迷走

迷走

夢を追い続けることは決して悪いとは言わないし、夢を持たないことよりはいいことだと思う。

現実を見ることは簡単とは言わないし、現実を見失うことよりはいいことだと思う。

それがいつか自分を苦しめると知っていても、前に進まなければならない時が来る。

前に進むことも後ろに戻ることも、どちらも意外と難しい。

後ろを振り返って楽しかった栄光、悔しかった後悔に浸ってもその方向へ進むことはできない。

前を振り向いて続きへ戻っていくことも簡単には出来ない。

人生のどこかに答えがあると信じて進んでいく。

その船が沈みかけていることに誰も気付かない。

沈んでみないと分からないから。

その足が動かせないと知っていながら動かそうと試みる。

その腕がもう伸ばせないと知っていてもその先に見える希望に向かって伸ばそうとする。

掴んだ希望が絶望の始まりだと知っていても誰もがその希望目指して腕を伸ばすだろう。

今よりラクになりたいから。

笑って過ごせる人はいいな。と誰かが言ってた。

楽しく過ごせる人はいいな。と誰かが言ってた。

尊敬される人はいいな。と誰かが言ってた。

夢を与えられる人はいいな。と誰かが言ってた。

愛される人はいいな。と誰かが言ってた。

褒められる人はいいな。と誰かが言ってた。

助けられる人はいいな。と誰かが言ってた。

その全てには反対があるんだ。と私が言ってた。

全てを理想とする私が言ってた。

誰かではない。確かに私が言ってた。

私が自分を見失っていた。