第20話 坂城健吾 100歳の質疑応答
100歳の私は自己紹介を終えた。
拍手はなかった。
全員が、茫然としていた。
100歳の私は、あきらかに宇宙服らしい服装だったのだ。
それにしても・・地球全部と敵対しているだなんて・・
20歳の私が聞いた。
「100歳の頃には、人類は宇宙を自在に飛びまわるような技術があるんですか」
それに対して、意外な回答。
「いやぁ、それはないね。まだ火星に有人飛行すらできていないから。
月に行くのも、やっとといったところで、ほとんどが無人探査だよ」
「え?じゃあ、宇宙基地って?」
「私の仲間が普通じゃないってことだよ」
50歳の私が言った。
「それじゃあ、地球はそれを目指して、技術開発が進むかもしれないってことか・・
進化に必要なのは競争だから」
100歳の私は、にやりと笑って言った。
「そういうこと。だから、はるかかなたではなく中途半端な位置に作ったんだ。
望遠鏡でぎりぎり見える位置にね」
30歳の私が聞いた。
「仲間って何人いるんですか?」
「13人だよ。全員が基地にいるわけじゃないけどね」
60歳の私が言った。
「これで最後ということは110歳までは生きられなかったということかな?」
「いや、多分これを画策した奴が100歳以上を想定していなかっただけじゃないか?」
100歳の私が答える。
「誰が考えたかは知らないけれど、なんとなく想像は着くよ」
「想像?」
90歳の私が答える。
「ヒロが言ってた、駄女神?もしかして」
10歳の私が答える。視点をどこか遠くにしたままで。
「女神なのかどうかはわからないけど、女の人が見えます」
「さすが・・・封印前の力は強力だね」
「ヒロに告げ口して、何とかしてもらおうか」
「あ・・土下座してますよ」
「まぁ、いじめるのもかわいそうだからこのくらいにしておこうか」
「そろそろ、元の世界に帰ろうかね」
「そうだね」
「じゃあ、またいつか会えるかな?」
「会えるさ、自分自身だもの」
それぞれ、来た扉を開けて出て行った。
後には、何もない白い空間だけが残った。
参考:
『勇者が転生してくれないどころか女神の私を虐めます(助けてください)』
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