第2話

「今日からこの学校に転校してきた有馬孝太郎君です!自己紹介どうぞ!」

「有馬孝太郎と申します。よろしくお願いします。」


——早口で言い終え、視線を下げ、人を意識しないように喋ることに全力を注いだ。


「人と喋るのが怖いって思うくらいなら、人じゃなくてキャベツと思いなさい!」


真に言われた謎のアドバイスを思い出すと、自然と喋ることができた。

目の前にいるのは人じゃなくてキャベツだ。


「じゃあ誰か孝太郎君に質問ある人〜?あ、じゃあ風間君、どうぞ!」

「なんかスポーツとかやってますか?」

「キャベツ。」

「キャベツ??」

教室中が笑い声で包まれた。



「孝太郎〜初日からやらかしたんだって?」

海がニヤニヤしながら聞いてくる。

「何も知らない...」

「キャベツ君って噂されてるよ??」

「初日にこれはキツいよ...」

「で、どんな感じだった?」

「やっぱり苦しいけど、なんとか喋れたよ。」

「まぁ今日は始業式だけだったから、明日から本番だね。」

「ううっ...」



「今日はどうだった〜孝太郎?」

家に帰り、夕飯を済ませた後、缶ビール片手に真が孝太郎のの肩に腕を回した。

「真、俺のクラスの担任だったくせに...」

「でも私は安心してるのよ、思ったより人前で喋ることできてたし。」

「真が居たから安心できた。」

「もぉ〜可愛いなぁ孝太郎!」

真は孝太郎の体をブンブン揺らしながら言った。

「お姉ちゃん酒飲みすぎないでよ〜」

「その意気で明日からも頑張んな!」


そんなこんなで孝太郎の転校初日は終わったのだった。

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