第5話

掃除ロッカーから現れたお面を被った女の子に孝太郎は驚きのあまり断末魔のような叫び声を上げた。

「どうしたの!?孝太郎!?」

海は叫び声を上げた孝太郎に目を向けるとその女の子が視界に入った。

「って、びっくりしたぁ!?」

「どうした小娘!この程度で驚きおって!!」

小さな女の子はお面をかぶったまま、得意気に言った。

「もしかして...あなたが新島芽衣先輩?」

「そうだ。私が新島芽衣だ!」

新島はお面を外し、またもや得意気に言った。

「孝太郎驚きすぎて気失っちゃってますよ。」

掃除ロッカーの目の前で孝太郎はぶっ倒れたままピクリとも動かなかった。

「おーい大丈夫かー少年。」

新島はツンツンと孝太郎の体をつつくとピクッと孝太郎の体が動いた。

「ううっ...なんか怖い夢を見たような...」

「それは夢だ。君が有馬孝太郎だろ?真先生から入部の事は聞いてるぞ。」

「...」

新島が孝太郎の方を見ると孝太郎は顔を逸らし、息を切らし始めた。

「...はぁっ...はぁっ...」

「おいおい君、大丈夫?」

新島は心配そうに孝太郎を見る。

「先輩、孝太郎の方見ないでおいてくれませんか?」

「どういうこと?」

キョトンとした顔で海の方を見る。

「こいつ、軽い対人恐怖症みたいな感じなんで...なんか人に見られてるって意識するとおかしくなっちゃうみたいなんですよ。」

「...おかしいな...みんなの...前では...喋れたのに...」

孝太郎は息を切らしながら話す。

「保健室行く?」

「いや...大丈夫。視界に入らなければ...平気な気がする...」

孝太郎は下を見て新島を視界に入れないようにしていた。

「わ、私、水買ってくるよ。」

新島は駆け足で部室を出て行った。

「はぁ...自己紹介はできたのにな...」

孝太郎は息を整えながら言った。

「自己紹介って一方的に喋るだけだけど、会話をするのはなかなか難しそうだね..今日はもう帰る?」

「...俺だってもっとまともに人と喋れるようになりたい。友達とまではいかなくても、新島先輩と少し話せるようになりたい。」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る