありません。


 ですが、日本最大のアイドル学園。入れば周りはアイドルだらけ。


 プロデューサー科なのでお近づきになることも十分可能!! そんなやましい気持ちを抱いていた私が志願したことは必然でした。


 夢とアイドルに合法的に近づけるという濁りまくった欲望を糧に、勉強に明け暮れる日々。


 食事中、通学中、トイレの中ですら勉強勉強勉強!! 前世では全く想像できなかった行動、我ながら過去の私凄いと褒め称えたくなります。愛は偉大。……よくやった、本当に、よくやった!! 


 合格発表のとき自分の名前を見つけて歓喜で卒倒してしまいそうになったのがもう懐かしい。


 そして、私が今の私……前世の記憶を持つ私になったのが、入学式の途中のことでした。


 さすがアイドル学園ということで、学園の所有する巨大なコンサートホールで入学式は執り行われます。私は観客席の、名前順で小崎おさきのため最前列に座っていました。

 

 周りは同じIP科の生徒でしたが、その周りはアイドルや、アイドルの卵だらけ。


 IP科はIアイドル科の約3分の1、30人しか居ないため、囲まれていると言って過言ではありません。私はその状況に興奮しまくりでした。


 だって!! 会場に入るときにも、テレビ越しや遠くからしか見ることができなかった彼らの姿が見えるんです!! それも制服!! 楽しげに語らわれている姿なんてご褒美以外の何物でもありませんッ!!


 ありがとう、神様。ありがとう、世界。


 私はいま、紛れもないセンドライトスクールアイドルファンにとっての楽園にいる!!

 

 そんなことを考えながら、立ち上がってあたりを見回し皆様のお姿を目に焼き付けたい!! 出来ることならカメラ連射して家宝にしたい……!! ……だがッ、そんなことをして彼らの迷惑になってはいけない!! 抑えろ、抑えるんだ私ぃ!! ……なんて、葛藤を抱きながらステージを見つめていました。


「……ようこそ!! 我がセンドライトスクールへ!! アイドルの卵達、そしてアイドルの孵卵器ふらんき達よ!!」


 大きな美声がステージから聞こえてきました。けれどステージ上に人の姿は無い。――と、突然、誰かが姿を表しました。


 ポップアップ……舞台に飛び上がる為の装置のことなんですけど、それで出てきたのだと察すると同時に、私の興奮はピークに達します。


――――そして、同時に頭を打たれたかのような感覚に陥りました。

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