8話 神田紗耶香Ⅲ

 AH4日目。今日は…。

 そこへピンポーンと突如鳴り響くインターホン。

 …誰だろう?

 「いや、誰だろうじゃないわよ!行くって今朝メールしたでしょうが!!」

 「…なんだ紗耶香か」

 それにしても、壁越しに心を読んでくるとは恐ろしや…。

 「うん、いらっしゃい…。って言いたいけど、部屋掃除するから2、3時間…」

 「待つわけないでしょ。ってこのくだり数日前にやったから…」

 お、めずらしい。紗耶香が怒らない。落胆している。…いや呆れている?

 「はーい、小春ー。かえってこーい」

 おっと、いけない。別に私には紗耶香を怒らせる趣味はない。

 「で、どうしたの?」

 「どーしたもこーしたも、あんたが散々迷子だってうるさいから見にきたんでしょうが!!」

 「そーでした」

 「まぁ、いいや。とりあえず見せてみな…ってちょうどついてんじゃない」

 そういって画面をのぞき込む紗耶香。

 …あ、そういえば…大丈夫かな?まぁ、大丈夫か、昨日いきなり増えた項目だし、紗耶香にもあるでしょ。

 そう思っていたのに、ギギギっと音がしそうな感じでアニメのようにゆっくりと首だけこちらへむける紗耶香。

 「ねぇ、小春?まぁ、ステ振りがおかしいし、よくわからない項目が画面に追加されてるのはまぁ、うん、百歩、いや一万歩ゆずるとして…。なんであんた、初期ボス倒した後にしか行けないエリアにいんの??」

 「…え?」

 「え?じゃないわよ!あんなのソロじゃ倒せないでしょうが!!」

 「え?」

 …ボス?倒したっけ?あ、あれかな?イフリート??

 「…倒した…かもしれない?」

 「かもって…。こんなステータスで勝てるわけないでしょ?何やったのよ、あんた…。まさか、他パーティーに寄生したんじゃないわよね?」

 「…いんや?ずっとソロだよ?」

 「…そうよねぇ…。そこは疑ってなかったわ…。でも…そうなると…」

 そういって一人考えはじめた紗耶香。

 …やめてほしいわー。ほんっとこういうのダメだと思うわー。…え?ブーメランささってるって?知らないなぁ。

 まぁ、冗談はせておき、紗耶香はこうなるとしばらく帰ってこない…。ひまである。AHをしようにも、紗耶香が画面と向き合ったままで邪魔だし…。

 「ねぇ、小春」

 「うん?おかえり、紗耶香。早かったね」

 15分ほどでかえってきた紗耶香。珍しいこともあるもんだ。

 「小春ってもしかして…。最近話題の女神?」

 …おおう、そこまで来ちゃいますか。たった15分で…。

 「あー、うん、まぁ…最近そんな称号をもらったようなもらってないような…」

 「…よし、小春。いまからうちの面々がボス倒しに行く日だから、ちょっとついてきな」

 …それはいいんだけど…。迷子の件は?どうなったの??

 

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