El Príncipe Mago Errante ~彷徨の魔術師王子~

平中なごん

序文

序 魔導書

 魔導書グリモリオ――


 それはこの世の森羅万象に宿る悪魔デーモン(※精霊)を召喚し、彼らを使役することで様々な事象を自らの想い通りに操るための方法が記された魔術の書である。


 いにしえより、このエウロパ世界の宗教的権威として君臨するプロフェシア教会(預言教)と、そのプロフェシア教を国教とする国々では「悪魔の力を借りる邪悪で危険な書物」として魔導書の自由な所持・使用を厳しく禁じてきた……。


 だが、二世紀ほど前より始まる〝古典回帰運動リグレッシォネ(※古代イスカンドリア帝国時代の文芸を復興しようとする動き)〟を契機として、この教会の方針に疑問を感じ、より自由な魔導書の利用を求めて非合法に所有する者達が現れ始める。


 そして、大海洋国家エルドラニア帝国が海の向こうに未知の大陸〝新天地〟を発見し、新たな時代の幕開けを予感し始めた聖暦1580年代末、そんな人々の育んだ地下水脈は、この禁書政策に公然と反旗を翻し、秘蔵の魔導書を奪ってはその写本を流布する悪党・・の出現へと結実する。


 その悪党……〝新天地〟の海を荒らし回る海賊の名は「禁書を開ける秘密の鍵」――〝禁書の秘鍵ひけん団〟という……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る