第7話

「ダメよ、喋ることができただけじゃ。」

家に帰り、文学部と新島の話を真に伝え、これでもう友達のノルマはクリアした。と伝えた孝太郎だったが、真はそんな孝太郎をバッサリ切り捨てるのであった。

「じゃあどうすればいいんだよ!」

「顔を見て、喋れるようになりなさい。」

「まじか...」


放課後。

ガラガラガラ

「こんちはー!」

海は文学部の扉を思いっきり開ける。

「おお、来たか。...ん?」

新島は海の隣にいるお面を被った少年を見つめた。

「これは...もしかして...孝太郎??」

「ハイ。コンニチハ。」

「カタカナになってるぞ?」

「お面越しでもキツイんですよ...」

「ゲロかけられる方がキツイぞ?」

「...すみません。」

「因みにそれ被ってて私は見えてるのか?」

「隙間からちょっとだけ見ようと思えば見えますが見ようと思わなければ見えません。」

孝太郎が喋る度、マスクが微かに上下する。

「まだ面と向かって喋れるようになるには時間がかかりそうだなあ。」

新島はそう言うと、軽くため息をついた。

「今日は何かやることあるんですか?芽衣先輩?」

海が言った。

「新しく部員も増えたことだし、歓迎会をしようと考えていたところだ!」

「こんな汚い部室で?」

海に指摘されて新島は部室の方へ振り向いた。

「...確かに汚いな...」

「じゃあ今日は掃除をするということにしましょう。」

孝太郎は仮面を被りながらモゴモゴとした声で提案した。


掃除中。

「にしてもこんだけの本があるなんて、まるで図書室ですね。」

掃除中は仮面を外した孝太郎はそう言った。

「図書室からパクったものもいくつかあるがな。」

「マジすか?」

「でもパクった本はそんな多く無い。」

「じゃあこれどうやって集めたんですか?」

「先輩部員が置いていった物が半分で残りは私の物。」

「え?この半分が?」

「おう、私のものって言っても半分くらいしか読んで無いけどな。」

「す、すごいっすね。意外に芽衣先輩って金持ちだったり?」

海は驚いた様子で言った。

「ん〜人並みじゃないか?」


孝太郎はなるべく視界に新島が入らないように気をつけながら掃除を続けていた。


「よーし。これでこの部室も綺麗になったな!」

新島は達成感を感じたような表情で言った。

「嬉しそうですね。新島先輩。」

「君はなんも見えてないだろ?」

「声でわかりますよ。」

「にしても今日はスムーズに喋れてんじゃない?孝太郎?」

少し嬉しそうに海は言った。

「そうだな、お面のおかげってのもあるけど新島先輩と話すのも慣れてきた気がする。」

「じゃあこれ取ってみるか。」

新島は自分より背の高い孝太郎の頭に手を伸ばし画面を勢いよく剥がした。

「せいっ!」

「...」

新島は孝太郎の顔を覗き込む。

「おっ?平気か?」

「オエッーー!!」

またもや新島は光太郎にゲロをぶっかけられ、立ち尽くすのであった。

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