5話 そういえば私迷子じゃん

 …みんな、楽しくて周りが見えなくなって、ついついやらかしちゃうこと…あるよね?うん、つまりだね。

 「…こんなに禍々まがまがしい雰囲気のとこ、私知らない」

 そう、絶賛迷子。進行形で迷子。迷子に迷子を重ね一向に学習しない馬鹿とは私のこと。

 だってさ?そこにペンギンがいたら追いかけるじゃん。ド〇クエのメ〇ル系追いかけたくなるのと同じ心理だよ。そう、私は悪くない。

 「いやぁ、ハハ。やっちゃった」

 とはいえ、いつまでも後悔しているわけにはいかない。流石に何とかする方法を考えなければ、現状は変わらない。

 とりあえず現状を再確認しよう。紗耶香に頼るのはだめだった。私が自分の場所もわからないため、アレ以来返事はない。そして私はといえば、ペンギン型モンスターを無意識に追いかける…。反省はします。後悔はしてません。神様助けてください…。あ、だめじゃん、私無神論者だったわ…。

 そんなことを考えていると、ふと視界の端に青い閃光がきらめいた。青色閃光弾…。確かAHだと救難信号?

 ない知識をフル回転させ、紗耶香との会話を思い出す。

 『救難信号?』

 『そ、まぁ、あんまり期待しない方がいいけどね。そもそも周りに人がいてもさ、助けに行くのが義務ってわけじゃないし。何より助けてもらえたとしても、見返りを要求されたりすんの。そんなだからうつ側も相当切羽詰まってなきゃうたないしね。…ま、挙句の果てにモンスターだけ擦り付けられて助けに行った側が死んだー、みたいな話もあるぐらいだからね』

 …リスクはある。けどこの先には確実に誰かいる?

 死ぬのは…もちろんやだな。でも…。

 「うん、いこう。力になれるかはわからないけど」

 閃光の上がった方へ走りつつ、残っていたPpをつぎ込み、ドロップ品からもてる限りで一番強い装備を取り出す。…あと一応ローブは着ておこう。あんまり目立ちたくないから…。

 以前まで、何分もかけて走っていたような距離を、ものの十数秒で走り抜け、今なお炎をまとった巨人のようなモンスターにやられかけているプレイヤーが視界に入った。

 「お願い、間に合って!」

 だが無情にも、巨人のこぶしは私の手よりも先に、冒険者を葬り去っていた。

 「っ!!?」

 『小春、注意しておいてほしいんだけどね?プレイヤーが死ぬと、その場に10分間蘇生可能アイコンが出るんだけど、他人に装備とかもってけちゃう状態にもなるの。まぁ、パーティーメンバーがいないときは大抵ロスだね。そもそも蘇生アイテムって相当レアだし、なにより助けてくれるプレイヤーなんていないからね』

 …紗耶香!まだ、間に合うってことだよね!?

 『あとボスモンスターに負けても、10分たつと全部なくなるから覚えといて』

 「獄炎の番人…明らかにボス…」


 【獄炎の番人イフリート】Lv.52

  物理攻撃  1230   物理防御   860 

  魔法攻撃   350   魔法耐性  2430

  移動速度   250   幸運     85

  最大HP   98000/127600  最大MP   2500

  最大SP   2075   筋力     783


 勝てるだろうか…。いや、倒さなきゃだめだ。

 「…こい、私が相手だ!」

 震える腕にむち打ち、私は鼓舞するように叫んでいた。

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